現在放送中のテレビアニメ「京都寺町三条のホームズ」は、京都の寺町三条商店街にポツリとたたずむ骨董品店「蔵」を舞台にしたライトミステリー。望月麻衣による同タイトルの小説とコミックを原作に、「蔵」でバイトを始めた女子高生・真城葵が、お店のオーナーの孫で周囲から“ホームズ”と呼ばれている青年・家頭清貴と骨董品を巡るさまざまな依頼を受けていく姿が描かれる。

このアニメを音楽で彩るのが和楽器バンドだ。本作のテーマソングとして使用されている「細雪」は優美な調べに乗せて切ない別れを歌うナンバー。“骨董品が古より現代に紡ぐ記憶”という「京都寺町三条のホームズ」のテーマと、古より現代に伝わる和楽器で現代的な音色を奏でるバンドの親和性を感じたアニメの制作サイドからのオファーを和楽器バンドが快諾した形で、今回のコラボレーションが実現している。

アニメの放送も佳境に差しかかるこのタイミングで、音楽ナタリーでは和楽器バンドの鈴華ゆう子（Vo）、町屋（G）と、原作者である望月との対談をセッティングした。アニメの話題から“骨董・ビンテージ”、さらには物語の舞台となった京都の話に至るまで、それぞれの視点で共鳴した3人。「ホームズ」がつないだ両者の対話を楽しんでほしい。

取材・文 / 須藤輝　撮影 / 星野耕作

ビンテージの妙味

──鈴華さん、町屋さん、アニメをご覧になっての感想は？

鈴華　内容的に、今の自分と重なる部分がたくさんあると感じました。私は茨城県出身なんですけど、地元で言うなら笠間焼など、いわゆる美術工芸品を見るのにハマっていて、全国ツアーを回りながら地方の工房にお邪魔したり、プライベートでも美術館に行ったりしているんです。それプラス、私は神社巡りも好きでご朱印も集めているんですけど、アニメの第2話でスポットが当たる下鴨神社も今年参拝したばっかりだったんです。

望月　へええ。タイムリーですね。

鈴華　だから余計に印象的で。それからホームズ（清貴の愛称）さんが不意に京都弁でしゃべり出したときに「おお！」って思いました。

町屋　うちのメンバーの、津軽三味線の蜷川べにが京都出身なんですよ。彼女もたまに京都弁が出るんですけど、まさにあの感じで。

鈴華　べにの場合も怒ったときに京都弁が出るもんね。

──「京都寺町三条のホームズ」は骨董品がテーマになっていますが、町屋さんと鈴華さんは楽器に骨董的な価値を感じることはありますか？

町屋　あります。僕はギタリストなんですけど、もうビンテージギターは大好きですね。

鈴華　それはどの楽器もそうかもしれないですね。私はもともとピアノをやっていたので、やっぱりSteinway & Sonsのビンテージピアノに憧れますし。あと骨董ではないんですけど、昨年のツアーの合間に、広島の福山にあるお琴の工房へ琴奏者の（いぶくろ）聖志と一緒に行ったんですよ。そこで職人さんに、お琴の素材となる桐はなるべく木目の詰まった固い部位が望ましいとか、一番いい材料は1本の木から一面しか取れないといった木へのこだわりをお聞きしたり。あるいは仕上げの過程で楽器の価値も決まってくるけど、音色自体は実際に弾くまではわからないとか、そういうお話もたくさん伺えてすごく勉強になりましたね。

望月　それは興味深いお話です。

鈴華　尺八も内側に漆が塗ってあるものあれば、2本に分かれるものもあったり、材料になる竹の種類もさまざまですし、そういった話題はやっぱりうちのバンド内ではよく出ます。

町屋　三味線や和太鼓にしてもそうだしね。

──では、ビンテージギターのよさはどこにありますか？

町屋　僕はエレクトリックギターのような電子楽器にこそビンテージの妙味があると思っていて。音色に関しては、一般的に古いギターは経年によって木材の水分が飛んでいくから乾いた音が鳴ると言われていますよね。でも、僕が面白いと思うのはボディやネックよりも、弦の振動を電気信号に変換するピックアップというパーツなんです。要は磁石にコイルが巻きつけてあるんですけど、そのコイルの素材が時代によって違ったりするので、それが作られた時代や、コイルに乗った錆の量によっても音が変わってくる。

望月　新品のギターでは再現できない音色になっているわけですね。

町屋　そうなんですよ。あるいはコイルを固定するはんだにしても、やはり時代によって主成分である鉛やスズの含有率が違っていて。だから、たまたま当時はそのはんだしかなかったから仕方なくそれを使っていたけれども、今となってはもう作られていないものだったり。そういうのが面白いですね。