来たれ、金の卵!これが文学座附属演劇研究所だ|発表会バックステージレポ&合格体験記

文学座附属演劇研究所 5人の新星に聞く、
「なぜ文学座に?」

全国から集まった研究生たちが、日々切磋琢磨し合いながら、稽古に励んでいる文学座附属演劇研究所。彼らはなぜ文学座を選んだのか? その理由を探るため、研修科に所属する5人の研究生にインタビューを実施。彼らが演劇と巡り合ったきっかけやそれぞれの個性的な経歴、そして今後の展望などを語ってもらった。

取材・文 / 興野汐里

研修科2年(55期生)演技部 西村知泰さん

研修科2年(55期生)演技部
西村知泰さん

唐ゼミ☆の青テントから文学座へ

横浜国立大学在学中、約3年間劇団唐ゼミ☆に所属していました。文学座の公演を初めて観たのは、鵜山仁さんが演出を手がけた、2011年のアトリエの会「山羊…それって…もしかして…シルビア?」。文学座は正当なストーリーの作品を多く扱っているイメージだったのですが、この作品は変わったお話で、すごく刺激的。唐ゼミ☆を退団して、今一度演劇の勉強がしたいと思ったときに、その印象から文学座附属演劇研究所に進むことを決めました。入所して一番カルチャーショックだったのは、公演の1カ月程前から本番と同じ環境で稽古ができること。唐ゼミ☆時代は、公演直前に青テントを建てて公演を打っていましたから(笑)。

前述の「山羊~」や、8月に研究所発表会で上演した「ゴドーを待ちながら」など、文学座では扱うテキストのバリエーションもさまざま。入学を考えている方にはまず、本公演、アトリエの会、研究所の発表会など複数の公演を観て、文学座の多様性を知ってもらえればと思います。

研修科2年(55期生)演技部 音道あいりさん

研修科2年(55期生)演技部
音道あいりさん

強みは、“音を聴く能力”

小学校高学年から高校卒業まで吹奏楽、大学では声楽を専攻して、音楽中心の生活を送ってきました。大学の授業でシアターピース(音楽劇)を扱ったときに、舞台上でセリフを言うことに興味を持って。また大学の同じ学科の先輩に出身者がいらっしゃったこともあり、文学座附属演劇研究所を受験しました。音楽をやってきてよかったなと思うのは、音を聴く能力が培われたこと。相手に伝わりやすいセリフの音やトーンを意識しながら演技をすることができるのは、音楽をやってきた俳優の強みなのではないでしょうか。大学卒業時はミュージカルをやりたいという気持ちが大きかったですが、今はストレートプレイをしっかりと学んで、癖がない演技を身につけたいと思っています。

キ研修科2年(55期生)演出部 小原まどかさん

研修科2年(55期生)演出部
小原まどかさん

研究生も文学座の一員だと
認めてもらえた喜び

「役者をやろう」と決意し、大学を中退して舞台芸術学院へ。学んでいくうちに、演出する側のものの見方やスタッフとしての技術を身につけたいと思い、文学座附属演劇研究所に入所しました。演出部は文学座の本公演やアトリエの会の現場につくことがあり、実際に演出家や座員の方々と接する場面が多くあります。そんなとき、演出の方が「ここの演出についてどう思う?」と聞いてくださって。研修生も座組の一員だと認めてもらえたことがとてもうれしかったですね。もちろん、今後本公演やアトリエの会で演出できる機会があったらうれしいですが、研究所で学んだことを生かして劇団外でも自分の作品を発表していきたいと思っています。

研修科1年(56期生)演技部 阿部大介さん

研修科1年(56期生)演技部
阿部大介さん

「東京、一番、有名、劇団」で調べて
たどり着いた文学座

演劇と出会ったのは、TEAM NACSの方々も所属していた北海学園大学の演劇研究会に入部したことがきっかけでした。上京後、改めて演劇をしっかりと学び直したいと思い、応募締切1週間前に受験を決意。正直なところ、文学座附属演劇研究所を志望したのは、「東京、一番、有名、劇団」で検索して最初に出てきたからという、今考えても驚きの理由だったのですが……(笑)。しかし、生半可な気持ちではいけないと改めて気合いを入れ直して入所しました。研究所は、経験を問わず誰にでも平等にチャンスを与えてくれる場所であり、演劇の楽しさを教えてくれる場所。簡単には褒めてもらえないので、できないからこそ芝居を続けたくなる。僕にとって研究所は、そんなふうに思わせてくれる特別な場所です。

研修科1年(56期生)演技部 松本祐華さん

研修科1年(56期生)演技部
松本祐華さん

演劇でしか味わえない緊張感の虜に

人の前に立つことに興味を持ったのは、小学生の頃。中学校で演劇部に入り、演劇でしか味わえない緊張感の虜になってしまったんです。高校では服飾デザインを専攻しながら、演劇部に所属。高校を卒業して1年後、文学座附属演劇研究所に入って初めての公演で早速衣装を作らせてもらい、高校での経験を十分に生かすことができました。研究所には、想像していたより熱い人がたくさん! 仲は良いのですが、本気で上に行きたい人しか集まっていないので、お互いに高め合うことができてすごく燃えますね。チャレンジしてみたいという気持ちがあるのであれば、“自分はこういう人間だ!”ということをアピールしてやりきったほうが絶対楽しいですし、何より「楽しんだ者勝ち」だと思っています。

文学座附属演劇研究所
「文学座附属演劇研究所

1961年、文学座の創立25周年の記念事業の1つとしてスタートした文学座附属演劇研究所。現在の所長である座員の坂口貞芳は研究所について、「これからの日本の演劇界を担う若い人材を発掘し育成するための研究所は、教養のある大人のためのエンターテインメントを目指す本公演、新しい舞台表現を模索するアトリエ公演とともに、文学座の演劇活動の三本柱の一つに位置づけされています」と説明している。授業では文学座座員たちによる演技実習を始め、各専門家を招いて音楽、体操、ダンス、アクション、能楽・作法のレッスン、また演劇史を学ぶ“座学”もあり、広く舞台で活動していくための基礎教養を学ぶことができる。なお2018年第58期本科入所試験は2018年1月に開催。入所案内・願書の請求は2017年10月2日に受付開始、出願は17年12月。