登坂広臣(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)と中条あやみの共演作「雪の華」が、2月1日に公開された。中島美嘉の冬の名曲を「orange-オレンジ-」の橋本光二郎が映画化した本作では、ガラス工芸家志望のぶっきらぼうな青年・綿引悠輔と、余命宣告を受けた女性・平井美雪の期間限定の恋が描かれる。
映画ナタリーでは、本作の公開を記念した特集を2回にわたり展開。第2弾として、原曲を歌う中島と、監督を務めた橋本の対談をお届けする。中島の「雪の華」への思い入れや、映画の感想を聞いたほか、橋本が“いまだに答えが見いだせていない”という歌詞の解釈について2人で意見を交換してもらった。
取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 佐藤類
最近はこの曲が、いい意味で自分の手を離れた(中島)
──先ほど行われたジャパンプレミアでは中島美嘉さんが「雪の華」を生歌唱されました。監督はいざ中島さんの歌声を聴いて、これまで以上に胸にくるものがあったのではないでしょうか(※この取材はジャパンプレミア実施後に行われた。参照:「雪の華」登坂広臣と中条あやみが「モイモイ!」連発のフィンランドロケ振り返る)。
橋本光二郎 そうですね。僕はずっと、映画でも使われているバージョンの「雪の華」を聴いていたんです。
中島美嘉 一番最初にリリースしたバージョンですね。
橋本 はい。それをずっと聴き続けていたので、15年という時間を経て、いろいろなものが変化した歌を聴けたのがすごくうれしいですし、本当に感動しました。15年って、長い時間だなあと思っていて。それだけ多くの人に愛され続けて、歌われ続けているのが、どれだけすごいことかと、しみじみします。そう言いつつ、15年前は自分が何歳だったかと考えると、もっとずっと前からこの曲を聴いていたようなイメージもあるのが不思議ですね。
──中島さんは、15年前にこの曲をリリースされてから今まで、歌う際の気持ちの変化などはありましたか?
中島 ありがたいことに、15年前に「雪の華」をリリースさせてもらってから、たぶんこの曲を歌わなかった年がないんです。昔は周りを見れていなかったというか、ただ目の前の曲のことだけを考えて歌っていたんですが、最近はふと、いい意味で少し自分の手を離れた感じがするんです。いろいろな方が「雪の華」を歌ってくださっていて、私が歌うのはあくまで“私の「雪の華」”であって、みんなが好きなように歌って愛してくださっている印象で。だから今回、こうして「雪の華」という映画を作っていただけると聞いて、「私の『雪の華』でいいんですか?」という気持ちでした! いろいろな方が歌ってくれているのに、私が歌っていいのかな? 舞台挨拶にも登壇していいのかな?とか、変なことを考えてしまいました(笑)。
橋本 いやいや、ぜひ!!(笑)
中島 でも、それくらい本当に不思議な感覚でしたね。
今まで抱いていた曲のイメージにとらわれず(橋本)
──では中島さんは、この楽曲が映画化されると知ったときは、まず驚きや戸惑いの気持ちがあったのですか。
中島 楽曲の映像化、という話はもちろん聞いたことがありますが、まさか自分の曲が映画になるとは思っていなかったので、びっくりやらうれしいやらで、最初は「ホントにやるのかな?」と疑っていました(笑)。でも「雪の華」というタイトルと歌詞から、こんなにも美しく壮大な世界を広げていただいて、歌の世界を伝えてもらえたのがうれしくて……。ありがとうございました。
橋本 いえいえ……むしろ僕は「映画、大丈夫でしたか?」とずっとお伺いしたかったくらいです。
──監督は、本作のメガホンを取ることが決まったときの心境はいかがでしたか。
橋本 楽曲を映画化するのは初めてでしたし、何よりこれだけ多くの人に愛されている曲なので、責任重大と言いますか……。まずは「すごい企画を受けてしまったな」という気持ちが大きかったですね。僕自身、中島さんが歌われている「雪の華」を聴いて、冬の切ない物語を歌った楽曲だと捉えていたんですが、改めて歌詞を何度も読み返すと、ただ切ないだけではなく、人間の一途な思いを描いているものなんだなと思いました。でも脚本を受け取ったときは、「100万円で恋人になってください」というキャッチコピーにもあるように、思ったよりもコミカルな要素が多かったので少し意外でしたね。
──余命宣告を受けた美雪が、以前自分を救ってくれた男性・悠輔に「100万円で恋人になってください!」と申し出るシーンは、生っぽく映らないようあえてコミカルに演出されたそうですね。
橋本 はい。こういう一途な思いがあって、その感情が高まっていくからこそ、最後の切なさにつながるのではないかと思いました。だからこれまで自分が抱いていたイメージにとらわれず、恋の喜びや、人と手をつなぐときの温かさといったものを、1つひとつ大事に撮れたらと考えるようにしたんです。なかなか最近、ここまで恋愛に集中した映画ってない気がしていて。恋愛映画でも、何かしら事件が起きたりして、物語が複雑化していることが多いじゃないですか。……そう思いません?
