ナタリー PowerPush - m-flo

5年ぶりオリジナルアルバム「SQUARE ONE」

僕はメジャーにいたいアングラな人

──デビューから今日までの間で、VERBALさんと☆Takuさんの関係性も変化してるのではと思いますが、いかがですか?

インタビュー風景

デビューしたとき、僕は音楽で食っていこうとは思ってなかったんですが、☆Takuは最初から音楽一筋でやりたいと思っていて、まずその意識が全く違いました。さらに、当時僕はCOMPANY FLOWとかクール・キースとかギャングスターとか、そういうのしかカッコよくないでしょっていう偏った音楽の聴き方をしていた反面、☆Takuはダンスミュージックと併せてポップスも好きで、すごく両極端にいる2人だったかもしれません。そこにLISAも入ってケミストリーが起きて、それが良いグルーヴ感を生んでいたという感じですね。その後2人とも音楽業界のイロハを学んで、お互いスマートになっていって、それぞれカラーの違うレーベルも作って、それを見て感化し合って。

──同じユニットだからカラーを統一させようと思ったことはない?

そもそも学生時代からつるんでいるグループも違くて、音楽を作るときだけ僕ら一緒だったんですよ。だからお互いの持ち味が違うことはわかっていて、それが今でも続きつつって感じですかね。逆にどう見えます?

──VERBALさんと☆Takuさんの違いが、音楽シーンにおけるm-floの独特な立ち位置を生んでいるような気がします。2人組ユニットで意見が違うって致命的だとは思うんですけど(笑)、m-floはそれで良いんだろうなって。

そうですね(笑)。僕は性格的に、メジャーにいたいアングラな人なんで。マインド的にはストリート上がりなんだけどこっちにいたいって意識で。

──「こっち」ってメジャーシーンのことですか?

はい。なんでかって言うと、やっぱりメジャーにいないと大きな世界を動かせないから。結局、音楽業界を動かしてるのって偉い人たちじゃないですか。そういう人たちとリンクしつつ、ストリートでも何が起こってるかを肌で感じてないと、リアルなものを世の中に出せないし、自分たちの力をストリートに反映できないっていうのもわかるんです。だから僕はそこの行き来をすごく大事にしていて。こんな時代だからこそ、そういう人がいれば若い子たちも前向きに世の中に出ていけると思うんですよね。

☆Takuは天才

──VERBALさんにとって☆Takuさんはどんな存在の人ですか?

☆Takuは、今ここにきてカルヴィン・ハリスのリミックスを作ったり、いち早く海外のシーンに通用するビートを取り入れたり、昔から音に関してのセンスが誰よりも長けてる。僕は☆Takuのこと、天才だと思ってるんです。だから引き続きそのセンスを生かして、m-floも自分の作品ももっと形にしていってほしいです。そういう大事なパートナーですね。

──そんな才能あふれるパートナーと14年を共にしているわけですね。

☆Takuに対しては年々リスペクトの度合いが増していて、やっぱすげえなって本当に感じます。昔は僕もナイーブだったから、大学卒業後すぐに音楽の仕事を始めた彼に「大丈夫かなコイツ」みたいな目線を持っていたときもありましたけど、お互い大人になってビジネスの面でも接していると、すごいもの持ってる人ってやっぱ素敵だなって思うんです。自分が全く持ってないものを持っているので、リスペクトしてます。

治外法権みたいな存在でいたい

──今、m-floというアーティストは世間的にどう見られていると思いますか?

インタビュー風景

リアルに言っちゃうと、若い人たちの間ではもう存在感が薄いと思ってるんですよ。m-floと似たような音楽を好んで聴いてる子からしたら、僕らが先駆けでも、パクりだと感じるかもしれない。そういう意味でジェネレーションが変わったという感覚はあって、m-floサウンドを知らない人たちがいっぱいいることはすごく自覚してます。あと、よく言われるのが「m-flo好きだったんですよ。なんで解散したんですか?」。いや勝手に解散させないでって(笑)。それから僕のことを「m-floさん」って呼ぶ人が出てきたり。

──あはははは!(笑)

という感じで薄れちゃってるのかなって思う反面、実際動くぞってなると「わー来た来た」ってみんながバッと集まってくれるのも感じてるんです。不思議な立ち位置のグループだなとは思いますね。何をするグループか、みんなもちょっとカテゴライズしづらいでしょうね。

──ご本人的には何をするグループだと思います?

