ナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~
怒髪天の場合
命がけ!地獄のバイト体験
──これはヤバかったなみたいな危ないバイト経験はありますか?
坂詰 僕はずっと鳶職だったので、落っこったら命が危ない。細かく落ちたことはあるけど。
増子 ツーフロアぐらいは落ちてたよな(笑)。木からも落ちて肋骨折ってるし。
清水 一番怖かったのは定山渓のホテルでやった窓拭き。谷の上に建ってるから下が崖っぷちで、建物自体がちょっとせり出してるんですよ。今まで最高13階の窓から降りたことあるけど、それどころじゃなかったね。しかも真冬だし(笑)。
増子 ヨウちゃん(吉村秀樹 / bloodthirsty butchers)もすごかったなあ。強風でゴンドラに揺られて、ビルの窓ガラス割ったって言ってたもんね。まあでもバブル期だったから、日当はよかったんだよ。「an」もこんなに厚くてさ(笑)。
清水 あと北海道と東京では賃金も2倍ぐらい違ったね。
増子 札幌でポスティングのバイトもやってたけどさ、途中で嫌になっちゃったもんな。東京と違って1件1件がすんげー遠いんだから。一度お屋敷のポストにチラシ入れようと思ったら、向こうのほうからシャリシャリシャリシャリって鎖の音が聞こえてきて、うわ番犬が来たなヤバいなと思ってたら、でっけえ孔雀だった(笑)。
──あははははは(笑)。
清水 馬もあったね(笑)。
増子 石膏ボードの搬入も大変だったなあ。キッツかった。
上原子 みんな何枚運べるか競争になったりして(笑)。
──あー、単調な現場作業も自分の中で勝手なルールを作ってゲーム感覚で楽しんだり、そういうしのぎ方がありますよね(笑)。
増子 そうそう。そんで昼メシも食わないでやるんだよ。早く終わらせて帰りたいから。俺なんて現場着いたとたんに帰りたいんだから(笑)。なにしろ早く帰りたい。
バブル期の東京は怒髪天が作った!?
──苦労話は尽きないと思うんですけど、逆にこのバイトは天国だったみたいな経験もありますか?
上原子 ハウスクリーニングのときに、世田谷のマダムの家の掃除をやったことがあって。あれは天国だったなあ。お小遣いもらえるの、帰り際に(笑)。部屋の隅々までキレイにするとすごく喜んでくれて「これでごはんでも食べなさい」って。さらに「お酒飲むんでしょ?」ってお酒もバーッと渡されて、いつもリッチになって帰ってた(笑)。あそこは進んで行ってましたね。
清水 よくわかんない金持ちの家もあったよね。
増子 ああ、あったあった!
上原子 ヤバいぐらい金持ちの若者で、でも何やってるのか実態がわかんないの。でもあるときパタッと依頼がなくなって、しばらくしたらその家ももぬけの殻になって。
増子 バブルの頃はホント景気よかったから、バイト代も高かったの。今はもしかしたら大変かもしれないね。そうだ、あの頃の現場仕事と言ったら、俺らヴィーナスフォートもやったし、都庁のあたりもなんかやったよね。
上原子 やったやった。西新宿の開発もやったよ。
──お台場や西新宿は怒髪天が作った(笑)。
増子 俺らと周りのバンドがみんな作ったんだよ。アイランドタワーは大変だったなあ。登るのも降りるのも外付けの仮設エレベーターで時間かかるのよ。まあ俺は乗らないけどね。
上原子 47階まで登って降りてくる間に20分ぐらいかかるんで、1回逃すとそのぶん働かなくて済むから。俺はそんときリーダーみたいになってたんで、早く行かなきゃってどんどん登り降りするんだけど、「増子ちゃんホラ空いてるよ、乗ろうよ」って言っても「いってらっしゃい!(敬礼のポーズで)」って(笑)。上から増子ちゃんの呑気な姿見てみんなで腹立てながら(笑)。
増子 いろんな種類のバカがいて面白かったよ。休憩時間にお茶買ってきてって頼んだらなかなか帰ってこなくて、なんだと思ったらお茶っ葉買ってくる奴とかさ(笑)。「なかなか売ってなくて」だって(笑)。
アルバイトのブルース
──バイトならではの体験というと、人付き合いもありますよね。普段の生活では絶対接点がないような、歳の離れたおじいさんやおばあさんと一緒に仕事することになったりとか。
増子 現場仕事だと必ずおじいさんいたよな。ヨネさんっていうおじいさんがいて、その人がもう、哀愁がハンパないのよ(笑)。「夕ごはん作るから遊びに来なよ」なんて誘われて、みんなバンドがあったかなんかで「まあいいか」っつって行かなかったの。そしたら週明けにヨネさんすごい寂しそうな顔して「肉……買っといたんだけど。誰も来ないから冷凍しちゃったよ」って(笑)。しょうがねえなっつって次の週にみんなで行ってな。ヨネさん1人暮らしなもんだから張り切っちゃって、昔の写真とか引っぱり出してきて。ステレオあったからヨネさんレコード何聴いてんのって見てみたら、左とん平の「ヘイ・ユー・ブルース」(笑)。哀愁ありすぎんだろって涙出そうになっちゃって(笑)。
上原子 まさにブルースだね(笑)。
増子 バブル弾けたあとだと、現場でガードマンやってる人で元社長だったみたいな人、けっこういたもんな。変にプライド高くて現場で揉めてたりするんだけど(笑)。
──バイトでの出会いが今につながっていることもありますか?
