「AD-LIVE 2018」「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」鈴村健一×浅沼晋太郎×川尻恵太|予測不可能!“アドリブワード”を駆使して明かす爆笑の裏側

鈴村健一×浅沼晋太郎×川尻恵太 インタビュー

10年やって来たからたどり着けた境地

鈴村健一 取材中、“アドリブワード”を使ってもいいですか? 使わないほうがいいですか?

「私日本語わかりません」と書かれた“アドリブワード”。

「私日本語わかりません」と書かれた“アドリブワード”。

“アドリブワード”とは?
“アドリブバッグ”は、舞台上で出演者が常に持っているバッグのこと。“アドリブワード”は、そのバッグの中に入った紙に書かれている、観客から募集したさまざまな言葉を指す。
本番中、出演者は“アドリブバッグ”から好きなタイミングで自由に“アドリブワード”を引くことができるが、引いた言葉を必ず言わないといけないルールになっている。物語の展開に即したワードを引けるか、あるいは流れを著しく変えるワードを引くのかは誰にもわからない。

──ぜひ使っていただければと思います。

鈴村 まず僕らがやってみせますので、それで感覚を掴んでいただければ。ライターさんも使ってみてください。

──承知しました(笑)。9月15日に埼玉・三郷市文化会館で行われた「AD-LIVE 2018」の初日(寺島拓篤、中村悠一出演回)を拝見したのですが、夜公演では中村さんが女装をしていらっしゃいましたね。

鈴村健一

鈴村健一

鈴村 ガッキー(編集注:中村が演じたキャラクターの愛称。髪を三つ編みにした、濃いメイクの女性)、筋の通った一本気のいい女でしたよね。ヒゲが生えてるのに、途中からかわいく見えてきちゃって。

浅沼晋太郎川尻恵太 ははは!

鈴村 よく考えたら、ガッキーって(性格が)マツコ・デラックスさんに似てるなと思って。

川尻 確かに。

鈴村 ガッキーがどれくらいいい女だったかっていうと、「ズギャーーーン!!」っていうくらい。

一同 ははは!

川尻 僕のガッキーの印象は「痛いくらいに爽やか」

鈴村 わかる。爽やかだけど痛いんだよなあ。

浅沼 あの日は初日だったから、ちゃんとできるのかな?って僕らもけっこう緊張してたんです。でも結果的には「周りが見えなくなる」。……見えなくなっちゃった!

鈴村 ちゃんとできてないじゃん!

浅沼 周りが見えなくなるくらい、公演に夢中になれたっていうことですよ。

──私は初日を拝見して、皆さん「諦めが早い」なと……。

一同 ははは!

鈴村 いきなりダメ出しから入るんですね。

浅沼 すいませんでした! 本当に(笑)。

鈴村 これからは諦めないでがんばります(笑)。

川尻 でも僕らは決して諦めていたわけではなくて、こう思って取り組んでいたんです。「無~理~(笑)」

鈴村浅沼 諦めてるじゃん!

川尻 僕が最初に諦めちゃったんですよね。

鈴村 頼みますよ! 川尻さんが諦めたら今回の「AD-LIVE」は終わっちゃうから。

──今回の「AD-LIVE 2018」は、どういった役割分担で脚本を書かれているのでしょうか?

川尻 基本となるシナリオは全部鈴村さんが担当されているんです。

鈴村 昨年の「AD-LIVE 2017」では、僕と浅沼(晋太郎)くんと川尻(恵太)さんそれぞれがシナリオを書いて、ちゃんとしたストーリー展開やキャラクターの設定があって、その中で出演してくださるキャストの皆さんがどう泳ぐかだったんですけど、今年はゼロです。僕らは何もしていません。

浅沼晋太郎

浅沼晋太郎

浅沼 一応、舞台はパーティー会場で、10年後に隕石が落ちるっていう設定だけが決まっていて、それ以外はフリーなんです。

鈴村 なので僕ら3人は前情報がほとんどない状態で臨んで、90分の間に演出を構築していくっていう構造になっています。

浅沼 「AD-LIVE」は毎年システムが違っていて。A・Bキャストがいて、Aキャストのほうが物語の大筋を考えておくっていう構造自体は「AD-LIVE 2016」に似てますけど、それに加えて“フルコンタクトでのガチの殴り合い”みたいなことをするのが今年の公演です。

──そしてさらに、A・Bキャストが紡ぎ出す物語に、鈴村さんがストーリーテラーとして関わっていきます。

鈴村 今回、僕はストーリー自体を大きく変えることも可能なんですが、A・Bキャストがしっかりと作品の世界観を構築してくれるので、基本的には彼らを手助けしていく役回りが多いです。でも逆に邪魔をしても面白くなるので、そういうことも時々やってみていますね。

──“究極のアドリブ”と銘打たれた今回のアニバーサリー公演で、特にこだわった点はどちらでしょうか?

