音楽ナタリー PowerPush - Aimer
折り重なる必然と偶然が生み出す4つのコラボ
「誰か、海を。」は現在放送中のアニメ「残響のテロル」のエンディングテーマに採用されている表題曲をはじめとした全5曲+α構成。表題曲は青葉市子が作詞を、菅野よう子が作編曲を手がけ、阿部真央のカバー曲「for ロンリー」には阿部自身がゲストボーカルとして参加。さらにAimerの「眠りの森」をGalileo Galileiが、同じく彼女の「Cold Sun」をAPOGEEの永野亮(Vo, G)がそれぞれリミックスしたトラックも収録する豪華な1枚となっている。
Aimerは今年5月にシングル「StarRingChild」を、翌6月には「Midnight Sun」と「UnChild」という2枚のアルバムを同時にリリース。快作を矢継ぎ早に発表し続けてきた彼女が、アルバムからわずか3カ月後となる今また、さらなる野心作をドロップした理由とは? それぞれの楽曲の聴きどころとともに、その経緯を聞いた。
なお特集後半には今回Aimerとコラボレーションした菅野よう子、阿部真央、尾崎雄貴(Galileo Galilei)、永野亮のコメントを掲載している。
取材・文 / 成松哲
尊敬する人々に巡り会えたから生まれた1枚
──Aimerさんは昨年11月のミニアルバム「After Dark」をご自身のそれまでのキャリアをまとめた1枚と位置付けていました(参照:Aimer「After Dark」インタビュー)。
はい。
──そして今年初のシングル「StarRingChild」リリースと前後して、本当に“Aimer第2章”に突入したというか(参照:Aimer「StarRingChild」インタビュー)。活動のペースといい振り幅といい、明らかに攻めているイメージがあったんだけど、今作「誰か、海を。」ではさらに攻めましたね(笑)。
ふふふふふ(笑)。ありがとうございます。
──青葉市子さん作詞、菅野よう子さん作編曲の表題曲に、阿部真央さんのカバー曲にして阿部さんとのデュエット曲、さらにはGalileo GalileiとAPOGEEの永野亮さんによるリミックス曲2曲も収録されています。
実は「次のシングルではいろいろな方とコラボレーションしよう」という話を進めて制作を始めたわけではなくて。でもいろんな偶然と必然が重なって、本当に大好きな方々とご一緒させていただくことができたという感じなんです。
──確かに「誰か、海を。」はアニメ「残響のテロル」のエンディングテーマで、アニメの劇伴も菅野さんが制作していて。Galileo Galileiの尾崎雄貴さんは菅野さんが書いた「テロル」のオープニング曲を歌っています。
永野さんも「テロル」のサントラに参加なさってますし。
──そして阿部さんとはお互いがファンであることを公言し合っている。しかも「After Dark」収録の「words」を阿部さんに提供してもらったり、対バンライブで競演したりする間柄でもある、と(参照:“お力添え”ツアー、阿部真央&Aimerの仲よし対バンで幕開け)。
今回の「誰か、海を。」は、そうやって尊敬する方々や大好きな方々に巡り会う機会に恵まれたから生まれた1枚なんです。
──ただ「コラボしよう」と思ったのはAimerさん自身ですよね?
そうですね。「words」を真央さんに作っていただいた上に、真央さんと対バンライブでご一緒させていただいたのがすごく楽しかったので、またやってみたかったんです。
不穏と退廃を漂わせる菅野ナンバー
──せっかくリッチな1枚になっていることですし、ここからは1曲ずつお話を伺わせてください。まず「誰か、海を。」なんですけど、菅野さんによると曲が完成してからレコーディングまでのスケジュールはタイトだったとか(参照:テレビアニメ「残響のテロル」音楽特集)。
そうですね。私の手元に音源が届いたのはレコーディングの前日でした(笑)。でもその音源を最初に聴いたときから「歌ってみたい」って思わせてくれる曲で。
──菅野トラックの何が「歌ってみたい」と思わせました?
ともすれば不協和音にもなってしまいそうな、そのギリギリを奏でる、ある意味振り切ったメロディラインにまず惹き付けられて。あと市子さんの歌詞やタイトルも手伝って、すごく深い海の底を彷彿とさせてくれたのもすごく印象的でした。今まで私は夜をモチーフにした曲を多く歌ってきているから、暗さや闇を感じさせるという意味では「誰か、海を。」もある意味同じではあるんですけど、でもやっぱり夜と海は違うというか。
──確かにAimerさんのディスコグラフィに並んでいて違和感のない1曲ではあるんだけど、Aimerさんとagehaspringsの面々が作るAimer楽曲に比べると、どこか温度が低い印象を受けました。
そうですそうです。美しいメロディとアレンジではあるんだけど、明らかに冷たくて不穏な雰囲気が漂っているのがすごく素敵だなと思ったんです。
次のページ » 不穏や退廃を考察することの無粋さ
- ミニアルバム「誰か、海を。 EP」2014年9月3日発売 / DefSTAR Records
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1800円 / DFCL-2080~1
- 通常盤 [CD] 1500円 / DFCL-2079
CD収録曲
- 誰か、海を。
- 白昼夢
- for ロンリー with 阿部真央
- 眠りの森(Kazuki Remix) with Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)
- Cold Sun(Ryo Nagano Remix)with 永野亮(APOGEE)
- 誰か、海を。(TV size)
- 白昼夢 (TV edit)
- 誰か、海を。(instrumental)
期間生産限定盤DVD収録内容
- 「残響のテロル」ノンクレジットエンディングムービー
Aimer(エメ)
女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるアクシデントの末に独特の歌声を獲得。2011年から音楽活動を本格化し、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以来「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」がテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに、2013年のシングル「RE:I AM」がアニメ「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌に採用されるなど、各方面から大きな注目を集める存在に。そして2013年11月にはスタジオ収録の新曲とライブ音源をパッケージしたアルバム「After Dark」を、2014年5月、表題曲が「機動戦士ガンダムUC」シリーズ最終章となる「episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌に採用されたシングル「StarRingChild」を発表。さらに6月には2ndソロアルバム「Midnight Sun」と、作曲家・澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時リリースした。そして同年9月菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表。