ナタリー PowerPush - m-flo
5年ぶりオリジナルアルバム「SQUARE ONE」
クラブの魅力と問題点
──ところで、☆Takuさんはどんなパーティがお好きですか?
ナンパの要素の強いパーティもあれば、音楽的要素の強いパーティもあります。それぞれいろいろな用途があると思いますが、僕は音楽道場みたいなパーティも苦手ですし、ナンパ色が強いパーティも苦手です(笑)。両方良いバランスで入ってるパーティが素敵なんじゃないかな。好きな音楽の趣味を持ってる同士が恋人になれるなんてロマンチックじゃありませんか?
──普段クラブへ行かない人、もしくは行ったことのない人に☆Takuさんのパーティの魅力を教えてください。
まず、ダンスミュージックって音楽でもあり、アトラクションだと思うんです。ダンスミュージックは迫力のあるサウンドシステムで鳴らすために作られていて、これを身体で体感しながら踊るのは本当に気持ちの良いものです。そしてみんなと騒ぐのはとにかく楽しい。僕のパーティは偶数月の第1週末、東京では金曜日、大阪では土曜日にやっています。日本の素晴らしいDJはもちろんのこと、海外からも面白いDJを呼んでいます。すごく盛り上がるパーティですし、みんなとてもフレンドリーなんで、よかったらぜひ遊びにきてほしいです。
──逆に、日本のクラブシーンに何か問題を感じているところはありますか?
そうですね、問題だらけです。でも、それを言い出したらまた別のインタビュースペースが必要になってしまうので、簡単に書きますが、まずは風営法問題。クラブが0時や1時以降営業してはいけないという法律はナンセンスだし、逆に帰宅難民を作ってしまいます。場合によっては女の子たちが始発が来るまで街をさまよわないといけない危険性があるのが心配です。
──確かにそうですね。
そしてもうひとつの問題はエレクトロニック音楽で特に思うことなんですが、若手で集客のできるDJが育ってきていません。DJたちの高年齢化は大きな問題だと思います。海外ではベテランでも若手でもしっかりと集客ができて、これがビッグビジネスになります。カルチャーというものはとても大事ですが、カルチャーを存続させるためには、
- ア)国から援助金をもらう
- イ)しっかりとビジネスモデルを成立させる
このどちらかが必要です。まずア)は絶対あり得ないのでイ)に頼るしかないのですが、今の日本はダンス音楽がしっかりとビジネス化できてないのが大きな問題だと思います。これは不況の影響か、昔よりダンス音楽を紹介したり、アーティストやパーティにスポットを当てる場所が少なくなってしまったのが理由のひとつだと思っています。そんな理由で去年、ダンス音楽専門WEBラジオ局「block.fm」を立ち上げました。この局の何がすごいかというと、僕個人がどうこうではなく、日本のトップDJたちがそれぞれの力をフルに出して、今までにないものや面白いものを紹介していってるところです。
──このラジオ局はほぼ全て生放送なんですよね。
はい。20時くらいから深夜2時くらいまで。ジャンルもヒップホップ、ハウス、レゲエ、D&B、ベースミュージック、踊るロック的なもの、そういった音楽とともにファッションやカルチャーも紹介していくラジオ局です。ちなみにiPhoneや最新のスマートフォンでも聴けるので、外へ持ち運ぶことができます。
小室さんの解説はとても的を射ていた
──今回の企画に参加していただいた小室哲哉さん、かしゆかさんへのメッセージをそれぞれお願いします。まずは小室さんから。
実は小室さんとは、ちゃんとお会いしたいことがないんです。
──それは意外ですね。
周りの人からは、彼がとても楽しくて優しい人だとよく耳にするんですが、彼の言葉を見て実はすごく繊細できめ細かいクリエイターなんだなと感じました。しかも解説がとても的を射ている。記事としてもとても面白かったです。ヨーロッパの音楽が好きで、なおかつJ-POPの歴史を作ったレジェンドにこのような解説をしていただき本当に光栄です。
──いろいろな時代で名曲を作ってきたクリエイターですからね。
そうですよね。ただ、自分があの曲にペンタトニックスケールというものを使っているとは初めて知りました(笑)。人生いつまでたっても勉強ですね。
──☆Takuさんは音楽理論などはあまり得意ではないんですか?
はい。高校生のとき、最初に触ったダンス音楽ツールはDJミキサーとターンテーブルでしたから。DJからスタートしたんです。そういったところも小室さんと僕は違う部分があるかもしれませんね。
──小室さんの音楽についてはどう思いますか?
