大阪国際文化芸術プロジェクト「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」|八色のコメディショーが展開!総合演出・後藤ひろひとが届ける“日本ならではのSKIT”参加クリエイターからのコメントも

2025年の「大阪・関西万博」に向けて、来阪者に大阪の文化芸術を楽しんでもらうことを目的とした「大阪国際文化芸術プロジェクト」が展開されている。2024年度の「大阪国際文化芸術プロジェクト」の幕開けを飾るのは、後藤ひろひとが総合演出を担う「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」だ。8チームがダンス、演劇、大道芸などの幅広いパフォーマンスを披露する「OSAKA SKIT theater」を通じて、後藤は観客にどのようなことを伝えたいのか? 後藤に話を聞いたほか、各チームの作・演出家にそれぞれの演目の見どころについて語ってもらった。

取材・文 / 熊井玲撮影 / 桂秀也

「大阪国際文化芸術プロジェクト」とは?
「大阪国際文化芸術プロジェクト」ロゴ

2025年の「大阪・関西万博」開催時、来阪者に大阪の文化芸術を楽しんでもらうことを目的に、2023年度から実施されている企画。2024年度の演目には、後藤ひろひとが総合演出を手がける「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」、大槻文藏、野村萬斎らが出演する「大阪城西の丸薪能2024」、OSK日本歌劇団による「レビューRoad to 2025!!」、後藤が作・演出を担う「FOLKER」がラインナップされている。

「OSAKA SKIT theater」とは?
「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」チラシ表
「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」チラシ裏

後藤ひろひとが総合演出を手がける「OSAKA SKIT theater ~日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?~」では、8チームのアーティストがショート公演を実施。1公演につき3チームが出演し、ダンス、演劇、大道芸など、チームごとにカラーが異なるパフォーマンスを披露する。

なお、2023年度の「大阪国際文化芸術プロジェクト」でも、「OSAKA SKIT theater~Dancers Perform Timeless Hits!~」「OSAKA SKIT theater~Actors Perform Timeless Hits!~」が上演された。

総合演出・後藤ひろひとが語る
「OSAKA SKIT theater」

日本でも、日本らしいSKIT(寸劇)を

──「OSAKA SKIT theater」には、「日本人がジョークを理解しないなんて誰が言った?」というサブタイトルがついています。後藤さんがイメージされている、「OSAKA SKIT theater」の構想をまずは伺えますか?

海外に行くとき、私はよく、ショーのチケットを予約してから観に行くんですけど、日本にはまだ、海外の人が自分の国にいる時点で、インターネットでチケットを予約してまで観たい、と思うようなショーや作品が、あまりないんじゃないかなと思っています。今、インバウンドでこれだけ外国人が日本に来ているのに、それは残念だなと。なので、今回はその実験という意味でも、複数のチームをショーケース的に見せるショーをやってみたい、そういったものが成功するかどうかを見てみたい、と思っています。

後藤ひろひと

──後藤さんは今回、総合演出を務められます。具体的にはどのような役割なのでしょうか?

「OSAKA SKIT theater」には各回3チームが登場します。それぞれのショーの内容は各チームにお任せしているのですが、私は各ショーをつないで1本のショーとして成立させるにはどうしたら良いかを考えて、ある意味、全体を“ならす”のが仕事だと思っています。ただ……各チームが提出してくれた台本を読んだのですが、それぞれクセがある作品ばかりで……(笑)。

──(笑)。確かに、コントやセリフ劇、ダンスパフォーマンス、大道芸などかなり幅が広そうです。

ですよね(笑)。唯一全体をつなぐ存在として、マジシャンでパントマイマーのKAMIYAMAさんと彼のチームに、開場中やショーの間をつなぐシーンに全ステージ出てもらうことになりました。これは全体に通じることなのですが、今回は日本らしさを出したいと思っていて、そう考えたときに、もう着物や力士じゃないだろうと思うんです。じゃあ何が“今の日本らしさ”かと言えば、例えばサラリーマンはそうなんじゃないかと。名刺を渡す行為も、日本だけの文化ですよね? 日本のビジネスマンの“お辞儀”も、日本で働いている海外の人にとっては「いつ終わるんだろう?」と不思議なんだそうです(笑)。なのでKAMIYAMAさんたちには今回、できるだけみんな同じようなメガネをし、同じ格好をしたサラリーマンに扮してもらい、チケットを買うブースや客席、ロビーにもいてもらって、彼らが集まったら何かをしでかす……ということをやってみたいなと。ラスベガスなんかでも、作り手はパフォーマンスが始まる前からお客さんを楽しませることに徹しています。今回は、そういったことにもこだわってみたいと思っています。

