「AD-LIVE 2018」「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」鈴村健一×浅沼晋太郎×川尻恵太|予測不可能!“アドリブワード”を駆使して明かす爆笑の裏側

すべてが“本当の物語”になっていく

──以前、鈴村さんが「ドキュメントと演劇を行き来するところが『AD-LIVE』の面白さ」とおっしゃっていましたが、お三方にとってインプロ(即興)の魅力や“恐ろしさ”はどんなところにあると思いますか?

鈴村健一

鈴村健一

鈴村 僕は若い頃からエチュードが好きで、セリフが用意されている作品だと、セリフをどう読むか、会話をどう成立させるかみたいに頭で考え始めてしまうけど、自分の感覚を使いながら即興で演技してみると、お芝居の根幹にある楽しさを味わうことができるんじゃないかと思っていて。その場で起きたことをすべて受け入れていけば、すべてが“本当の物語”になっていく手触りがあるのがインプロの魅力だと思うんですね。それをどうにかエンタメ作品にできないかと考えた結果が、この「AD-LIVE」でした。逆に即興の怖いところは……僕に関して言えばあまりないです。例えば本番中に突然照明が全部消えてしまったとき、一般的な作品ではそこからお芝居を続けるのはすごく難しいと思うんですが、即興の場合はアクシデントすら設定として使えてしまいますから。

浅沼 僕は普段、ガチガチに台本がある会話劇をやっているんですが、台本に書かれていることをアドリブのように話す演技も難しいですし、アドリブを使ったショーをエンタテインメントとして成立させることも難しいと思うので、その両方を体験できるのはとても幸せなことだと思ってます。あと「AD-LIVE」におけるアドリブワードは、ほかの即興劇で経験したことのない新しい感覚でした。舞台上で共演者以外からサプライズを受けることって滅多にないし、どんなワードが出るかまったく予想がつかないじゃないですか。言うなれば神様のいたずらですよね。ワードのチョイスによって展開が変わることもあれば、鳥肌が立つくらいその場面にぴったりなときもある。お芝居をしていてこんな感覚を体験できるってなかなかないですよ。

川尻恵太

川尻恵太

川尻 「AD-LIVE 2017」から、A・Bキャストの会話の中から生まれた人物を演じる彩-LIVEというシステムができたんですが、彩-LIVEの方が役に扮して急遽舞台に出るってなったときに、裏で会議できる時間が少ないので、僕がインカムでセリフを送ることがあるんです。

鈴村 構造的に言うと、“A・Bキャスト対川尻さん”、みたいな瞬間がたびたび訪れるんです。

川尻 彩-LIVEにセリフを伝えるとき、自分自身かなり芝居に入り込んでいて、「あ、僕、今インプロやってるな」って思うことが多々あるんです。あの瞬間は不思議な感覚になりますね。

「AD-LIVE」の功労者は……

──この10年の歩みの中で“伝説”と呼ばれている回がいくつもありますが、特に印象に残っている公演や組み合わせがあれば教えてください。

鈴村 一番衝撃的だったのは、やっぱり最初の公演(08年)かなと。初めから「即興劇やります」とアナウンスしていたわけではなく、ドラマCDのキャンペーンイベントという名目でお客さんを集めたんです。皆さん、トークショーが始まると思って待ってくれているわけですから、幕が上がってステージにセットが組まれているのを見たら戸惑いますよね(笑)。そこで90分即興芝居をやって、最後に「全部即興でやりました」と明かしたら、お客さんが悲鳴とも歓喜ともつかないような聞いたことのない声を発したんです。そのときに、やっぱりこの企画をやってよかったなって思いましたね。その感覚を今でも忘れられないから、「AD-LIVE」をずっと続けられているのかもしれません。年代ごとにいろんな見せ場がありましたが、功労者は初回から出演してくれている櫻井孝宏くんや岩田光央さんでしょうか。思い出深い公演と言えば、「AD-LIVE 2014」の岩田光央さんと小野大輔くんの回は、今の「AD-LIVE」に通ずるハチャメチャ感がありましたね。ロシア人のスナイパーなのに黒人っていう設定で出てきた小野くんに、たじろぎながらも立ち向かう岩田光央さんには胸が熱くなりましたし、多重人格者っていうキャラクターで攻めてきた森久保祥太郎くんに対して、キャラクターの名前を全部メモしながら、柳のようにかわしていく櫻井孝宏くん(「AD-LIVE 2014」)には匠の技を見ました。