正直、小室さんの音楽をめちゃめちゃ知っているほど詳しくないんです。あれだけJ-POPのシーンでヒットを出されているので、もちろんそういった曲は知っていますが。ただ、彼が作ってきたアルバムの全てを聴いてもいないのに、彼の音楽を語れると思えないんです。これはメディアにも意識してほしいことなんですが、記事の中で「推し曲」は語るスペースがあっても「それ以外はおまけ」的な扱いになっちゃうことって多いじゃないですか。ページの中に書けるスペースも限られてるから仕方がないんだけど、やっぱりアルバム全てを聴かないでその人のことを語るのは僕は好きじゃないんです。
──なるほど。
そんな中でも彼をどう感じているかというと、僕が高校生の頃ダンスミュージックという文化がまだ日本では日の目を見ない中、いち早くレイブやジャングルなどを取り入れて国民に紹介をしたのはTRFです。もちろん、いきなりハードなダンスをそのまま日本でやったら、オーディエンスはついていけない。その中でいろいろな工夫がされてきたと思います。そして、それでこそ、今のアーティストが育っていったのは間違いないと思います。音楽の系譜というものはシーンなど関係なく、必ず引き継がれるものなんだなと思います。
m-floとPerfumeでコラボしたい
──そしてかしゆかさんもとてもポジティブなコメントをしてくれましたね。
かしゆかちゃんは初めて会ったときとてもフレンドリーで、すぐに打ち解けました。皆さんの知らない一面なんですが、実は僕すごく人見知りなんです。ごく稀に、こいつ・この子とは友達になりたいなって思うくらい。かしゆかちゃんはそんな素敵な子です。
──インタビューを読んでどう思われました?
僕は熱い人ですか。確かに日本を本気で変えていこうとしています。日本でも、もっとダンス音楽がライフスタイルに入っていって、日本の才能が世界に出ていけるきっかけを作っていきたいんです。僕ら日本人はいろいろなことで精一杯で、ついつい日本国内のことを考えてしまいますが、ヨーロッパの人を見てください。国と国が地続きで通貨が一緒というのはわかりますが、自国で完結させず、世界へ広がっていってます。あ! やっぱ熱いですね。かしゆかちゃんが言っていることが正しいですね。
──かしゆかさんに「面白いことしよう」と話したそうですが、「面白いこと」とはなんのことだったんでしょうか?
いや、一緒にコラボしたいなと思っていて。僕のソロとかしゆかちゃんで当初考えていたんですが、それ以外のm-floとPerfumeという形でも。これだけYouTubeやニコニコ動画でMADが出てるんだから、そろそろ本物をやりたいです。そしてできれば(中田)ヤスタカも一緒にやれたらすごく楽しいだろうなー。ヤスタカくんのすごいところはトラックの生産能力もそうなんですが、やっぱり詞がすごい。僕の勝手の呼び方なんですが、彼は21世紀の阿久悠さんだと思っています。あ! もちろんm-floでやる場合はボーカリストについてお答えすることはできないんですが(笑)。
CD収録曲
- □ [sayonara_2012]
- Perfect Place
- ALIVE
- □ [frozen_space_project]
- Never Needed You
- Oh Baby
- □ [square1_scene_1_
murder_he_wrote] - Don't Stop Me Now
- All I Want Is You
- Acid 02
- Call Me
- □ [ok_i_called]
- Sure Shot Ricky
- RUN
- □ [square1_scene_2_
don't_blink] - So Mama I'd Love To Catch Up, OK?
- She's So (Outta Control)
- Yesterday
- □ [to_be_continued...]
DVD収録内容(※CD+DVD盤のみ)
- She's So (Outta Control) [4'38"]
- All I Want Is You [5'13"]
- ALIVE [4'49"]
- Live at “m-flo presents BŌNENKAI 2011”(TCY Snippet Edit) [18'53"]
m-flo(えむふろう)
MCのVERBALとDJの☆Takuからなるプロデュースユニット。1998年、インディーズを経てrhythm zoneからメジャーデビュー。当時は紅一点のメインボーカル・LISAを含むトリオ編成だったが、2002年にソロ転向を理由にLISAが脱退。2003年以降は各曲ごとにゲストシンガーを招く“loves”プロジェクトをスタートさせ、Crystal Kay、坂本龍一、BoA、安室奈美恵など計41組のアーティストをフィーチャーして、後のコラボブームの先駆けとなった。2009年にはデビュー10周年を記念し、ベストアルバム「MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-」やトリビュートアルバム「m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~」をリリースしたほか、国立代々木競技場第一体育館にてスペシャルライブを開催。その後しばらくソロ活動が中心となり、2012年3月に約5年ぶりのオリジナルアルバム「SQUARE ONE」をリリースした。
2012年4月16日更新