後藤ひろひとがインタビューで語っていたように、2025年版「FOLKER」にはクセの強い人物が多数登場する。そんなキャラクターたちを演じる、女囚・千歌役の遠藤久美子、女囚・祥子役の小島聖、フォークダンス講師・松岡役の内場勝則、フォーク・ウォリアーズに所属するねじ武史役の平井まさあき(男性ブランコ)、ゴシップ雑誌の社員・森役の浦井のりひろ(男性ブランコ)に、後藤作品に対するイメージや、公演に対する抱負を聞いた。
遠藤久美子
──後藤ひろひとさんが作る作品にどのような印象を持っていますか?
2002年、初舞台となった「ダブリンの鐘つきカビ人間」で後藤さんとご一緒させて頂きました。何も分からないところからのスタートで、分からない事が何なのかすら分からない、手探りの日々でしたが、全てが新鮮で、学びと発見の連続でした。
未知の世界に飛び込んで挑戦する過程で、舞台に魅了され、毎日が本当に楽しく、かけがえのない時間となりました。この作品は、私にとって忘れられない特別なものとなり、お芝居を好きになった原点でもあります。
そんな「ダブリン」での経験があったからこそ、今回「FOLKER」への出演が決まった時、嬉しさで胸がいっぱいになりました。このご縁に心から感謝し、また新たな挑戦の中で多くを学び、楽しみたいと思います!
──「FOLKER」の台本を読んで感じたこと、お稽古で楽しみにしていることを教えてください。
舞台の台本を読み進める中で、今作もきっと私にとって大切な宝物になると感じました。頂いた役がどのように成長していくのかは、お稽古を重ねる中で見えてくるものだと思いますが、その未知の過程にワクワクしています。
原点回帰と新たな挑戦の始まりを胸に、作品や役と丁寧に向き合いながら、共演者の皆さんとたくさん交流し、作品をより良い形に育てていきたいと思っています。そして、この舞台を通じて感じた事や思いを、皆様にお届けできるよう、精一杯努めます。
プロフィール
遠藤久美子(エンドウクミコ)
1978年、東京都生まれ。俳優。1995年に芸能界デビューし、同年にマクドナルドのCM“証明写真編”で知名度を上げる。1998年に歌手デビュー。2003年に放送されたテレビドラマ「ダンシングライフ」で初主演を果たした。
小島聖
──後藤ひろひとさんが作る作品にどのようなイメージを持っていますか?
後藤さんとは今回が初めてになります。
今までに後藤さんが手がけた作品も言いにくいのですが拝見したことがありません。
どんなときでも笑いましょう。の精神が好きだなって思いました。
──「FOLKER」の台本を読んで感じたこと、お稽古で楽しみにしていることを教えてください。
普通に笑って泣きました。
本質ってシンプルだなって思います。見透かされたくないからいっぱい自分にバリアをはってますが
真っ直ぐに伝えられると、素直に言葉が入ってくるし心動かされます。
自分の中に祥子を積み上げてお芝居だけれどもシンプルに祥子を舞台上で手放して祥子として存在できたらいいなと思います。
それには祥子を後藤さんや他の役者さん達から感じたものも手がかりに肉付けして削ぎ落としていけたら私なりの祥子が生まれるかなと思っています。
プロフィール
小島聖(コジマヒジリ)
1976年、東京都生まれ。俳優。1989年にNHK大河ドラマで俳優デビュー。1999年に映画「あつもの」で第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した。
内場勝則
──後藤ひろひとさんが作る作品にどのような印象を持っていますか?
「FOLKER」に出演できることをとても嬉しく思います! (後藤作品を)客として観劇したこともあり、紀伊國屋ホールでの私の主演作も脚本を書いていただきました。自分の作品に揺るぎないものを持ってる方だなと思います。それは自他ともに認めるものだと思います。いつも思うのですが、物語が緻密に構成されていて、「え」というセリフでも一言抜けてしまうと会話が成立しなくなってしまうのです。笑いも、泣きも、登場人物の役名も含めて全信頼を置いております。
──「FOLKER」の台本を読んで感じたこと、お稽古で楽しみにしていることを教えてください。
後藤作品にいつも感じるのはとても面白く笑えるしストーリーもいいんですが何か常にうるうるするような悲しみが物語の中に流れていること。人の死というものがちらついているせいなのか。後藤作品に臨むときは先入観を持たないようにしてます。キャスティングの上手さは流石ですし、今回の役も私に合う役だろうと思いますが、要求をどれだけクリアできるか? まあ出来たらできたでドンドンハードルを上げる演出家なのですが、決して怒らない演出家なのでそこは安心です。
プロフィール
内場勝則(ウチバカツノリ)
1960年、大阪府生まれ。お笑いタレント・俳優。1982年、NSC大阪校に第1期生として入学。その後、吉本新喜劇のメンバーとなり、1999年から2019年まで座長を務めた。
平井まさあき(男性ブランコ)
──後藤ひろひとさんが作る作品にどのような印象を持っていますか?
