音楽ナタリー PowerPush - Aimer
折り重なる必然と偶然が生み出す4つのコラボ
夜を描く彼女の歌う昼の光
──2曲目「白昼夢」の詞は……。
私が書いています。
──とはいえ、いつものAimerさんの曲とは若干違うような気がします。
タイトルに「昼」って入ってますし(笑)。
──あはははは(笑)。確かにさっきもお話していた通り、ずっと夜をモチーフに歌ってきた人なのに。なぜ昼を歌おうと?
デモの音を聴いたとき、あんまり夜のイメージが湧いてこなかったんです。確かにいつもの私の楽曲と似た雰囲気、すごく深いリバーブをかけた響きの面白さを聴かせる曲ではあるんですけど、どこか明るさを感じたので。
──確かにメロディはやや明るめだし、トラックにはピアノとベルのようなキラキラ系の音が多用されている。
まずその曲の印象に引っ張られたのと、あと「誰か、海を。」にインスパイアされた面もあって。さっきお話した通り「誰か、海を。」にはジャケット写真のようなイメージがあったんです。自分は海の底のすごく暗いところにいるんだけど、水面からは光が差している。遠くには光が存在していることを感じさせる曲だったので。そうやって地上に光があるからこそ、海の底の闇が一層引き立つのであれば、深海の暗闇を歌った「誰か、海を。」のあとには、それを浮かび上がらせる光のことを書いてみても面白いのかなと思って。そこから「白昼夢」っていう単語が思い浮かんだんです。
──夜を描いてきた人にとって、昼を歌うのってやっぱり大変でした?
昼だから言葉が浮かばないっていうことはなかったんですけど(笑)、書いてて新鮮ではありました。「誰か、海を。」を意識して作った歌詞なので、昼の光を歌いながらもどこかにある闇や暗さのことを歌おうとは思っていて。相反する何かを歌いたい私らしい歌詞ではあるんだけど、昼の光というこれまでにないものを歌う新しいチャレンジができたなと思ってます。
すごく幸せで、でも終わりを予感させる「for ロンリー」
──そのあとに阿部真央さんのカバー曲にして、阿部さんとのデュエット曲「for ロンリー」が続くトラックリストも面白いですよね。「白昼夢」との対比が効くから。「for ロンリー」はメロディも歌詞もかわいらしいラブソング。それこそ「白昼夢」で昼の光と同時に描こうとした闇のようなものはあまり感じられない曲ですし。
だからこそ「for ロンリー」を歌わせていただいた部分は確かにあります。真央さんの曲は全部好きなのでどの曲を歌うのか選ぶのがすごく難しかったんですけど(笑)、「せっかくだから自分のイメージとは違う曲を真央さんと歌わせてもらいたい」っていう気持ちがありましたから。ただそれもある意味後付けというか、結局、私が特に好きだったからこの曲を選んだっていうのが一番の理由だったりはするんですけど(笑)。
──Aimerさんの考える「for ロンリー」の魅力って?
「お互いが好きだからこそ相手の気持ちが離れてしまうんじゃないかと不安になっている」というある意味すごく幸せな状態のことを描きつつ、でもその幸せにはいずれ終わりが訪れる予感をさせているところですね。それをおっしゃる通り、すごくかわいらしい言葉とメロディで歌っているのがすごく好きなんです。なのでけっこう大胆にアレンジはさせていただいたんですけど、トラックについてもあの曲のさわやかさやポップさは残そうとは思っていて。さわやかでありつつ、どこか物憂げなアレンジにしようって。
──そのアレンジの上に2人の声が乗ったものを聴いてみていかがでした?
ゾクゾクしました(笑)。「真央さんと私の声ってホントに違うんだな」って改めて確認した感じはあるんですけど、でもノイズにはなっていない。すごくキレイに混ざり合っていて。ホントにご一緒できてよかったなと思っています。
ソロボーカリストのレコーディング術
──レコーディングは一緒に?
いえ。私が先に録っておいて、真央さんのレコーディングに立ち会わせていただきました。
──じゃあ、ゾクゾクするボーカルトラックが完成する過程に立ち会えた。
すごく貴重な経験をさせていただきました(笑)。真央さんのレコーディングの仕方に触発されるものもありましたし。
──あっ、そうか。ソロのボーカリストさんだから、ほかのボーカリストのスタジオワークを見るという経験が……。
ないんですよ。
──阿部さんのレコーディングスタイルのどこに触発されました?
「真央さんはレコーディングのスタイルも真央さんなんだな」っていうところに(笑)。
──すみません……。ちょっと抽象的すぎるお言葉かなあ、と(笑)。
ふふふふふ(笑)。なんて言えばいいのかな? フレーズごと、パートごとに何度もテイクを重ねて、ものすごく丁寧に録っていくんだけど、執着したり、立ち止まったりはしない。行き詰まったパートやフレーズがあったら、ひとまず次のパートの録音に移るあたりに、さっぱりしている真央さんらしさを感じたし、そのレコーディングの進め方は同じボーカリストとしてすごく参考になりました。場合にもよるんですけど、私は基本的にさらっと全体を録っていって、あとから気になったところを振り返って録り直すというスタイルなので。じっくり録りつつ、でも割り切るべきところは割り切る。そういうスタイルもあるんだなって気付かされました。
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- ミニアルバム「誰か、海を。 EP」2014年9月3日発売 / DefSTAR Records
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1800円 / DFCL-2080~1
- 通常盤 [CD] 1500円 / DFCL-2079
CD収録曲
- 誰か、海を。
- 白昼夢
- for ロンリー with 阿部真央
- 眠りの森(Kazuki Remix) with Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)
- Cold Sun(Ryo Nagano Remix)with 永野亮(APOGEE)
- 誰か、海を。(TV size)
- 白昼夢 (TV edit)
- 誰か、海を。(instrumental)
期間生産限定盤DVD収録内容
- 「残響のテロル」ノンクレジットエンディングムービー
Aimer(エメ)
女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるアクシデントの末に独特の歌声を獲得。2011年から音楽活動を本格化し、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たす。以来「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」がテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに、2013年のシングル「RE:I AM」がアニメ「機動戦士ガンダムUC episode 6 ~宇宙と地球と~」の主題歌に採用されるなど、各方面から大きな注目を集める存在に。そして2013年11月にはスタジオ収録の新曲とライブ音源をパッケージしたアルバム「After Dark」を、2014年5月、表題曲が「機動戦士ガンダムUC」シリーズ最終章となる「episode 7 ~虹の彼方に~」の主題歌に採用されたシングル「StarRingChild」を発表。さらに6月には2ndソロアルバム「Midnight Sun」と、作曲家・澤野弘之らとのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時リリースした。そして同年9月菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表。