
今月のお笑い 39本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年8月のお笑い」
「やるしかない」芸人が面白い、有吉と粗品、コットンの強み、千鳥グランドスラム
2025年9月5日 20:00 14
「M-1」直前キャンセルするアマチュア
飯塚 「M-1」の話もこれからという感じですよね。そういえば、長男と次男が出たいっていうからエントリーしたんですよ。
──へえ!
飯塚 自分が学生のとき「M-1」に出ていたので、20年ぶりくらいのエントリーだったんですけど、今って予選の日時がけっこう直前に決まるんですよ。数日前に決まっていたみたいなんですけど、スケジュール的に無理で。よく「当日急に来れなくなったアマチュア」ってありますけど、うちの息子です(笑)。
──あれって直前に怖気づいてキャンセルしていると思ったんですが、単に都合がつかず(笑)。
飯塚 「この日に決まったよ」ってメールが来るわけじゃないから気づかなくて、自らサイトで確認しないといけないんですよね。それで急なキャンセルになってしまいました。申し訳ありません。
井口 候補にした日時を全部空けとくしかないですよ。
飯塚 「M-1」に全神経を集中させてないと、こうなるんだなと思った。
井口 気軽には出られないようになってるんですね。
飯塚 だから今年はエントリー失敗して、子供が拗ねてました。
井口 僕も、優勝した大会では1回戦から出てますからね。シードじゃなく。
──全予選を戦っての優勝。
飯塚 シード権ができて以降、1回戦から出て優勝した人っているのかな?
井口 何組かはいますけど、多くはないです。決勝返り咲きでノーシード優勝は僕らだけなので。
飯塚 マヂラブは?
井口 マヂラブも返り咲きですけど、準決勝まではずっと進んでいたんですよ。過去の決勝進出者で、準々決勝まで落ちて優勝しているのは僕らだけです。その1回戦も5年ぶりとかでしたけど、本当に嫌でしたね。
テレビのイベント
飯塚 今年はフジテレビの「27時間テレビ」がない夏になった。せっかく、2023年は千鳥、かまいたち、
──テレビ朝日は「テレビ朝日・六本木ヒルズ SUMMER FES」内でいろんな番組イベントを開催しています。
井口 僕は「アメトーーク!」の立ちトーク企画に出ました。テレ朝のフェスは、番組イベントもありますけど普通にビアガーデンとして人がめっちゃ来てます。安いんですよ、ビールが(笑)。
飯塚 最近はイベント開催ありきで始まる番組もあるけど、イベントのノウハウがまだないから集客の見立てや内容、「それって出演者にとってテレビ局と一緒にやる意味ある?」とかがあんまり考えられていない気がしていて。「広告収入以外の収益を」という流れに翻弄させられていて大変だなと。
井口 番組のMCを出すだけだと「その人の単独ライブじゃん」みたいになりかねませんもんね。
飯塚 そうそう。その点では、ラジオ局のほうが先行してうまくやっている気がする。
井口 番組イベントで言うと、僕は
飯塚 あはははは(笑)。そこに鉱脈があるんじゃない? 土下座でウケる層が。
井口 ファンも優しいから僕らを受け入れてくれましたけど、やっぱり怖いじゃないですか。「芸人なんかいらねえよ!」って言われたら終わりなので。
──アイドルのファンは芸人さんに優しい印象があります。反対に、ネタ番組にアイドルが出ると一部から不満の声が上がっているのをよくSNSで見かけますが……。
井口 でもそれって、別に昔からそうじゃないですか。「8時だョ!全員集合」とか「シャボン玉ホリデー」の時代からそうだから! ジュリーとか野口五郎がお笑いの人と一緒に出てるんだから。
飯塚 「ラヴィット!」(TBS)でもたまに見かけます。Xで「こういうアイドルは出なくていいのに」と言っている人。「『ラヴィット!』のことわかってない!」みたいな。
井口 別にわかってなくていいだろ!(笑)
カズレーザーにとって特殊だった番組
飯塚
井口 いやいや、特にないですけど(笑)。二階堂ふみさんがカズレーザーさんのことを好きっていうのは前から言ってたんですよね。そういうので時を経て結婚にまで至るっていうのはすごいなと思いますけど。
──前触れがなさすぎてびっくりしました。
飯塚 カズさんがあんまり自分のことを言う人じゃないから、そういう気配を一切感じず「急だな」って思った人は多いかもしれないですよね。
──井口さんにもこういうびっくりニュースを提供してほしいです。
井口 いやー、沸くでしょうね(笑)。
飯塚 もし井口くんが女優さんと結婚するとして、どうやって発表する?
