今月のお笑い 42本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年11月~12月頭のお笑い」
間もなく「M-1」&「THE W」決勝、たりないふたりの凄み、ダイアン津田大活躍
2025年12月10日 18:00 7
構成
※取材は12月5日に実施。
「M-1」は1年の総決算
──「M-1グランプリ2025」準決勝が昨日(取材前日の12月4日に)行われ、決勝進出者が発表されました。
井口 よしもと以外だと、去年と同じママタルト、真空ジェシカ、ヤーレンズが決勝に行ったんですよね。真空ジェシカは5年連続。すごいですよ。
飯塚 会場で観させてもらっていたけど、真空ジェシカとエバースは落ちる感じは一切なかった。
井口 よしもとのライブに出させてもらったときにエバースと一緒になって、「ネタ見てましたか?」と聞かれたので不安要素でもあるのかな?と思ったんですけど、結局盤石だったんかいっていう。まあ、見てなかったんで「見てないよ」としか言いませんでしたけど(笑)。
──もし見ていたら、井口さんに意見を求めたかったんですかね?
井口 しかも町田が聞いてきたんですよ。なんでお前が聞いてくるんだよ?とは思いました。真空ジェシカは、川北がテレビに出てもずっとあのままだからネタを見ても冷めないというのはありますよね。人によってはテレビに出だして、違うキャラクターが見えてネタと乖離しちゃうパターンもあるじゃないですか。川北は貫いているからネタに支障ないんでしょうけど、こっちからしたら迷惑ですからね(笑)。共演者が迷惑するくらいあのキャラクターを突き通していることが、毎年「M-1」の結果に繋がっているんだと思います。
飯塚 エバースも今年はバラエティにたくさん出て、町田さんがイジられたりしていたけど、ネタに影響があるような映り方はしていないからね。佐々木さんがものすごいえぐられるような企画もなかったし。変わらずあの2人の関係性のままの面白さをキープできていた。
井口 変な話、そういう戦いにもなっていますよね。1年かけて、キャラクターをどうしていくか。本当に「M-1」に勝ちたいならそこも考えないといけなくなってきている。
飯塚 ウエストランドが優勝した年は井口くんがテレビに出まくっていたから、「井口ってそういうことを言うキャラだから」とみんながわかっているところまで来ていたと思う。
井口 年間を通してやっていくしかないですよね。「M-1」が“1年の総決算”みたいな戦いになってる。
飯塚 ママタルトは昨年の「M-1」決勝で最下位だったけど、最下位から翌年も決勝行くのって珍しくない?
井口 確かに。ママタルトは正直、1月頃は「今年はダメだな」と勝手に思ってたんですけどね(笑)。3回戦の評判は聞いてないですが、準々決勝でめっちゃウケて受かったと聞いていて、さらに準決勝に向けての調整もうまくいったみたいですね。
飯塚 最下位になった人が返り咲くのって、たいてい1年は空く。マヂカルラブリーしかり、ウエストランドしかり。
井口 僕らの年の最下位は東京ホテイソンですけどね?
飯塚 申し訳ない!(笑) 勝手に最下位だと思い込んでた。
井口 まあ、それで言うとホテイソンも翌年は決勝に行けてないですから。
飯塚 だから、ママタルトすごいなと思って。
井口 これは本当にすごいですよ。「キングオブコント」のトップリード以来じゃないですか? トップリード以来の連続決勝最下位の可能性もありますけど……。でもママタルトがアジャストするのがうまいとは思っていませんでした。だって「漫才工房」なんかひどいですから。グダグダで、全然できてないし。
飯塚 それこそ、ママタルトはこの1年の活動が生きてる気がする。たくろうの決勝進出もうれしい。もともとずっと面白かったから。
井口 ずっと面白かったのに、6年くらい準決勝にも行けてなかったんですよね。年齢とかも含め、今年バシッと噛み合った。大阪からは、たくろうと豪快キャプテンの2組か。豪快キャプテンも僕の言うことを聞いたってことなのかな?(※)
※編集部注:「マルコポロリ!」(カンテレ)で共演した際、豪快キャプテンに対して井口が「お前らは本当に狭い価値観でしかない」と叱りつけていた。その後、「NHK新人お笑い大賞」でも共演。
飯塚 あとは、ヨネダ2000が2022年以来の返り咲き。
井口 「NHK新人お笑い大賞」のときも言いましたけど、ヨネダは骨太になってきている気がします。2022年のときは新進気鋭の若手でぶっ飛んだ面白さって感じでしたけど、今はみんなを巻き込む力が増しているなと。(「NHK新人お笑い大賞」では)大阪の会場で、老若男女のお客さんに普通にウケていましたから。
飯塚 これだけ緊張感がある中で、明らかに1組だけ変なことしてた。異質だし、オリジナリティがあふれてた。
井口 本人たちが楽しそうにやっているのもいいですよね。ヨネダも去年、一昨年は準々決勝で落ちていて、よく返り咲いたなと思います。