中島 私も、まさにそう思っていたんです!(笑)
橋本 そうですよね。今回は親子の愛を描く部分もありますが、基本的に美雪と悠輔の2人がずっとスクリーンに映っている。2人が徐々に距離を縮めていって、愛が育まれていく様子をなるべく丁寧に描ければいいなと。距離感に関しては、歌の中にある「風が冷たくなって 冬の匂いがした そろそろこの街に キミと近付ける季節がくる」という部分がすごく繊細な感覚だなと感じて、印象的なんです。
中島 (両思いの)相手がいるんだか、いないんだか、どちらにも取れますよね。どっちにも振れる曲だからこそ、映画化は難しかったと思う……すみません。
橋本 いえいえ! そういう、はっきりと見えない距離感を、映画の中でだんだん近付けていきたかったんです。それでぬくもりが生まれていく様子が描けていればいいなと。
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いまだに答えが見いだせていない歌詞がある(橋本)
- 「雪の華」
- 2019年2月1日(金)全国公開
- ストーリー
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幼い頃から病気がちで、ついに余命1年を宣告された美雪。彼女の夢は2つ──1つは両親が出会った"約束の地"フィンランドでオーロラを見ること。そしてもう1つは、最初で最後の恋をすること。ある日ひったくりにあった美雪は、ガラス工芸家をめざす悠輔に助けられる。悠輔が男手ひとつで妹弟を育てていること、そして働く店が危機になっていると知った美雪は、「私が出します、100万円。その代わり1カ月、私の恋人になってください」と持ちかける。何も知らないまま"期間限定"の恋に応じる悠輔だったが……。かけがえのない出会いが、美雪に一生分の勇気をあたえて、悠輔の人生を鮮やかに彩っていく。舞台は東京とフィンランド。切ない想いに涙が溢れる、初雪の日に出会った2人の、1年のラブストーリー。
- スタッフ / キャスト
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監督:橋本光二郎
主題歌:中島美嘉「雪の華」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
脚本:岡田惠和
音楽:葉加瀬太郎
出演:登坂広臣、中条あやみ、高岡早紀、浜野謙太、箭内夢菜 / 田辺誠一ほか
©2019 映画「雪の華」製作委員会
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- 「雪の華」公開記念!au STARで楽曲ダウンロードプレゼント&うたパスで中島美嘉プレイリスト配信
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映画『雪の華』auスペシャルサイト
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※スマホ、タブレットよりアクセスしてください。
- 中島美嘉(ナカシマミカ)
- 1983年2月19日生まれ、鹿児島県出身。2001年にデビューして以降、「雪の華」「GLAMOROUS SKY」「桜色舞うころ」「ORION」などヒット曲を連発。紅白歌合戦には9度出場した。女優としても活躍し、2005年の主演作「NANA」で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞や新人俳優賞を受賞したほか、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演作「バイオハザードIV アフターライフ」「バイオハザードV リトリビューション」にも出演。2019年1月30日にはベストアルバム「雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE」をリリースする。
- 橋本光二郎(ハシモトコウジロウ)
- 1973年7月28日生まれ、東京都出身。日本映画学校卒業後、相米慎二や滝田洋二郎に師事し、助監督として経験を積む。2010年にドラマ「BUNGO-日本文学シネマ- 富美子の足」で監督デビューし、2011年には河合勇人とともに演出したドラマ「鈴木先生」で日本民間放送連盟ドラマ部門優秀賞などに輝く。その後、2015年には初の長編映画「orange-オレンジ-」を手がけ、2018年公開の「羊と鋼の森」でもメガホンを取った。