井口 やっぱりXで発表するんじゃないですか?
──文書で?
飯塚 最後だけ直筆で。
──連名でね。
井口 何も考えてないですけどね。まったくそんな予定もないので。
飯塚 井口くんがやたら周りの結婚に穏便になったら心の準備をしていおいたほうがいいのかな?
井口 そのパターンはありますね。結婚してる奴にこんだけ噛みついてたのに、急に「結婚生活もいろいろあるよね」とか言い出したら(笑)。
飯塚 カズレーザーで言うと、(構成作家として携わっている)「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)が終わっちゃうんですよ。
──残念です。インスタフォローしてレシピ参考にしてました。
飯塚 「家事ヤロウ!!!」ってカズレーザーさんにとって特殊な番組だったと思うんですよ。「Qさま!!」(テレビ朝日)や「カズレーザーと学ぶ」(日本テレビ)もそうだし、「サン!シャイン」(フジテレビ)のコメンテーターもそうですけど、知識人・カズレーザーの仕事が多すぎる中で、「家事ヤロウ!!!」はタレント・カズレーザーとしてやっていたと思うんです。カズレーザーさんってコメント力とか大喜利力が高いのに、世間から面白さの部分で注目されていないのが個人的にもったいないなと思っていて。高いお笑い能力がもっと出る場面があるといいなって思いますね。
井口 「家事ヤロウ!!!」はせっかくそういう番組だったのに、終わっちゃうんですね。
飯塚 そうなんだよ。終わらせるべき結果でも内容でもなかったとは思うんだけどね……。
ニューヨークのバランス感覚
飯塚
──賞レースのキャッチコピーも「隠れ悪意のファンタジスタ」とかでしたね。
飯塚 でも今のニューヨークはそういう部分も持ち合わせながらも、「変な奴って面白いな、変で最高だな」というモードになってきている感じがあって。昔だったら、無名な若手芸人がインフルエンサーをバカにしても、別に売れてないから「小物が何言ってるんだ」という感じになったけど、今のニューヨークのように売れている人がやるとキツく見えかねないじゃないですか。
井口 影響力も出すぎちゃいますしね。
飯塚 そうそう。だから、これまで通りにやり続けるんじゃなく、自分たちの今の立場を理解して、ちゃんとうまいことシフトチェンジできているのがすごくよかった。バランス感覚がすごいし、面白いなって思いました。
井口 あいつらも大人になってきてますよね。夏休み取ってゆっくりして、とか。僕だけいつまでも馬車馬のように働いて(笑)。
──余裕のある、落ち着いた生活を送っている感じはします。
井口 戦い方を変えたんでしょうね。下からのこう(ファイティングポーズ)じゃなくなった。
飯塚 屋敷さんが「見取り図じゃん」(テレビ朝日)に出ていたときに、トーク中、他の出演者が攻めた話をしているときにヒヤヒヤすることが増えたと言っていたんですよ。それを本人が悪くならないようにマイルドに補足したりしているシーンをたまに見るから、その感覚がすごいなと。
──その感じが、単独ライブのネタにも反映されていたんですか?
