「雪の華」中島美嘉×橋本光二郎インタビュー|15年愛され続けた冬の名曲を映画化──今、改めて考える「雪の華」の歌詞

いまだに答えが見いだせていない歌詞がある(橋本)

中島美嘉

──では中島さんが、映画をご覧になった感想を教えてください。ジャパンプレミアではネタバレに配慮されつつ「最後のセリフが印象的だった」とおっしゃっていましたが……。

中島 中条あやみさん演じる美雪の、かすかに希望を感じさせる最後のセリフが印象的で。曲自体が「これからもキミとずっと…」というハッピーエンドともバッドエンドとも取れる終わり方なので、映画はどうなるのかなと思っていたんです。そうしたら、もちろんいい意味で「うわあ、ズルい感じで終わった!」みたいな。「そうそう、こうしてほしかった!」と感じて、うれしかったです。

橋本 よかったあ、あのセリフ使って……。

中島 (笑)。カットする予定だったんですか?

「雪の華」より、登坂広臣演じる綿引悠輔(左)と、中条あやみ演じる平井美雪(右)。

橋本 実は編集段階で、何回もあのセリフを入れたり、取ったりすることを繰り返していたんです。最終的には悲しみだけでは終わらない、温かい感じにしたかったので、そう言っていただけてよかったです。そうそう、実は僕「雪の華」の歌詞でいまだに答えが見いだせていないところがあるんですよ。「もし、キミを失ったとしたなら 星になってキミを照らすだろう」という部分は、今回の物語の流れでどう捉えたらいいのか、今でも正直悩ましいというか。

中島 私もです! 歌っていても、あの部分ってパッと世界観が離れるんですよ。「笑顔も 涙に濡れてる夜も いつもいつでもそばにいるよ」と続いて、一緒にいるのかいないのか、悩む部分はありますね。自分も相手のあとを追ってしまうの?と。

橋本 そうなんです。自分もいなくなっちゃうっていうところが難しくて。失うって、もしかしたら「喪う」の漢字の意味かもしれないし、悩ましい歌詞だなと。そしてそのあとは、またもとの世界観に戻るじゃないですか。だからあの4行だけちょっとドキッとする。ひょっとしたらそれがあったからこそ、最後のセリフを入れるべきかどうか葛藤したのかもしれません。

中島 私は、あそこは別の物語として歌っている感覚がありますね。あの部分は特に、ドーンと感情が入るんです。

「雪の華」

──中島さんは、そんなエンディングでご自身の歌が流れた瞬間はどのような思いでしたか?

中島 いいんですか!?という思いでした(笑)。ここで「雪の華」がかかったらすごいよなあ……あっ、かかるんだ! うれしいー!みたいな。

橋本 (笑)

中島 普段ほかの方が歌っているのを聴いてもいい曲だなと思うので、今回も他人事のように楽しませていただきました。

橋本 脚本に書かれているわけではないですが、ここに来るのがもう決まっているようなものだという確信がありましたね。

「雪の華」は“みんなが経験したことのある曲”

──中島さんは先ほど「この曲が自分の手を離れた」とおっしゃっていましたが、映画を観ることでこの曲を客観視できた部分があれば教えてください。

中島 こうやって映像にしていただくと、この曲の“恋愛”としての面をしっかり見てもらえると思いました。私が歌うとどうしても“切ない”“悲しい”という雰囲気に寄っていくことが多いのですが、この映画自体がとても温かいので、歌詞の世界がよりよくわかってもらえる気がします。

橋本光二郎

──なるほど。ではお二人に伺います。15年前にリリースされたこの曲がこれだけ多くの方々に愛されている理由は、どんなところにあると思いますか?

橋本 難しいですが、先ほど中島さんがおっしゃっていたように、この曲の解釈の仕方は1つだけではないと思っていて。聴く人や歌う人が自分の中で咀嚼することによって、いろいろな物語になる。それができるくらい、自分の人生を反映しやすいところがあるから多くの人に愛されているんじゃないかな。きっと歌詞のどこか1行だけでもスッと心に入ってくるだろうし、もちろん全部入ってくる人もいるだろうし。いつも、この歌詞はいい意味で本当にシンプルだなと感じます。その言葉の強さと、嘘のない書かれ方が、人々に届くんだと思います。

中島 正直、魅力がどこなのかは説明しづらい曲だと思っていて。「キミが」「キミを」と歌っているけど、それが恋人に対してなのかはわからない。両親や、まったくほかの人に歌っている曲としても受け取れるんです。ある女性が、ご両親に当てはめて聴いたことで元気をもらえたと言ってくれたことがあって「あ、そうやって受け取ってもらえることもあるんだな」と感じました。いろいろな思い出に当てはめられるから“みんなが経験したことのある曲”なんだと思います。