増子 俺はずっとタイルの目地屋やってたんだけど、映像監督やってる丹下(紘希)はそこで知り合ったんだ。今は巨匠になっちゃったけど、一緒にコテ持って仕事してたよ。
──丹下監督はその頃から映像作家になろうとしてたんですか?
増子 そう。でもあいつもっと前は役者やってたの。白虎社で暗黒舞踏やってた。映像やりたかったんだけど事務所に入ったら役者やらされて、トレンディドラマに出ることになってもう嫌んなっちゃったって(笑)。
上原子 バンドマンもいたし役者の卵もいたし、いろんな人がいて楽しかったね。バイトでいろんな友達ができたし、いまだに付き合いがある人も多い。
清水 eastern youthにベースで二宮(友和)くんが入ったときなんて、現場の詰め所で誘われたんだよね(笑)。
増子 「ギター弾けるんだったらベースも弾けるっしょ?」って(笑)。バイト先で仲良くなって「じゃあ対バンするか」ってことも多かったね。
「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。怒髪天の4人にはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。
路線・駅・区間、職種、雇用形態、短期、高収入など、さまざまな条件からアルバイトを探すことができるWEB版「an」。バイトの検索方法は、地域を選び、チェックボックスに希望の条件を入力するだけ。自分にピッタリのバイトに出会おう!
BACK NUMBER
- 結成30周年アニバーサリーイヤー記念ベスト盤「問答無用セレクション“金賞”」 / 2014年7月2日発売 / [CD3枚組] 2700円 / IMPERIAL RECORDS / TECI-1404
- 結成30周年アニバーサリーイヤー記念ベスト盤「問答無用セレクション“金賞”」
DISC 1
- 江戸をKILL II
- サムライブルー
- あえて荒野をゆく君へ
- 蒼き旅烏
- 欠けたパーツの唄
- 北風に吠えろ!
- 明日への扉(Version, 2014)
- 宿六小唄~ダメ男に捧ぐ~
- 男は胸に…
- ロクでナシ
- つきあかり
- 俺達は明日を撃つ!
- はじまりのブーツ
- 喰うために働いて 生きるために唄え!
DISC 2
- 酒燃料爆進曲
- なんかイイな
- NO MUSIC, NO LIFE.
- GREAT NUMBER
- 労働CALLING
- ド真ん中節
- オトナノススメ
- オレとオマエ
- 男達のメロディー
- D&Jのテーマ
- 東京衝撃
- 情熱のストレート(D&J Version)
DISC 3
- 押忍讃歌
- そのともしびをてがかりに
- 歩きつづけるかぎり
- ホトトギス
- 雪割り桜
- 恋のレキシカン・ロック
- 濁声交響曲
- ドリーム・バイキング・ロック
- 団地でDAN!RAN!(増子直純フル歌唱ver)
- どっかんマーチ
- 流れる雲のように(Studio Live)
- 全人類肯定曲(Studio Band Version, 2013)
- ニッポン・ワッショイ(Studio Band Version, 2013)
収録曲
- 己 DANCE
- プレイヤーI(KURENAI MIX)
- 地獄で会おうゼ!
- 友として
- ちょいと一杯のブルース
- チャレンジボーイ
怒髪天(ドハツテン)
増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)からなる4人組バンド。1984年に札幌で結成。自らの音楽性をJAPANESE R&E(リズム&演歌)と称し、独自のロックンロール道を確立。30周年記念イヤーとなる2014年は、1月に東京・日本武道館公演を開催し、満員御礼・大成功に収める。4月9日には30周年記念アルバム第1弾「男呼盛“紅”」をリリースし、現在47都道府県ツアーにて各地凱旋中。また7月2日にはベスト盤「問答無用セレクション“金賞”」をリリース。9月20日には北海道・国営滝野すずらん丘陵公園にてフリーライブ「カムバック・サーモン2014“男の遡上フェスティバル”」の開催が決定している。
2014年12月26日更新