飯塚 前回の決勝で一度顔見せして、観ている人が慣れちゃったところもあったと思うけど、そこを乗り越えて「やっぱり面白い」って思わせたのはすごい。めぞんは去年2回戦落ちからいきなり決勝に来てる。
井口 それはすごいですね。しかも(準決勝のネタ順が)Aブロックの5番手。
飯塚 めぞんがその日の最初の爆発を起こしていた感じはあった。
井口 ただ、僕らはAブロックの4番手で決勝に行ってるということだけ忘れないようにしてもらいたいです。
飯塚 伝説の“Aブロック4番手”ね(笑)。
井口 「絶対(早い番手では)決勝に行けない」と言われていた時代に行ってますから。
飯塚 めぞんは今年ギアの入れ方が違った気がする。ネタの内容は言えないから説明するのは難しいけど、より“漫才師”になった感じ。
井口 いやー、どうなりますかね。去年2位のバッテリィズと7位のマユリカは出場していないんですよね。僕は出てほしいなって思っちゃいますけど。
飯塚 井口くんはそういうタイプだよね。
井口 よしもと以外で出なくなる芸人ってあんまりいないですよね? ハライチは3年くらい空けてラストイヤーに出ていましたけど。三四郎とかアルコ&ピースとか、売れてもなんだかんだみんな挑戦してる。出ないなんて発想がない。
飯塚 よしもとだと、「M-1」決勝に行くと劇場出番やPR仕事が増えるからものすごく忙しくなるんだろうね。よしもと以外はそこまで劇的に忙しさが変わることは少ないから、翌年も出るしかないんだと思う。
ラパルフェ、“井口R-1状態”に?
井口 僕の知り合い系で言うと、(同じタイタン所属の)ネコニスズ、(一緒に新ネタライブをやっている)ひつじねいりとママタルトが出ていて、(昔からの仲間の)TCクラクションが準決勝に出ていたわけですけど、ママタルト以外はダメだったということで、喝を入れないとですね。
飯塚 ネコニスズは落ちちゃったけど、すごいウケてた。きっと決勝当落選上にいたと思うし、敗者復活も盛り上げてくれそう。
井口 飯塚さんイチオシの
飯塚 ずっと応援してたからよかった。まだ顔見せ感はあったけど、爪痕は残していると思う。センス系漫才が増えている中で、ただバカなだけなボケが多かったり、シンプルに土岐さんの顔が面白くて好きです。
井口 準々決勝で気になる組はいました?
飯塚 YouTubeで見たんだけど、
井口 確かに「面白かった」という声はけっこう聞きました。
飯塚 あとは前回、ニューヨークの完コピで注目された
井口 これには一応僕も1回、キレときはしましたけど(笑)。ラパルフェはいいんですけど、それを過剰に持ち上げたり、「これは敗者復活するぞ~」とか言ってる奴、しないよ! まあ、あいつらもどういうカルマでこれをやってのるかわかりませんけど。
飯塚 もはやわからなくなってるよね。真剣勝負の場で人のネタを完コピするっていうタブーを犯すことで話題になったわけだけど、「今年もやるんでしょ?」みたいに期待されるようになると、なんのためにやってるのかわからなくなる。
井口 かと言って、普通のネタをやっても「あれ?」ってなるだろうし。“井口R-1状態”(※)になる可能性もありますから。もうどうしようもなくなりましたね、あいつらも(笑)。
※編集部注:「R-1グランプリ」に出場していた井口はここ数年、大会のウィークポイントを突いたネタで爆笑を取っていたが、そればかりを期待され始めてしまい、かと言ってまったく異なるタイプのネタをするのも……と考えた結果、2026年大会には出場しなかった。
飯塚 「次は誰の真似やるんだろう」とか「誰々のモノマネしてください」とか言われだすかもね。しょうがないことではあるけど。
井口 自分で選んだ道ですしね。
推しが負けたときにこそ思い出してほしい井口のすごさ
井口 けっこう「当確」と言われてた組も落ちていましたよね。
飯塚 それで言うと、自分が観ていない予選のリポートを持て囃しすぎなきらいがあるなと思っていて。「龍のようにウケた(※)」という言葉も登場していたけど、「そんなにウケたのに落ちたのはおかしい」って予選を観ていない人にまで波及して盛り上がっているのは過剰な気がする。実際に自分が観た予選とネットの評判を照らしあわせると、「全然違くない?」と思うこともあるし。
※編集部注:「M-1」準々決勝で、インテイクが「龍のようにウケた=龍ウケ」とネット上で話題となったが敗退した。
井口 準々決勝も準決勝も、会場が広いから座席によって体感が全然違いますからね。
飯塚 そうそう。自分が観ていない予選のリポートを根拠にして語らないほうがいいし、そもそもウケたから絶対に受かるとも限らない。「こうだから落ちたんだ」とか見当外れな考察も出てきて陰謀論みたいになってくるから、そんなに勘ぐらなくてもいいんじゃないかなと。
井口 今も結果に怒ったりしている人いるんですかね?