うちらは昔から“当たり前を打ち壊してきた音楽グループ”だと思います。別にぶち壊そうと思ってしているんじゃなくて、絶対このほうがカッコいいよと思ってやったら意外とうまくいっちゃったみたいな。学校で、いたずらしてもいつも許されちゃう人みたいなポジションかな。ちょっと治外法権みたいな存在でいたいですね(笑)。

スベったらまた新しい企画でカムバック

──で、「SQUARE ONE」を出したあとのm-floの動向もやっぱり気になるところです。

次ですか。こんなに散々言って結果スベったら、また新しい企画を考えてカムバックしたいなと思います。

──“スベる”ですか(笑)。実際にキャリアの中で「これは失敗したな」ってことはあるんですか?

たくさんありますよ。みんながあまりフォーカスしないところ、全て失敗(笑)。

──えー!

スベったっていうか、向かい風もたくさん受けましたしね。例えば初期の頃は、ああいう感じのトラックでラップする人たちがあまりいなかったんで、すごいバッシングを受けたんですよ。僕らの活動は基本的にハイリスクなんで、ハイリターンだったときと、全くリターンがないときとあって(笑)。ただ、それのおかげで免疫力が付いたので、なんの抵抗もなくいろんなタイプの曲を作ることができて、独自のポリシーができたんだと思います。チャレンジするのはやっぱり大事ですね。NASAだって何兆円もかけたことが失敗したりするけど、それがあって初めての宇宙旅行が実現したりするので、失敗を恐れちゃダメだなって。

──トライアンドエラーを繰り返して、なおも新しいことを考える。そういうところは本当に挑戦者ですね。

臆病になったらおっさん化していくだけなので、もう間違っても良いじゃんって。身を削った自分たちが一番痛いですけど(笑)。それに最終的にはみんな、自分が好きだったものをピンポイントでしか覚えてないんですよ。「m-floの何が好き?」と訊いて「let go」「come again」「LISA時代」、どう答えても結構だと思うんです。良いものを出せばそれがタイムラインに残るし、良くなければ残らない。だから良いものができるまでこれからも作り続けていきたいなって思ってます。

インタビュー風景

ニューアルバム「SQUARE ONE」/ 2012年3月14日発売 / rhythm zone

  • ニューアルバム「SQUARE ONE」/ 2012年3月14日発売 / rhythm zone
  • [CD+DVD] 3990円(税込)/ RZCD-59030/B / Amazon.co.jpへ
  • [CD] 3150円(税込)/ RZCD-59031 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. □ [sayonara_2012]
  2. Perfect Place
  3. ALIVE
  4. □ [frozen_space_project]
  5. Never Needed You
  6. Oh Baby
  7. □ [square1_scene_1_
    murder_he_wrote]
  8. Don't Stop Me Now
  9. All I Want Is You
  10. Acid 02
  11. Call Me
  12. □ [ok_i_called]
  13. Sure Shot Ricky
  14. RUN
  15. □ [square1_scene_2_
    don't_blink]
  16. So Mama I'd Love To Catch Up, OK?
  17. She's So (Outta Control)
  18. Yesterday
  19. □ [to_be_continued...]

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DVD収録内容(※CD+DVD盤のみ)
  1. She's So (Outta Control) [4'38"]
  2. All I Want Is You [5'13"]
  3. ALIVE [4'49"]
  4. Live at “m-flo presents BŌNENKAI 2011”(TCY Snippet Edit) [18'53"]

m-flo(えむふろう)

MCのVERBALとDJの☆Takuからなるプロデュースユニット。1998年、インディーズを経てrhythm zoneからメジャーデビュー。当時は紅一点のメインボーカル・LISAを含むトリオ編成だったが、2002年にソロ転向を理由にLISAが脱退。2003年以降は各曲ごとにゲストシンガーを招く“loves”プロジェクトをスタートさせ、Crystal Kay、坂本龍一、BoA、安室奈美恵など計41組のアーティストをフィーチャーして、後のコラボブームの先駆けとなった。2009年にはデビュー10周年を記念し、ベストアルバム「MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-」やトリビュートアルバム「m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~」をリリースしたほか、国立代々木競技場第一体育館にてスペシャルライブを開催。その後しばらくソロ活動が中心となり、2012年3月に約5年ぶりのオリジナルアルバム「SQUARE ONE」をリリースした。


2012年4月16日更新