ナタリー PowerPush - Aimer

“夜の始まり”に見た、彼女の軌跡

儚くも温かいハスキーボイスで聴く者の心を震わすシンガーソングライター・Aimerが、アルバム「After Dark」をリリースする。今作は阿部真央が作詞・作曲を手がけた「words」を含む新曲と、デビュー時から力を入れているライブ音源の2段構えで構成された1枚。初めて彼女の音楽に触れる人にも手に取りやすい入門編的な内容となっている。

今特集では、Aimer自身が語るアルバムの制作秘話と、阿部真央の独占メールインタビューを掲載。実力派女性アーティスト同士のコラボレーションを、テキストでも楽しんでほしい。

取材・文 / 川倉由起子

 
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「軌跡」というならライブ音源は外せない

──「After Dark」は、新曲+ライブ音源で構成された企画性の高いアルバムになりましたね。なぜこのような作品に?

2013年4月18日に大阪の某教会で開催されたAimerのワンマンライブの様子。

デビューして2年、1stアルバム「Sleepless Nights」から1年が経って、今だからこそ出せるこれまでの軌跡をまとめたようなアルバムを作りたいと思ったんです。だから今までいろいろな場所で歌って、ライブを大事にしてきた私としては「軌跡」というならやっぱりライブ音源は外せないかなって。新曲を楽しんでほしい気持ちもありつつ、ライブ音源も含めての軌跡を示せるような作品にしたいというイメージでした。

──ファンの方からライブ音源のCD化を望む声もあったんじゃないですか?

そうですね。インターネットライブをずっとやっているんですが(参照:Aimer海外ライブ生中継、ビョークのレーベルメイトと競演)、その音源をCD化してほしいという声は以前からいただいてました。なのでそれにできるだけ応えたかったですし、新しく聴いてくださる方にもこれでライブや私自身に興味を持ってもらえたらという思いもありました。

──デビューからの2年間、ライブを重ねるうちにリスナーとの距離感や関係性が変わってきたと思う部分はありますか?

Twitterのフォロワー数がライブ後に増えたり、対面式のライブではお客さんからお手紙をいただいたり。皆さんそれぞれに悩みを抱えていらっしゃって、それが私の曲を聴くことで救われたという声を聞くとすごくうれしいですね。あるお母様から「今まであまり外出しなかった娘が、Aimerさんの曲を知ってCDを買いたいとかライブに行きたいと積極的に言い始めました」というお手紙をいただいたことは特に印象に残ってます。

歌声じゃない「語りかけ」

──アルバムの1曲目「After Dark -prologue-」は、歌ではなくAimerさんの柔らかい声が印象的なモノローグ。リスナーが心の準備をして、いざアルバムの世界へと入っていける気がします。

2012年7月27日にプラネタリウムで開催されたAimerのインターネットライブ「[midnight planet rhythm]」の様子。

これはまさにアルバム全体の序章という感じ。今言われたように、これからアルバムを聴き始めるための前置きのような存在にしたかったんです。それで、こういう新たな挑戦をしてみました。アルバムタイトルの「After Dark」は“暗くなってから”、みんなが家々に帰り始めて、だんだん夜が始まっていくその情景という意味になっていて。あと私の曲は「自分と誰か」という関係性を書いたものも多いので、1曲目では“After Dark”の始まりに佇んでいる、取り残された2人というイメージも持ってもらえたらと思っています。

──歌声ではなく、普通に話しているものに近い声を聴かせるのはどんな気持ちでした?

完成した音源を初めて聴いたときはちょっと恥ずかしかったですね(苦笑)。でも私の話している声を聴いたことがない方も多いと思うので。この詩の朗読を通じて、私の歌声じゃない「語りかけ」という新たな一面を見てもらえたらうれしいですね。

阿部真央の提供曲は心地よいプレッシャー

──2曲目の「ポラリス」はなぜタイトルを“北極星”に?

旅人が昔、自分の居場所や向かう方向が正しいか確認するために北極星を利用していたというエピソードを知って、それをいつか曲にしたいと考えていて。最初に作曲家の飛内(将大)さんからメロディをいただいたとき、この曲はまさにそのモチーフに合うんじゃないかと思ったんです。

──幻想的でノスタルジックなサウンドに、強い意思を感じる歌詞が乗っていたのが印象的でした。

言ってしまえば現代を生きる私たちにもひとりぼっちの旅人のような面もあって、いつも戻ることのできない道を進んでいるんじゃないかと思うんです。私の曲を聴いてくださる皆さんも普段の生活の中で傷付いたり、不安になったり、孤独を感じたりすることもあるだろうし、だからこそ私が誰かのポラリスになれたらいいのになって。そんなことを思いながら書いていきました。

──Aimerさんも人と人とのつながりを求めている?