「AD-LIVE 2016」より、浅沼晋太郎、下野紘出演回の様子。©︎AD-LIVE Project

「AD-LIVE 2016」より、浅沼晋太郎、下野紘出演回の様子。©︎AD-LIVE Project

浅沼 「騙された!」って思ったのは、下野(紘)くんと一緒に出演した「AD-LIVE 2016」ですね(編集注:真面目そうな青年・マサトを下野、訳あって眠り続けているマサトの親友・ケンジを浅沼が演じた回)。

鈴村 あー! あれはすごかった。

浅沼 あの下野くんがダークな終わり方を考えていたっていうのがまったく予想がつかなくて。本番が終わって裏にハケたあと、下野くんに「やられたー……」って言ったのを覚えてます。

川尻 アドリブワードを取ると見せかけて拳銃を出すの、用意周到でしたよね。

鈴村 しかもバッグの中がアドリブワードでいっぱいになっちゃって、拳銃がなかなか見つからないっていう。

川尻 あのとき、すごくハラハラしました。

鈴村 「拳銃が出てこなかったらどうしよう?」「そもそもバッグに拳銃が入ってなかったらどうしよう?」とかいろいろなことを考えましたね。

浅沼 あの日は、昼と夜で狐と狸の化かし合いみたいな公演だったなって今となっては思います。

川尻 僕は、鈴村さんが介入するシステムが生まれたきっかけになった、とっしー(豊永利行)と森久保さんの回(「AD-LIVE 2017」)ですかね。その回で2人は舞台上で歌詞を作らなきゃいけなかったんですけど、なかなか作らないから、リアルタイムで“ヒミツ”を書き換えて、「そろそろ歌詞を考えないとヤバイ」って出したんです。

浅沼 それを出した瞬間、ドカーン!ってウケて。

鈴村 いやあ、あれは革命でした。

たどり着いた理想形の先に

──「AD-LIVE」で得た経験が、それぞれの活動にフィードバックされていると感じるのはどんなときでしょう?

浅沼晋太郎

浅沼晋太郎

浅沼 僕、元々サプライズが好きなんですけど、自分が驚くことも好きなんだなっていうのに気が付いて。役者から出てくるものに対して驚きたいと思ったり、自分の中に「もっと面白がりたい」っていう気持ちが湧いてきました。あとはスタッフさんが提案してくれるものに対して、昔より面白がれるようになった気がします。

川尻 例えばほかの現場で即興性のある企画をやるときに、少々不安があったとしても、「90分フルで即興芝居をする『AD-LIVE』という公演があって、そこではこんなふうに高いクオリティの作品が作れているから安心してください」と説明すると、みんなに「それなら大丈夫かも」と納得してもらえるモデルケースができたなって思います。

鈴村 僕は、若い子たちに、お芝居の基本とは何か?をアドリブを使って説明できるようになりました。どんなときでも役でいることさえできれば、身体は自然と動くよ、と。どんな声優も、舞台俳優も、映画俳優も、身体中の感覚を駆使してセリフを発していて、こういう感覚をしっかりと持っている人こそが、声優として活躍できているんだよってことを伝えられるようになりましたね。

──10周年を迎え、今後の「AD-LIVE」はどんなステップを目指していきたいと考えていますか?

浅沼 逆にどう予想されますか?

──あくまで予想ではありますが、「お寿司が食べたいなぁ」と思うので、「AD-LIVE」を観ながら、お寿司が食べられるようになったらいいなと……。

鈴村 それ、採用しましょう!

一同 ははは!

左から浅沼晋太郎、鈴村健一、川尻恵太。

左から浅沼晋太郎、鈴村健一、川尻恵太。

鈴村 今年の「AD-LIVE」は“究極のアドリブ”と銘打っているだけあって、理想形と言うか、アルティメットな感じになったなと思っていて、ある種“たどり着いた感”があるんです。作る側はみんなしんどいんですけど、今年のフォーマットをベースにすれば何でもできる気がするので、このフォーマットを使った発展型を作れないかについて考えていきたいですね。そのためには……「綺麗な心」が必要です。いつだってピュアな心が必要!