左から浅沼晋太郎、鈴村健一、川尻恵太。

左から浅沼晋太郎、鈴村健一、川尻恵太。

鈴村 本当のアドリブですべてが紡がれていって、何も準備しておくことができないという状況をA・Bキャストだけに強いるのではなく、スタッフ陣にも同じように課して、「みんながアドリブでやっている」というのが一番のポイントです。そのぶん、舞台裏はとんでもないことになってますけどね(笑)。「この先、こういう展開になるかもしれないから、こういう小道具を用意しておいてください」「こういう衣装を準備しておいてください」「このあとお母さんが出てくるかもしれないので、老けメイクをしておいてください」「お母さん、骨になったのでもう出てきません!」みたいな。10年やって来たからたどり着けたと言うか、今までやったものをうまく吸収して実践しているのが今年の公演ですね。

舞台裏は戦場

──今、スタッフの皆さんのお話が出ましたが、スタッフワークも「AD-LIVE」の面白さを引き出す重要な要素の1つになっています。浅沼さんと川尻さんのお二人が脚本・演出として携わることになったきっかけは何だったのでしょう?

鈴村 世界観や仕組みの構築を、演劇畑の人と一緒にやってみたいっていう気持ちがあって。そんな中、浅沼くんが「AD-LIVE 2015」を観に来てくれたんですよ。わざわざ大阪まで!

浅沼 ははは! そうでしたね。

鈴村 そのご縁で浅沼くんに相談に乗ってもらって、出演と演出の手助けをしてほしいとお願いしたのがきっかけです。その後、浅沼くんから川尻さんを紹介してもらって。

──浅沼さんと川尻さんのお二人は「AD-LIVE 2016」からの参加となりますが、初めて「AD-LIVE」に携わったとき、どんな感想を持ちましたか?

浅沼 少しさかのぼりますが、2015年に「AD-LIVE」を初めて観たとき、「不愉快」だなって思いました。

一同 あはは!

浅沼 「こんなエンタテインメントをこの規模でやられたらそりゃかなわないよ! 降参! なんなら僕も関わらせてくれ!」って思ったくらい、いい意味で不愉快だったっていう(笑)。

川尻 僕が最初に思ったのは、浅沼さんは僕と「AD-LIVE」をつないでくれた「希望への架け橋」だなって……。

浅沼 ちょっとー! 川尻さんと僕のアドリブワード、対照的すぎませんか?(笑)

川尻恵太

川尻恵太

川尻 僕は主にキュー振りという役割をやらせていただいています。通常のお芝居には照明や音響が変化するきっかけになるセリフがあるんですが、「AD-LIVE」にはそれがないので、ここで暗転とか、ここでこの音を入れる、というタイミングを決めさせていただいているんです。それを現場で即座に判断できる人を探していると、浅沼さんからお話をいただいて。

浅沼 “芝居心”と言ってしまうと乱暴かもしれませんが、そういう能力に長けている人がやらないと、「AD-LIVE」の裏側を支えるのは難しいだろうなと思ったんです。

鈴村 本当にね、「AD-LIVE」の舞台裏ってやらなきゃいけないことがいっぱいあって、いわば戦場なんですよ。僕がキューを振れたらいいんですけど、出演もしているからどうしてもできないんです。だからこれまでいろいろな方にお願いしてきたんですが、セリフを待って一番おいしいタイミングでキューを出す、みたいな判断が演劇畑の人でないと難しくて。その要素があれば「AD-LIVE」はもっと演劇的になるし、面白くなっていくだろうっていう思いが僕の中でずっとあったんです。14年に「AD-LIVE」を立ち上げ直したときに、うちの弟(俳優・映画監督の鈴村正樹)にキュー振りをしてもらったことがあって、そのときに自分の中のイメージに近い形で公演ができたんですね。でも弟が忙しくて参加できなくなってしまって。どうするか悩んでいたときに、“希望への架け橋”であるお二人に出会えたんです。だから2人がこうやって参加してくれて本当に……「はい、残念でした~」

浅沼川尻 えー!?(笑)

鈴村 もっと早く出会えていればよかったっていう意味での「はい、残念でした~」ね(笑)。

──経験豊富な浅沼さん・川尻さんと実際にご一緒されていかがでしたか?