飯塚 そうなのかもしれません。ネタにめっちゃ変な奴が出てくるんですよ。「いるわ、こういう奴」みたいな。でもそれをバカにするわけじゃなくて、「変な奴だけど、いいよなー」っていう感じ。ただ1回ついたイメージってなかなか消えないから、いつまでも「ニューヨークは悪意芸だ」みたいにずっと言われるのは勝手にモヤモヤしますね。実はちょっとずつ変わっているということがもっと広く伝わるといいんですけど。
井口 だから、バランス感覚ですよね。みんな東京に来たほうがいいですよ。
──東京に? なんのことですか?
井口 いや大阪の人たちが(東京に来たほうがいい)。僕の言うことなんて誰もなんも思わないじゃないですか。嘘だし。
飯塚 嘘なんだ(笑)。
井口 嘘っていうか、本当でも嘘でもどっちでもいいようなことを言っているわけですよ。
飯塚 「井口が言ってらあ」みたいなね。
井口 そうです、そうです。でも大阪の人たちってまだ「言ってらあ」にならないから、すごい怒るんですよ。
──それは何か具体的にあったんですか?
井口 昨日「マルコポロリ!」(関西テレビ)の収録があって、「よしもとの若手は偉そうに堂々と歩いてて……」っていつも言っているどうでもいいようなことを言ったら、なんか本当に怒っちゃってる感じだったんで。本当のマジギレ(※)。
飯塚 「そんなことないですよ!」って?
井口 僕が言うことなんて観ている人誰も気にしてないのに。まだ「井口が言ってらあ」が大阪まで伝わってないんでしょうね。まあ、悪口言ってるんだからこっちが悪いっちゃ悪いんですけど。
飯塚 だからと言って謝っていいのか?っていう(笑)。
井口 いや、そうなんですよ! それでいいならいいよ、謝るよ。「僕が悪いので、すいません」って言うしかないですね。
飯塚 今後、「謝るぞ!?」って脅し文句もあるのかも(笑)。
井口 「いいよ? じゃあ謝るよ?」って。確かに。これからそうしようかな。
※編集部注:「本当のマジギレ」だったかどうかはわからないため、放送を観て確認を!
──でも最近、井口さんの言うことがお茶の間に信じられつつありません?
井口 そこなんですよね。
飯塚 あながち嘘じゃないから。
井口 この連載でもよく「詐欺に気をつけろ」とか「日本やばい」とか言ってましたけど、それも言えなくなってきて。なぜなら、本当にやばいから。僕の言ってることが本気にとられかねない。
──井口さんの発言がネットニュースになって、ヤフコメで「井口の言う通りだ!」みたいに言っている人が増えているような気がします。
井口 それはそうですよ。だって「感謝しろ!」とかは正しいことを言ってるんだから。
飯塚 ヤフコメとの親和性がある(笑)。ヤフコメとYouTubeのコメントは井口くんに好意的だよね。
井口 そういう人たちに支えられてますよ(笑)。
結局体力
井口 放送はまだ先ですけど、「
飯塚 売れてる芸人さんたちってみんな記憶力がすごいよね。
井口 それは本当にありますね。
飯塚 記憶力がないとなれないんだと思う。
──井口さんは記憶力どうですか?
井口 僕はめちゃくちゃ記憶力いいので、みんな嫌がってますよ。ちょっとのミスをずっとチクチク言うから。2020年の「M-1」だけ覚えてませんけど。
──嫌な出来事すぎて記憶から消しているという(笑)。
井口 それ以外は本当によく覚えてます。あと「24時間テレビ」のキャラバン隊として中京テレビに行くんですけど、あれがけっこう大変で。一緒になるメンバーが誰かによるんですよ。前は風船太郎さんとかで(笑)、去年もコウメ太夫さんとパーマ大佐とアイドル鳥越っていうあっちが“やってきてる”ようなメンツだったんですけど、今年は僕らとネコニスズ、シティホテル3号室、キュウっていう、タイタンの駒が揃ったおかげでみんなで出られることになって。
飯塚 セットでね。
井口 ただ、2日間あって、合間に「シューイチ」(日本テレビ)に出るために1回東京に戻ったり、それが終わってから「ABEMAスポーツタイム」に出たりもしないとなので、僕だけ40時間テレビみたいになってます(笑)。
飯塚 本当に、芸人に必要なのは体力だね。体力と記憶力。
井口 書いといてください。売れるには、マジで体力と記憶力だから。よくしんいちとその話になりますよ。結局体力だったんかい!っていう(笑)。
井口活躍の8月
井口 あとまあ今月は、とにかくすごい活躍しましたね。
──例えば?
