ナタリー PowerPush - m-flo
5年ぶりオリジナルアルバム「SQUARE ONE」
history of m-flo 1998-2012
1998年10月にシングル「The Way We Were」でCDデビューし、今年、デビュー14年目となるm-flo。その活動期間は、クラブミュージックをJ-POPシーンに持ち込み、確固たる地位を築いたLISA在籍時代、総勢41組のアーティストとコラボレーションを繰り広げた“loves”プロジェクト時代、VERBALと☆Takuの2人が音楽界をも飛び出して個々の活動を展開した近年と、大きく3期に分けられる。
このページでは、m-floの軌跡を年代別にトピックで分けて紹介。彼らの残してきた功績や、常に新しいものを追い求める姿勢を改めて確認してほしい。
文 / 鳴田麻未
1998年~2002年
LISA+VERBAL+☆Taku
1998年、元々☆TakuとVERBALの2人によるユニットだったm-floは、rhythm zoneのインディーズレーベル・Rhythm REPUBLICより初のCD音源「The Way We Were」をリリース。その後LISAがボーカルとして加入し、女性ボーカリスト+男性MC+DJという3人形態になって「been so long」を含むシングル「the tripod e.p.」でメジャーシーンに進出する。
当時のm-floの武器は、☆Takuのスタイリッシュなトラックやサンプリングセンス、日本語と英語を自在に操るVERBALのラップ、女の子の甘酸っぱい思いを歌うLISAの柔和なボーカル。まさに三位一体といえるこのユニットを、彼らは“the tripod”(3本の柱)と表現した。
宇宙的ユニット
2000年2月、1stアルバム「Planet Shining」を発表。17曲中6曲のインタールードでは、ナレーションを交えて「2012年、宇宙船“グローバルアストロライナー号”で宇宙旅行に出かける」というストーリーが展開され、m-floのスペイシーな世界観を提示した。以降、m-floは今日に至るまで一貫して「宇宙」をキーワードに作品作りを行っており、“グローバルアストロライナー号”をはじめとする独自の造語も、アルバムのストーリーテリングや歌詞の中にたびたび登場している。
LISAの脱退
1999年から2001年にかけて、m-floは「L.O.T. (Love Or Truth)」「Hands」「Come Back To Me ~reviens moi~」「How You Like Me Now?」「come again」「orbit-3」「prism」など数々のヒットシングルをリリースした。そして2002年4月、LISAがソロ活動に専念するため脱退。2人体制となったm-floは、しばしメンバー個々の活動中心にシフトする。☆Takuは日之内絵美のプロデュースやCrystal Kayへの楽曲提供、映画「模倣犯」のテーマ曲を手がけ、VERBALは安室奈美恵、SUITE CHIC、嶋野百恵、倖田來未、中島美嘉、SPHERE of INFLUENCEらの楽曲に客演で参加した。
2003年~2008年
lovesプロジェクト始動「ASTROMANTIC」
2003年春、m-floは再始動とともに誰もが驚くプロジェクトを始めた。それは、毎回異なるアーティストとのコラボで曲を制作する“loves”という新しいスタイル。第1弾はCrystal Kayを“loves”した「REEEWIND!」だった。その後、m-flo loves melody.&山本領平名義によるシングル「miss you」、m-flo loves BoA名義のシングル「the Love Bug」が、いずれもヒットを記録。当時無名のアーティストや若い才能がlovesプロジェクトでm-floと共演することで、自身のブレイクにつながるケースもあった。
そして2004年5月、lovesシリーズ初のアルバム「ASTROMANTIC」が完成。既発ラインナップに加え、Dragon Ash、CHEMISTRY、DOUBLE、坂本龍一、野宮真貴、クレイジーケンバンドなど多彩な実力派アーティストが参加した、まさにm-floにしか成し得ない夢の1枚となった。
<参加アーティスト>
melody. / 山本領平 / AI / 日之内絵美 / Rum(Heartsdales) / Bloodest Saxophone / Dragon Ash / Crystal Kay / CHEMISTRY / BoA / DOUBLE / TOKU / 坂本龍一 / 野宮真貴 / クレイジーケンバンド / BOY-KEN / BLACK BOTTOM BRASS BAND
m-floファミリー誕生「BEAT SPACE NINE」
2005年8月にリリースされた、lovesシリーズ第2弾アルバム「BEAT SPACE NINE」。本作のトピックは、EMYLIやYOSHIKAをアルバム中に複数回起用してゲストの常連=m-floファミリーを作り出したことと、元メンバーのLISAを“loves”したことだろう。また、アルバムリリース後の全国ツアーでは、m-floにとって初の日本武道館ライブが実現。年末にはm-flo loves Akiko Wadaとして「第56回 NHK紅白歌合戦」への出場も果たし、その認知度と人気はさらに増していった。
<参加アーティスト>
BENNIE K / EMYLI / YOSHIKA / Sowelu / WHEE SUNG / 加藤ミリヤ / Monday満ちる / Diggy-MO'(SOUL'd OUT) / カヒミ・カリィ / Rie fu / 和田アキ子 / LISA
最終章「COSMICOLOR」と一夜限りの豪華ライブ
m-flo loves 日之内エミ&Ryohei「Summer Time Love」がマルイのCMソングとして大量オンエアされたり、m-flo loves DOPING PANDA「She loves the CREAM」ではアニメ作品「Amazing Nuts!」とのタイアップで特別バージョンが制作されたりと、高い注目度を保ち続ける中、☆TakuとVERBALはlovesプロジェクトの終結を宣言。最終章と銘打たれた「COSMICOLOR」には、安室奈美恵やCharaなどひときわ豪華な面々が参加した。 2009年7月には、総勢17組のゲストが登場するライブを横浜アリーナで開催。lovesシリーズの集大成ともいえる最高の盛り上がりで、一大プロジェクトは幕を閉じる。