台本には書き表せない?各チームの見どころ

──今回、AからGまで7チームが出演します。それぞれのチームについて教えていただきたいのですが、まずは後藤さん率いるAチームについて、お願いします。

あれは何年前だろう……王立劇場っていうコントユニットをやったことがあって、そこで内場勝則さんと石丸謙二郎さんに、ホームレスと紳士が帽子を取り合う無言のコントをやってもらったことがあるんです。それがとても評判が良くて、今回「OSAKA SKIT theater」のプロデューサーが「あれをもう1回やってほしい」というので、復活させることになりました。10年以上前にやったものなので大丈夫かなと一瞬思いましたが、この2人だったらきっとできるだろう!と(笑)。また今回はその帽子の取り合いコント以外にもう1つ何か面白いことを、と考えて、バケツドラマーのshiutaさんに出演してもらうことになりました。彼はとんでもない能力を持った男で、よく梅田あたりの路上でパフォーマンスしていたり、最近はライブハウスなんかにも出ていたりするようですが、その技術には本当に驚かされます。今回、私がどうしても彼を多くの人に観てもらいたい!と思って、出演を依頼しました。なのでAチームでは、私がお見せしたい面白いものを披露します。

後藤ひろひと

──そのほかのチームについては……。

いや、私もお話したいとは思うんです。ですが、実はどのチームも、台本で読んでもまったくわからないんですよ(笑)。その時点で成功だとも言えるんですけど、つまり字で書いてわかってしまうようなものってあまり盛り上がらないと思うんです。その最たるものがBチームの腹筋善之介だと思います。

──では作品の内容というより、各チームの作・演出を手がける方々について、後藤さんからご紹介いただけますか? 各クリエイターとはお打ち合わせをされたと伺いました。

はい。ではBチームの腹筋善之介からお話すると……彼は、Piperというチームでずっと一緒にやってきたメンバーで、身体1つでさまざまなものを表現します。今回何年ぶりかという感じですが、まさか彼と一緒にこういう仕事をするとは思わなかったな。でも彼が作るショーなら、間違いはないと思っています。

Cチームは……ほぼザ・プラン9ですね。ザ・プラン9とは縁があって、実は私が名付け親です(笑)。ただザ・プラン9も、ここで一緒になるとは思ってもみなかったですね。今回久馬(歩)くんが出してきた台本が、実は全チーム中、一番よくわからなくて。何しろシノプシスでもなく、ただ6、7つ程度の箇条書きになってるんですよ。

──え? 台本なのに……?

そう(笑)。でもまあ、ザ・プラン9がつまらないことをするわけがないと思っていますので、信頼関係でお任せしています。彼が何をしようとしているかは普段からわかりませんが、今回も楽しみですね。

──(笑)。Dチームは、今注目を集めるゲキゲキ/劇団『劇団』の小西透太さんと古川剛充さん、元劇団Mayの金哲義さんが作・演出を担います。

Dチームは相当悩んだようで、最初に決まった台本を書き直して、再提出してくれたところです。台本を読むと「イメージしてみよう」をテーマにした作品になるのかなって思うけれど……まだわからないですね。ただゲキゲキは勢いがある団体なので、場をにぎやかにしてくれるんじゃないかなと思っています。

後藤ひろひと

──Eチームでは今年大阪から東京に活動拠点を移した、オパンポン創造社の野村有志さんが作・演出を担当します。

野村さんは……彼もまた、本当によくわからない男で(笑)。接し方がわからないときもあるし、人懐っこいところもある。昔から知り合いではあるんだけど、とにかく不思議な男なんです。でも彼が作るものに関しては「すごいことを考えてるんだな」って毎回驚かされるんですよ。今回もなかなか緻密なことをやろうとしているようで、期待しています。

大西千保さんが作・演出を担うFチームは、現段階の稽古動画も送ってくれたので、早速拝見しました。ダンスパフォーマンス作品ですがちゃんと物語で構成されていて、私自身はダンスに疎いところがあるのですが「ああ、もうこれは楽しませてくれるんだろうな」と思ってじっくり観ちゃいました。

──最後は、もりやすバンバンビガロさんが作・演出を担うGチームです。

Gチームは……何も言うことはないです(笑)。打ち合わせのとき、冷却シートを使った芸の話になったんですけど、そもそも冷却シートってどの国もあるのかな……日本にしかないんじゃないかな?(笑) でもそれならそれで、冷却シートも日本らしさと捉えて、やってみたら良いんじゃないかと思っています(笑)。