井口 忘れましたけど、とにかく活躍したような気はします。
飯塚 「ロンドンハーツ」(テレビ朝日)はずっと出てるよね。井口くんがメインの「井口の”このメンツなら勝てる”格付け」の放送もあるし。
井口 あと「大悟の芸人領収書」(日テレ)も出ました。(キングコング)西野さんとは、僕が初めてテレビに出たくらいの頃に一緒になっていたので、多少はいろいろ言っても大丈夫というのがわかっているからやりやすいです。受け身がめちゃくちゃ面白い人なので。
飯塚 西野さん、受け身がうますぎるよね。イジりどころもいっぱいあるし。
井口 そういう系の人はせめてそうなってほしいですね。
──お笑い以外の分野で活躍しつつ、お笑い番組に出るとちゃんと面白いことをしてくれる。
井口 たまに出てああいうこともやることでお笑いファンからも支持されているんでしょうね。あと最近は「チャンスの時間」(ABEMA)、「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」(カンテレ)、「千鳥かまいたちアワー」(日テレ)、「大悟の芸人領収書」、全千鳥(の番組)出てます。
飯塚 書いといたほうがいいんじゃない? “千鳥グランドスラム”。
井口 僕はもうとにかくゲストで出るだけなのでね。言われたことをキッチリやって。
──スタッフさんにとってはありがたい存在ですよね。
井口 本当にもうわけわかんないです。噛みついて、ネタも作って、工場のライン見て「こうやってパンが作られてコンビニに届いているんですね~!」とかも言って。どういう人間なんだよ!(笑) とろサーモン久保田さんとかは工場見学のロケとかはやらないじゃないですか。
──で、また怒って。
井口 若手に怒って、アイドルにイジられて。人として異常すぎるだろっていう(笑)。
飯塚 あとあれだ、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)の井口くんとダイアン津田さんの絡みが面白かった。
井口 あ、それですよ! なんか忘れてると思ったら。めちゃくちゃ褒められましたもん。
飯塚 津田さんが読まなきゃいけないカンペを、井口くんがスムーズにトークとつなげて読んでいて、あの島崎和歌子さんが「ほんとうまいね!」って言ってた(笑)。
井口 津田さんが横でずっと「無理や……」と言っていたんですよ(笑)。「お前、俺のカンペ取んなや!」とかも言ってくれて、いい感じに面白くなっていたのでよかったです。
飯塚 実はスタッフが出しているカンペをしれっと読む能力って、視聴者には伝わらないよね。
井口 「こいつ全然読まねえな……」ってときあるもんな。逆にとんでもないタイミングで言うとか。
飯塚 あと、「カンペ読んでます」感をあえて出す人もいる。「私は思ってないけど、スタッフの指示で言ってます」というのをあからさまに出して読む人(笑)。現場にいる人はカンペが出ているからわかるけど、視聴者には指示で言わされているのか、その人の本心で言っているのかわからないことだから、そこをアピールしておきたいんだとは思いますけど。カンペをうまく読む能力ってテレビにおいて大事だから、「カンペをスムーズに読む選手権」っていうライブをやったらいいかも(笑)。
井口 カンペ対策ライブいいですね。出てるカンペをがんばって読んだら、さんまさんに「今そんなんええねん!」って蹴散らされることもありますから(笑)。
インフォメーション
プロフィール
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)と
飯塚大悟(イイヅカダイゴ)
1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」(TBS)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。大井洋一と出演するポッドキャスト「褒めたいラジオ」(Artistspoken)毎週水曜23:00~配信中。
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