以前、劇団ひろひょう「荒波次郎」でジャガーというヘンテコな役をさせていただいたことがあります。同期の堀川絵美と相方の浦井と共に後藤さんの作品に参加できるということで、「頑張らないといかんですぞ」と“ムックな意気込み”があったため、全体稽古が始まる前に、3人で自主練をしてセリフなどを覚えて全体稽古に臨むと、「セリフを覚えてくるな、ミスしながらも成長していくところがみたいのだよ、それが稽古だよ」と言われたのが印象的でした。「なるほどですぞ」と“ムックな納得”をしました。
僕は大学時代、演劇サークルに所属していましたが、所属の理由は、演劇を全く知らず、学園祭などでコントができるからでした。でも、先輩が、大王(後藤の別名)作品の「ダブリンの鐘つきカビ人間」「人間風車」を勧めてくれて、度肝を抜かれました。大王作品は、一つの作品の中で、ぐっと引き込まれる物語の楽しさ、物悲しさ、恐ろしさ、そして純粋な笑いとしての面白さが、縦横無尽に繰り広げられておりました。僕はこの作品がきっかけで演劇というものが好きになりました。
この「FOLKER」という作品は、美しい面白さと破壊的な切なさが同居する大王作品の成分が凝縮されていると感じます。その一成分になれる喜びと言ったら、筆舌に尽くし難いものがあります。緊張はもちろんしますが、そしてまた大王と一緒にお芝居できることが何より楽しみだと感じます。
──「FOLKER」の台本を読んで感じたこと、お稽古で楽しみにしていることを教えてください。
綺麗に製本された台本を読み終え、本を閉じるや否や「くううううう」と長い噛み締め吐息を漏らしました。なんて切ないんだ。なんておもしろいんだ。なんて大王なんだ。改めて身が引き締まる思いでした。
僕が担当する役は“ねじ武史”です。初演時にはなかった役だと伺っています。そしてこれはほぼ僕です。ねじという名前は、大学卒業後、内定をいただいたねじの会社への入社を、芸人を志すためにお断りしたエピソードがもとになっています。武史(タケシ)は大学時代、大王のワークショップに参加していた時のあだ名です。だから、ほぼ僕なのです。これまたヘンテコな役です。真っ当したいと思います。
大王の言葉で、今も胸に刻み込まれている言葉が二つあります。
まず「コメディを作るのであれば、その作成過程も楽しいものでなければならない」。楽しいコメディな稽古になってほしいなと思っております。もう一つは「稽古で作るのは60%でいい。後の40%はお客さんと共に作るのだ」。是非ともお客さんと共に、楽しくて切なくて恐ろしい大王作品を作りたいと思っております。
浦井のりひろ(男性ブランコ)
──後藤ひろひとさんが作る作品にどのような印象を持っていますか?
後藤さんの舞台は一見すると楽しいコメディでめちゃくちゃ笑えるのですが、一皮剥けば人間の悲哀、愚かさがみちみちに詰まっていてなんて恐ろしい作品をつくるんだ……という印象です。しかし以前出させていただいた時は、大王はじめ全員が本当に稽古からふざけていて、完成するのか心配になるほど楽しい時間を過ごしました。またこうして携われる事をとても嬉しく思う反面、あの時の稽古よりウケる事ができるのか自分……!と身が引き締まる思いです。
──「FOLKER」の台本を読んで感じたこと、お稽古で楽しみにしていることを教えてください。
絶望的な状況でも最後まで抗い続ける女囚たちの姿に胸を打たれました。僕の演じる森はすべてが終わった後に何が起きたかとある手記を通して知ります。徐々に只事ではないと気づきのめり込んでいく様を、観ている皆様の感情とリンクさせて表現できればと思います。
以前コンビで出させていただいた時、最若手だったので絶対粗相はできない!と稽古初日にセリフを全部覚えて行ったのですが、後藤さんに「覚えてないギリギリでやるのがおもしろいのに!」とガッカリされました。なので今回はセリフを覚えずに行ってみます。めちゃくちゃ怒られたらそれはそれでおもしろいなと思います。
プロフィール
男性ブランコ(ダンセイブランコ)
平井まさあき(ヒライマサアキ)
1987年、兵庫県生まれ。
浦井のりひろ(ウライノリヒロ)
1987年、京都府生まれ。
お笑いコンビ・男性ブランコのメンバー。2010年にNSC大阪校に第33期生として入学し、2011年にプロデビューした。2021年の「キングオブコント2021」で決勝進出、2022年の「M-1グランプリ2022」で決勝進出を果たす。2023年には「第八回 上方漫才協会大賞」で特別賞を受賞した。