「雪の華」より、登坂広臣演じる綿引悠輔(左)と、中条あやみ演じる平井美雪(右)。

──海外の方でも、中島さんの「雪の華」のファンは多いですよね。

中島 ありがたいことに最近特に、そう言っていただけることが多いですね。それは単純に音やメロディの美しさが、言葉のわからない国の人々にも響いたのかなと。そこに関しては私がどうこうというより、曲が本当に素晴らしいので、この曲をいただけたことは本当にラッキーだなと思います。

橋本 今回ロケ地であるフィンランドで上映させていただいたとき、何人かに「最後のエンディングでかかっている歌が『雪の華』なんですね? すごくいい歌なのに、なんで歌詞を訳してくれないんだ! 内容を知ったうえで聴きたかった!」と言われまして(笑)。

中島 どういう歌詞だかわからない状態だったんですね。

橋本 英語字幕を付けて上映したんですが、歌詞の訳は入っていなかったんです。でも歌詞がわからなくてもいい曲だと伝わるのは、中島さんの歌声の力が大きいと思う。まだフィンランドという1つの国でしか上映していませんが、そういう反応があったのはうれしかったですね(参照:「雪の華」ロケ地・ヘルシンキで上映、橋本光二郎がフィンランドの誘致施策に感謝)。

左から中島美嘉、橋本光二郎。

──では最後に、映画を楽しみにしている方へ一言お願いします。

中島 監督が先ほどおっしゃっていましたが、最近は恋愛映画でも事件が起きたり、複雑なものが多いと思っていて。私ももちろんそういう映画が嫌いではないのですが、純粋に「そうだよね!」って共感できるラブストーリーを、あまりお見かけしないような気がするんです。そんな中でこの映画は、いろいろな部分で共感できて、最後にはほっこりとした気持ちで帰れる作品だと思います。

橋本 “泣ける映画”として観てほしいというより、あまり肩ひじ張らずに優しい気持ちで観て、心に温かいものを持って劇場をあとにしてほしいと思ってこの映画を作りました。2人の恋がぎこちないところから始まるのがすごくかわいらしいですし、なんとも言えないその距離感が縮まっていく過程を、温かい目で一緒にヤキモキしながら観ていただけたらと思います。

三浦しをんが語る「雪の華」インタビューはこちら
「雪の華」
2019年2月1日(金)全国公開
ストーリー

幼い頃から病気がちで、ついに余命1年を宣告された美雪。彼女の夢は2つ──1つは両親が出会った"約束の地"フィンランドでオーロラを見ること。そしてもう1つは、最初で最後の恋をすること。ある日ひったくりにあった美雪は、ガラス工芸家をめざす悠輔に助けられる。悠輔が男手ひとつで妹弟を育てていること、そして働く店が危機になっていると知った美雪は、「私が出します、100万円。その代わり1カ月、私の恋人になってください」と持ちかける。何も知らないまま"期間限定"の恋に応じる悠輔だったが……。かけがえのない出会いが、美雪に一生分の勇気をあたえて、悠輔の人生を鮮やかに彩っていく。舞台は東京とフィンランド。切ない想いに涙が溢れる、初雪の日に出会った2人の、1年のラブストーリー。

スタッフ / キャスト

監督:橋本光二郎

主題歌:中島美嘉「雪の華」(ソニー・ミュージックレーベルズ)

脚本:岡田惠和

音楽:葉加瀬太郎

出演:登坂広臣、中条あやみ、高岡早紀、浜野謙太、箭内夢菜 / 田辺誠一ほか

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中島美嘉(ナカシマミカ)
1983年2月19日生まれ、鹿児島県出身。2001年にデビューして以降、「雪の華」「GLAMOROUS SKY」「桜色舞うころ」「ORION」などヒット曲を連発。紅白歌合戦には9度出場した。女優としても活躍し、2005年の主演作「NANA」で日本アカデミー賞の優秀主演女優賞や新人俳優賞を受賞したほか、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演作「バイオハザードIV アフターライフ」「バイオハザードV リトリビューション」にも出演。2019年1月30日にはベストアルバム「雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE」をリリースする。
橋本光二郎(ハシモトコウジロウ)
1973年7月28日生まれ、東京都出身。日本映画学校卒業後、相米慎二や滝田洋二郎に師事し、助監督として経験を積む。2010年にドラマ「BUNGO-日本文学シネマ- 富美子の足」で監督デビューし、2011年には河合勇人とともに演出したドラマ「鈴木先生」で日本民間放送連盟ドラマ部門優秀賞などに輝く。その後、2015年には初の長編映画「orange-オレンジ-」を手がけ、2018年公開の「羊と鋼の森」でもメガホンを取った。