飯塚 そんなにキレてる人はいないね。昔の井口くんみたいな人は(笑)。
井口 誰も何も言ってないから平和ですよね、最近は。
飯塚 静かに思っている人はいるだろうけど。ネタがほとんど公開されているのもあるかもね。実際どうだったか確認できちゃうから。
井口 まあ、とにかく決勝に行くことは本当にすごいことなんだって思い出してほしいです。それでさらに優勝するってとんでもないことですから。
飯塚 改めて言わないとね。
井口 自分の推しが負けたときにこそ思い出してほしいです。「井口って本当にすごかったんだ」って。賞レースのファイナリストには改めて言われることが多いんですよ。「よく優勝しましたね」って。やっぱり優勝って針の穴を通すような、いろいろが合わさらないとできないので。
飯塚 年々難しくもなってるよね。配信があるから、知られているネタが如実にウケづらくなったと思う。1本ものすごいネタがあったら優勝するっていうことは昔のほうがあった。あと、大会の影響力がどんどん大きくなってるから、準決勝の空気が重いんだよね。お客さんも緊張しちゃって、楽しむ雰囲気じゃないというか。
井口 気楽に楽しんでほしいですけど。
飯塚 いやーでも、無理じゃない?
井口 無理か!(笑) 芸人たちがどうにかしていくしかないですね。そういう場でいかに爆発させられるか。
飯塚 敗者復活の会場が今年はEX THEATER ROPPONGIになった。相当ネタに集中できそうな環境だと思う。会場は大きいけど、これまでのように音が聞き取りにくいとか、途中で救急車の音が入るとかはなくなるのかも。
井口 トレンディエンジェルが優勝して以来、敗者復活から上位にすら入っていないので、敗者復活からの優勝にもそろそろ期待したいです。
飯塚 敗者復活が地上波で放送されるようになって、みんなが観ているからネタバレも関係している気がする。
井口 どっちを選択しても言われますからね。「同じのやった」も「変えちゃった」も。いくらフラットに見ようとしても「同じだ」「変えた」とは一瞬よぎっちゃうから。
飯塚 余計な雑念になっちゃうから難しいよね。まあしょうがないし、そのくらいがちょうどいいのかもしれないし。
井口 1回負けてるわけですからね。
──私からは、「決勝進出者発表会見、どうすればいいんだ問題」というのがありまして。
井口 今回も変な感じになったんですか?
──会見より、そのあとの質疑応答が難しかったです。どうしたら質問にちゃんと答えてもらえるのか。毎年反省しながら帰ってます。
井口 みんな、発表されたばかりでふわふわしているのもあるんでしょうけど。
飯塚 普通に意気込みも言って面白いことも言えると思うんですけど、それを投げ出している感じはありますよね(笑)。
井口 じゃあ出るなよ! 意気込みがないなら。質問をスカすなら出るな!
飯塚 会見がぐちゃぐちゃになるほうがSNSで話題になるし、それを「M-1」ファンも楽しんでいるから、「普通の意気込みが聞きたかった」とは言いづらい空気はある。その場の空気より、SNSのお笑いファンの反応を優先してるのかなって思う。
井口 もう、来年僕が会場に行きます! 「もういいよ、そういうの。一生懸命練習してきたんだろ!」って言いに行きますよ。
飯塚 「記者会見ウラ配信」やりましょう。井口くんが会見の様子を見て、さらに俯瞰でごちゃごちゃ言うっていう。
初登場組が多い「THE W」
飯塚 今年の「THE W」決勝は
井口 注目はされるんじゃないですか?