川尻 僕が必要だと思うのは……「雲行きが怪しい」という感覚ですね。

浅沼 いつも危機感持ってないとね。

鈴村 そうそう。たどり着いたからって安心しちゃいけない。

浅沼 僕がアドリブに求めることは、「とりあえず深呼吸」ですね。いつも冷静な見方をしていないと。

鈴村 常に心を落ち着かせていないとね。僕も44歳になりましたし、「背中で語る」ようなカッコいいプロデューサーになりたいと思います。

川尻 僕は鈴村さんの背中が「凍え」ないように、そっとカーディガンをかけてあげます。

浅沼 僕は鈴村さんに「あの頃に戻りたい」って思わせないようにがんばります(笑)。

「AD-LIVE 2018」
「AD-LIVE 2018」
  • 2018年9月15日(土)・16日(日)、
    22日(土)・23日(日・祝)※公演終了
    埼玉県 三郷市文化会館
  • 2018年10月6日(土)・7日(日)※公演終了 神奈川県 横須賀芸術劇場
  • 2018年10月27日(土)・28日(日) 大阪府 メルパルク大阪
出演

9月15日(土):寺島拓篤、中村悠一

9月16日(日):関智一、福圓美里

9月22日(土):蒼井翔太、岩田光央

9月23日(日・祝):梶裕貴、羽多野渉

10月6日(土):石川界人、鳥海浩輔

10月7日(日):櫻井孝宏、前野智昭

10月27日(土):小野賢章、下野紘

10月28日(日):浅沼晋太郎、津田健次郎

※鈴村健一は埼玉、神奈川、大阪公演の全公演に出演。

「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」
「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」
  • 2018年11月17日(土)・18日(日) 宮城県 ゼビオアリーナ仙台
出演

11月17日(土)
蒼井翔太、浅沼晋太郎、梶裕貴、下野紘、寺島拓篤 / 鈴村健一

11月18日(日)
岩田光央、小野賢章、櫻井孝宏、鈴村健一、森久保祥太郎 / 浅沼晋太郎

※全公演、ライブビューイング開催。チケット発売中。

鈴村健一(スズムラケンイチ)
大阪府出身。1994年にテレビアニメ「マクロス7」で声優デビュー。テレビアニメ「銀魂」(沖田総悟役)、「おそ松さん」(イヤミ役)など、声優として数多くの人気作品に出演し、さまざまなキャラクターを幅広く演じている。また、ラジオパーソナリティや音楽活動など多彩な分野で活躍。音楽活動においてはすべての楽曲の作詞を自ら手がけるほか、2008年に立ち上げた「AD-LIVE(アドリブ)」では総合プロデューサーを務める。
浅沼晋太郎(アサヌマシンタロウ)
1976年岩手県出身。脚本家・演出家・俳優・コピーライター。2006年に放送されたテレビアニメ「ゼーガペイン-」ソゴル・キョウ役をきっかけに声優としても活動を始める。07年にエンターテイメント・ユニットbpmに参加し、脚本・演出を担当。12月には作・演出を手がけるbpm本公演「聖の夜」が東京・トリコロールシアターで上演される。
川尻恵太(カワジリケイタ)
1981年北海道出身。SUGARBOY主宰。2000年に北海道・札幌で劇団ギャクギレを旗揚げし、10年の解散までほぼすべての作品の脚本・演出を担当。06年に上京後、ラーメンズおよび小林賢太郎作品の演出補、エレキコミック、エレ片の構成作家を務め、お笑いから演劇に至るまで幅広い作品を発表してきた。18年10月にふぉ~ゆ~主演「放課後の厨房男子」(脚本)、11月に「体内活劇『はたらく細胞』」(脚本)、19年1月にMASHIKAKU CONTE LIVE「ユニコーン」(脚本・演出)の公演が控えている。

「AD-LIVE 2018」「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」Blu-ray / DVD

「AD-LIVE 2018」第1巻(寺島拓篤×中村悠一×鈴村健一)
2019年2月27日発売 / アニプレックス
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「AD-LIVE 2018」第2巻(関智一×福圓美里×鈴村健一)
2019年2月27日発売 / アニプレックス
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「AD-LIVE 2018」第3巻(蒼井翔太×岩田光央×鈴村健一)
2019年3月27日発売 / アニプレックス
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「AD-LIVE 2018」第4巻(梶裕貴×羽多野渉×鈴村健一)
2019年3月27日発売 / アニプレックス
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「AD-LIVE 2018」第7巻(小野賢章×下野紘×鈴村健一)
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「AD-LIVE 2018」第8巻(浅沼晋太郎×津田健次郎×鈴村健一)
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「AD-LIVE 10th Anniversary stage~とてもスケジュールがあいました~」11月17日公演
2019年7月24日発売 / アニプレックス
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「AD-LIVE 10th Anniversary stage~とてもスケジュールがあいました~」11月18日公演
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2018年10月22日更新