そうですね。私がポラリスという誰かを求めることもあると思います。1人で過ごす時間も好きだけど、誰かと話したいとか、誰かにそばにいてほしいってふと思うことはありますし。人間である以上、みんな誰かを求めちゃうんだろうなっていうのは、私自身を見てても、周りの人を見てても思いますね。

──そして3曲目「words」は阿部真央さんの書き下ろし曲。聞くところによると、お2人は以前から文通友達なんだそうですね。

はい。もともとは真央さんがご自身のSNSで私の曲を褒めてくださったことがきっかけになったんです。それを知った私がすぐお礼の手紙を送らせていただいて。

──このご時世にメールではなく手紙っていうのがいいですね。

2011年10月12日開催のAimerのインターネットライブ「[Under my paper moon]」の様子。

私は気持ちを伝えたいとき、基本的に手紙で送ることが多いんです。便せんを選んだりするのも楽しいですし(笑)。で、手紙を送ってみたら真央さんもお手紙で返してくださって、それからやり取りを続けさせていただく中で、楽曲をいただけることになって。デビュー前からいちファンとして真央さんの曲が好きだったので、本当にうれしかったです。

──実際に「words」という曲を聴いた印象は?

いただいた真央さん自身の弾き語り音源を聴いたとき、永遠のものにはなり得なかった、とある「言葉」に対する哀しみや、それでもそれを受け入れて最後は前へ進んでいくところが美しくて、高潔な感じのする曲だなって。ただその音源がかなり完成形に近いクオリティ、しかも素晴らしい真央さん節に仕上がっていたので「これをどう私が歌えばいいのか?」っていう心地よいプレッシャーはありましたね。結果的には真央さんが表現されていた感情を自分の中にも落とし込んで、あとは難しく考えずに素直に歌いました。レコーディングは今までで一番緊張しましたけど(笑)。

Aimer ニューアルバム「After Dark」/ 2013年11月20日発売 / 2200円 / DFCL-2046
「After Dark」ジャケット
収録曲
  1. After Dark –prologue-
  2. ポラリス
  3. words
  4. AM02:00(haruka nakamura La Nuit remix)
  5. After Rain
  6. Amazing Grace(Live in church ver.)
  7. あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~(Live in church ver.)
  8. 今日から思い出(Live in church ver.)
  9. 星屑ビーナス(Live in church ver.)
  10. 寂しくて眠れない夜は(Live in church ver.)
  11. RE:I AM(Live in church ver.)
  12. 六等星の夜(from Live at anywhere)
阿部真央 アルバム「貴方を好きな私」/ 2013年8月28日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤[CD+DVD] 3400円 / PCCA-03888
通常盤[CD] 2900円 / PCCA-03889
阿部真央ライブ情報

全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.5」

  • 2013年11月23日(土・祝)
    広島県 上野学園ホール
  • 2013年11月24日(日)
    岡山県 倉敷市民会館
  • 2013年11月29日(金)
    石川県 金沢市文化ホール
  • 2013年12月6日(金)
    新潟県 新潟県民会館
  • 2013年12月8日(日)
    長野県 松本キッセイ文化ホール中ホール(SOLD OUT)
  • 2013年12月12日(木)
    北海道 札幌市教育文化会館大ホール
  • 2013年12月16日(月)
    東京都 東京国際フォーラムホールA(SOLD OUT)

全席指定チケット料金:5250円(税込)
詳細は阿部真央オフィシャルサイトまで。

Aimer(えめ)
Aimer

女性シンガーソングライター。幼少期より両親の影響で音楽に親しみ、ピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始める。15歳のときに声が一切出なくなるアクシデントに見舞われるが、回復とともに独特の甘い歌声を得る。2011年から本格的に音楽活動を開始。幅広いジャンルのクリエイターとコラボレーションし、楽曲提供やゲストボーカリストとしての活動を通じてその才能が知られるようになる。同年5月にはヒット曲をジャズアレンジでカバーしたコンセプトアルバム「Your favorite things」にボーカリストとして参加し、収録曲であるLADY GAGA「Poker Face」のカバーがiTunes Storeの国内ジャズチャートで初登場1位を記録した。9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビュー。2012年8月発売のシングル曲「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」はテレビアニメ「夏雪ランデブー」のエンディングテーマに採用され、大きな注目を集めた。その後10月に初のフルアルバム「Sleepless Nights」、12月にカバーアルバム「Bitter & Sweet」と精力的なリリースを展開。2013年8月には「眠りの森」を配信限定シングルとして発表。11月には新曲とライブ音源を収録したアルバム「After Dark」をリリースする。

阿部真央(あべまお)
阿部真央

1990年1月24日生まれ。大分県出身のシンガーソングライター。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代を中心に支持を集める。「ROCK IN'JAPAN FES.2009」「MEET THE WORLD BEAT 2009」などデビュー年より大型フェスに出演し、翌2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーやアヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催。2013年には「最後の私」「貴方が好きな私 / boyfriend」という2枚のシングルと、5thアルバム「貴方を好きな私」をリリースした。