飯塚 粗品さんは今年の「ytv漫才新人賞」でも審査員を務めたけど、出場者が全員後輩だった。でも「THE W」の場合、
井口 けっこう思い切った起用ですよね。
──ファイナリストは、
飯塚 決勝常連やベテランもいるけど、初登場が多い。
井口 本当に知らないなあ。
飯塚 パンツ万博は今年の3月までNSCに通っていた1年目。ヤメピはお互い組み直しだけど、結成3カ月。電気ジュースも組み直しで、結成1年ちょっと。
井口 知名度ある人たちと、本当の無名の戦いですね。どうなるのか。
飯塚 「M-1」は決勝に行くまでに過程もあるし、大舞台慣れしてないってことはそこまでないと思うけど、「THE W」のファイナリストは普段出ているライブのお客さんが20人、みたいな人たちも少なくない。初めてのテレビで、しかもゴールデンタイムの生放送だから、そういう場所でちゃんと自分を出せるかというハードルもある。
井口 とんでもないことが起こるかもしれないですね。
飯塚 ただ準決勝では間違いなく全員ウケてるから、そこは観ている人には信じてほしいなと思う。「どれどれお手並み拝見」みたいな感じじゃなくて、シンプルに楽しんでほしい。
面白いことは当然、過去の自分との戦い
井口 「マイナビLaughter Night」のチャンピオン大会では
飯塚 おおぞらモードは今年大躍進してる。
井口 「M-1」も「キングオブコント」も準決勝まで行って、「ラフターナイト」優勝。浅井企画では久々じゃないですか? 賞レースに絡んでくる人が出てきた。
飯塚 浅井企画だと元祖いちごちゃんも「キングオブコント」決勝に行ってるけど、おおぞらモードはいろんな賞レースでちゃんと爪痕を残してる。自分たちの強みを掴んだ感じはある。
井口 何年も前に、元ニュークレープのデビさんが「久しぶりにちゃんと戦える奴が入ってきたわ」と言っていて、それがおおぞらモードだったんですよ。そこから何年も出てこないから、嘘っぱちじゃねえかよ!と思っていたら、ここへ来て本当に結果出してきた。最初から光るものはあって、やっと噛み合い出したんでしょうね。
飯塚 ほかの人が誰もやっていないようなネタだから、これからまだ活躍しそう。
井口 全然知らない奴があれをやるインパクトと、知ってる人がやるのでは違いますからね。ここから自分たちとの戦いが始まる。「M-1」の準々で落ちた人たちを見ても、過去の自分たちとの戦いになってきている人もいるなって思います。
飯塚 しかも、それが年々早くなってるよね。配信もあるから。
井口 1回、2回賞レースに出るだけでみんな知っちゃう。
賞レース、終わることだって全然ある
井口 賞レースで言うと、「THE SECOND~漫才トーナメント~2026」の開催が発表されましたね。
飯塚 改めて思うのは賞レースって、開催されるのが当たり前ではないんだよね。終わることも全然ある。たまに「M-1」に出ている人で、「自分は『THE SECOND』向きなので、あと数年したら『THE SECOND』でがんばろうと思ってます」みたいな人いるけど、なくなることもあるから!って思う。
井口 それがよくないですね。その気の緩みが。たまたま今回あっただけなんだから、「ない」と思ってやらないと。目の前のことを全力でやったほうがいいんだから。
飯塚 あと、ショートコント日本一を決める「短劇王」というのがあって。パフォーマンスを自分で撮影してエントリーするんだけど、動画のクオリティの差がすごかった(笑)。
井口 (笑)。それはそうなるでしょうね。
飯塚 それも含めて楽しめる。よく賞レースの1回戦とかで「動画審査」ってあるけど、動画のクオリティがバラバラなんだよね。音が聞こえづらいとか背景が気になるとか。それを体験できます(笑)。
井口 優勝は決まったんですか?
飯塚 本人も言っているから言うと、
井口 こういうの得意ですよね。「30-1グランプリ」しかり(※)。
※編集部注:「水曜日のダウンタウン」(TBS)の企画で、30秒以内ネタの大会「30-1グランプリ」。オキシジェンは2023年の放送回で優勝している。
飯塚 オキシジェンがYouTubeに上げているネタもすごく好きで。ショートネタでは活躍してるけど、もっと注目されてほしいなって思う。とんでもなくおじさんではあるけど……。
井口 とんでもなくおじさんですよね。カリスマ性とかがあるタイプでもないですけど。
飯塚 ネタは間違いなく面白いから。
井口 得意なところを見つけた感じはありますね。
飯塚 昔アクロバットコントみたいなネタをやっていた時期もあったけど、漫才になって、漫才協会に入って師匠のモノマネしたり、器用なんだろうね。
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