今回、監督を務めるのは髙橋滋春とウシロシンジの2人。アニメーションの監督を2人で務めるのは珍しいとのことで、現場を髙橋、総合的にウシロが担当したそうだ。今回、総監督のようなポジションで携わったというウシロにアニメ制作の流れを大まかに語ってもらった。「シナリオを話し合ったあとに、髙橋監督が絵コンテを自身で作り、その絵コンテをもとに、パートごとに演出がいるので、彼らに細かく説明して制作現場を仕切ってもらいます。さらにその演出がアニメーターに説明していき、作業に移ります。そして、上がってきたものに対して髙橋監督がチェックするという流れです」。

現場を仕切った髙橋は仕事の面白みをこう語る。「キャラクターの表情や背景の1つひとつをそのキャラクターの感情を表すためにチョイスする作業が面白いところです」。

実際に、オー・エル・エムでその作業フローを見せてもらった。まずはアニメーターといわれる原画を作る人たちの仕事について。監督から上がってきた絵コンテを見て、キャラクターそのものの絵や、そのキャラクターに演技をさせるために、背景をどういうふうに動かすか、何秒でそれぞれの動きをさせるのかを決めるのが原画マンの仕事だという。続いて、できあがったものに対して演出家たちが、表情や演技の指示を出す。30分ものだと演出家は1人だが、今回のように長編映画だと何人か担当が分かれる。その後に作画監督が指示に従って、キャラクターを修正していく。作画監督はそれぞれが上げてきたキャラクターの絵を統一する仕事もしている。レイアウトと呼ばれる設計図のようなものをもとに原画マンが原画を作り直す。見せてもらったのは51枚で3秒のシーンだった。今回の映画では8万枚を超える動画を使用したそうだ。続いて、ムービーにしていく作業に移る。まず、アニメーターが描いた動画をスキャンし、色指定表を見ながら色を塗っていく。さらに特殊効果をのせてムービーを完成させる。すべては絵コンテをもとに作っていくそうだ。

今回の映画は5話のオムニバス形式。その理由と見どころについてウシロは「シナリオ原案の日野（晃博）さんが『テレビアニメがオムニバスなので、その延長線上でやってみよう』と提案されたのがベースです。子供の視点を一番大事にしている方なので、みんなそれを納得して作っていきました。今回人間と妖怪の絆が絶たれるかもしれないというテーマがあるのですが、妖怪たちがその絆を保とうとしている人間に対しての一面が見れるところがオススメです」と語る。一方、髙橋は「オムニバス形式なので起承転結の展開で見せていくことを意識しました。カット割りせずに1カットで見せるなどの工夫をしながらメッセージを伝えやすくしました。僕はエピソード1で、今までおちゃらけていたケータが初めて人と向き合おうとするところが好きなシーンです」と思いを語った。