鈴村 お二人とも僕にない発想の転換ができる方で、浅沼くんはアイデアマンですね。こうやって展開していったら、こういうグッズも作れるかもってことまで考えてくれて、具体性のあるアドバイスをくれるんです。川尻さんに関しては、間を読むとか空気を読む力がハンパない。あの絶妙なタイミングでキュー振りができるのって驚異的な能力なんです。以前、浅沼くんが「川尻さんは全部肯定してくれる」と言ってて。否定せず肯定してくれることこそが、「AD-LIVE」でキュー振りをする人にとって絶対的に必要な能力なんじゃないかと思いましたね。

──浅沼さんと川尻さんのこれまでの経験が「AD-LIVE」の現場で生かされているということですよね。

鈴村 「AD-LIVE」のことを演劇人の方に話すと「やめておいたほうがいいんじゃない?」とか「無謀だよ」って言う人が多いんですが、お二人は嫌な顔ひとつせず深夜に集まって会議をしてくれて、しんどさを感じさせずにいろいろこなしてくれて……この企画を面白がってくれるってことが彼らの素晴らしいところだと思うんですよね。そんな2人に僕はこう言いたい。俺が「ラスボス」だからあとは任せておけ!って。

浅沼川尻 頼もしい!

「AD-LIVE 2018」
「AD-LIVE 2018」
  • 2018年9月15日(土)・16日(日)、
    22日(土)・23日(日・祝)※公演終了
    埼玉県 三郷市文化会館
  • 2018年10月6日(土)・7日(日)※公演終了 神奈川県 横須賀芸術劇場
  • 2018年10月27日(土)・28日(日) 大阪府 メルパルク大阪
出演

9月15日(土):寺島拓篤、中村悠一

9月16日(日):関智一、福圓美里

9月22日(土):蒼井翔太、岩田光央

9月23日(日・祝):梶裕貴、羽多野渉

10月6日(土):石川界人、鳥海浩輔

10月7日(日):櫻井孝宏、前野智昭

10月27日(土):小野賢章、下野紘

10月28日(日):浅沼晋太郎、津田健次郎

※鈴村健一は埼玉、神奈川、大阪公演の全公演に出演。

「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」
「AD-LIVE 10th Anniversary stage ~とてもスケジュールがあいました~」
  • 2018年11月17日(土)・18日(日) 宮城県 ゼビオアリーナ仙台
出演

11月17日(土)
蒼井翔太、浅沼晋太郎、梶裕貴、下野紘、寺島拓篤 / 鈴村健一

11月18日(日)
岩田光央、小野賢章、櫻井孝宏、鈴村健一、森久保祥太郎 / 浅沼晋太郎

※全公演、ライブビューイング開催。チケット発売中。

鈴村健一(スズムラケンイチ)
大阪府出身。1994年にテレビアニメ「マクロス7」で声優デビュー。テレビアニメ「銀魂」(沖田総悟役)、「おそ松さん」(イヤミ役)など、声優として数多くの人気作品に出演し、さまざまなキャラクターを幅広く演じている。また、ラジオパーソナリティや音楽活動など多彩な分野で活躍。音楽活動においてはすべての楽曲の作詞を自ら手がけるほか、2008年に立ち上げた「AD-LIVE(アドリブ)」では総合プロデューサーを務める。
浅沼晋太郎(アサヌマシンタロウ)
1976年岩手県出身。脚本家・演出家・俳優・コピーライター。2006年に放送されたテレビアニメ「ゼーガペイン-」ソゴル・キョウ役をきっかけに声優としても活動を始める。07年にエンターテイメント・ユニットbpmに参加し、脚本・演出を担当。12月には作・演出を手がけるbpm本公演「聖の夜」が東京・トリコロールシアターで上演される。
川尻恵太(カワジリケイタ)
1981年北海道出身。SUGARBOY主宰。2000年に北海道・札幌で劇団ギャクギレを旗揚げし、10年の解散までほぼすべての作品の脚本・演出を担当。06年に上京後、ラーメンズおよび小林賢太郎作品の演出補、エレキコミック、エレ片の構成作家を務め、お笑いから演劇に至るまで幅広い作品を発表してきた。18年10月にふぉ~ゆ~主演「放課後の厨房男子」(脚本)、11月に「体内活劇『はたらく細胞』」(脚本)、19年1月にMASHIKAKU CONTE LIVE「ユニコーン」(脚本・演出)の公演が控えている。

2018年10月22日更新