<参加アーティスト>
Crystal Kay / 安室奈美恵 / melody. / 日之内エミ / Ryohei / 倖田來未 / MONKEY MAJIK / DOPING PANDA / Alex(CLAZZIQUAI PROJECT) / BONNIE PINK / Chan / THAITANIUM / エディソン・チャン / MINMI / Chara
2009年~2012年
ソロ本格化~メジャーデビュー10周年
lovesプロジェクトに区切りを付けた☆TakuとVERBALはそれぞれソロ活動に注力。その期間中である2009年秋、m-floはメジャーデビュー10周年を迎える。当時はこれを記念してトリビュートアルバム「m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~」とベストアルバム「MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-」がリリースされ、国立代々木競技場第一体育館で2日間にわたり豪華ゲストを集めたスペシャルライブが行われた。 またこの頃から、年末にageHaでm-flo主催パーティを実施するのが恒例に。FPM、DEXPISTOLS、中田ヤスタカ(capsule)などがゲストとして登場し、ここでm-floの最新トラックが初披露されることもあった。
VERBALはマルチな能力フル活用
かねてよりMC、DJ、プロデューサー、ジュエリーデザイナーとして、その才能をいかんなく発揮していたVERBAL。2009年以降はBoA、HALCALI、ICONIQ、MINMI、加藤ミリヤ、AILIらさまざまなアーティストの楽曲にゲスト参加したほか、積極的にクラブイベントに出演してDJ活動も活発化させた。さらにテレビ朝日「さきっちょ☆」のレギュラーMCを務め、東日本大震災発生を受け制作されたACジャパンの臨時キャンペーンCM「日本の力を、信じてる」に出演するなど、タレント活動も絶えず行っている。このマルチな活動の1つひとつをきっかけにm-floを知り、ファンになったリスナーも少なくないだろう。
2011年3月には、初のソロアルバム「VISIONAIR」をリリース。この作品にはVERBALの幅広い人脈が集約され、リル・ウェインや安室奈美恵、大沢伸一、新人のSHUNYAなどが参加した。
☆Takuはクラブシーンの興隆に尽力
☆Takuは自身のレギュラーパーティ「Tachytelic」を発展させ、2010年6月に主宰レーベル「TCY Recordings」を発足。今も国内外の若手クリエイターが、データ配信で世界に向け音源を発信している。さらに2011年11月11日には、☆Takuが提唱するダンスミュージック専門のWEBラジオ局「Block.FM」が開局。彼は、クラブミュージックと良質なポップスの融合を図った時代を経て、国内外のDJとともにクラブミュージック自体を盛り上げたいという指針を持ったようだ。
そしてVERBALのソロアルバムと時を同じくして、☆Takuもソロプロジェクト「THE SUITBOYS」名義でミックスCD「AFTER 5 VOL.1」をリリースする。こちらにはエレクトロ、ドラムンベース、ダブステップを中心とした世界基準のフロアチューンに加え、☆Takuのプロデュース&リミックス楽曲、THE SUITBOYSとしての新録トラックなど全38曲が収録された。
CD収録曲
- □ [sayonara_2012]
- Perfect Place
- ALIVE
- □ [frozen_space_project]
- Never Needed You
- Oh Baby
- □ [square1_scene_1_
murder_he_wrote] - Don't Stop Me Now
- All I Want Is You
- Acid 02
- Call Me
- □ [ok_i_called]
- Sure Shot Ricky
- RUN
- □ [square1_scene_2_
don't_blink] - So Mama I'd Love To Catch Up, OK?
- She's So (Outta Control)
- Yesterday
- □ [to_be_continued...]
DVD収録内容(※CD+DVD盤のみ)
- She's So (Outta Control) [4'38"]
- All I Want Is You [5'13"]
- ALIVE [4'49"]
- Live at “m-flo presents BŌNENKAI 2011”(TCY Snippet Edit) [18'53"]
m-flo(えむふろう)
MCのVERBALとDJの☆Takuからなるプロデュースユニット。1998年、インディーズを経てrhythm zoneからメジャーデビュー。当時は紅一点のメインボーカル・LISAを含むトリオ編成だったが、2002年にソロ転向を理由にLISAが脱退。2003年以降は各曲ごとにゲストシンガーを招く“loves”プロジェクトをスタートさせ、Crystal Kay、坂本龍一、BoA、安室奈美恵など計41組のアーティストをフィーチャーして、後のコラボブームの先駆けとなった。2009年にはデビュー10周年を記念し、ベストアルバム「MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-」やトリビュートアルバム「m-flo TRIBUTE ~maison de m-flo~」をリリースしたほか、国立代々木競技場第一体育館にてスペシャルライブを開催。その後しばらくソロ活動が中心となり、2012年3月に約5年ぶりのオリジナルアルバム「SQUARE ONE」をリリースした。
2012年4月16日更新