哀川翔が語る「プーと大人になった僕」|「何もしない」をどう過ごす?哀川流・人生を楽しむ極意

「俺は“逆ピラミッド”だぜ」ってなるのが理想

──発想の転換や逆転っていうのも、忙しさゆえの視野狭窄から解放されたからこそ起こることなんでしょうね。

「プーと大人になった僕」

俺はね、20代の頃からピラミッドを引っくり返す発想が自分にあって。例えば、だんだん歳を取ってくると力とか生命線が縮こまっていって、ピラミッドの頂点にいる年寄りは先細りの果てってことになる。でもこの発想だと、歳取るのが全然つまんないじゃん。だからそうじゃなく、年齢ごとにいろんな知恵や力を身に付けていけば、一番上に来たときに一番広い層になるんだって。そういう“逆ピラミッド論理”を俺は昔からイメージしていたんだよ。

──まさに今、実践されてますもんね。

とりあえず体も前より元気だし、知恵も仲間も増えてって考えると「俺は“逆ピラミッド”だぜ」って。みんなそうなったら理想だよね。生まれたときが一番下で、ここからどんどん成長していくんだって。今はもう日本社会が成長をあきらめちゃってるでしょ。「俺たちも下から広げていくんだ」って希望を育てないと。

「プーと大人になった僕」

──クリストファー・ロビンは大人になってから“逆ピラミッド”の入口に立ったのでしょうか。また、彼の奥さんが楽しく生きることの大切さに理解のある人でよかったですよね。

「奥さん、わかりすぎ」みたいなね(笑)。そこがまたバランスなんだろうな。この映画の奥さんは旦那のポイントが全部わかってる。じゃなきゃ「お父さんはいつか帰ってくるから」っていう言葉なんか出ないでしょ。でも娘のために一度彼から距離を取る作戦に出る。すごいよね。いいチームだよね。

ぼーっと家で寝てるだけじゃ駄目

──そういう意味では幸福な男ですよね。哀川さんは奥様との連携プレーに関してはいかがですか?

いやあ俺も幸福な男なんじゃない? 好きにやらせてもらってるんだから。

──奥様に怒られたりしないんですか?

んー、ときどき怒られる(笑)。怒られた理由? 細かいことは忘れたよ。

──(笑)。この映画、優れたファミリームービーであると同時に、実は大人の映画だなと思ったんですけども。

けっこう大人も楽しめるよね。特に仕事が忙しくて「時間がない」とか言ってる人ほど観たほうがいいと思う。要するにクリストファー・ロビンは「あきらめた瞬間」に本来の姿に戻ったよね。仕事なんてどうでもいいんだ!って思った瞬間に脳が活性化した。実はそのほうが仕事もうまくいく。この教訓はデカいよ。だから仕事人間ほど遊びもときどき取り入れないと。もちろん「何もしない」って言っても、ぼーっと家で寝てるだけじゃ駄目よ(笑)。自分が「次」に進むための仕込みをするのが「何もしない」時間なんだよ。

プー(左)と哀川翔(右)。
「プーと大人になった僕」
2018年9月14日(金)全国公開
「プーと大人になった僕」
ストーリー

100エーカーの森に住む親友プーや仲間たちと遊んでいた想像力豊かな少年クリストファー・ロビンも、今ではすっかり大人になり仕事中心の忙しい毎日を送っていた。ある日クリストファー・ロビンは、妻子と実家で過ごす約束だった週末に仕事を任されてしまう。職場と家族の問題に頭を悩ませていると、彼の前にかつて親友だったプーが突然現れて……。

スタッフ

監督:マーク・フォスター

キャラクター原案:A・A・ミルン、E・H・シェパード

キャスト

ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ジム・カミングス(※声の出演)ほか

日本語吹替

堺雅人、かぬか光明、玄田哲章、石塚勇、小形満ほか

哀川翔(アイカワショウ)
1961年5月24日生まれ、鹿児島県出身。1984年、一世風靡セピアのメンバーとしてレコードデビュー。1988年に和泉聖治監督作「この胸のときめきを」で映画初出演。テレビドラマ「とんぼ」や映画「オルゴール」への出演で注目を浴びる。1990年、高橋伴明によるVシネマ「ネオ チンピラ 鉄砲玉ぴゅ~」に主演して以降、数々のヒットシリーズを生み出していく。主な主演作に「獅子王たちの夏」や「勝手にしやがれ!!」シリーズ、「復讐」シリーズ、「借王(シャッキング)」シリーズなどがある。2005年に「ゼブラーマン」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2014年にはVシネマ25周記念作品「25 NIJYU-GO」で主演を務めた。また2015年には芸能生活30周年記念で品川ヒロシ監督作「Zアイランド」に主演したほか、ラサール石井演出の初ミュージカル「HEADS UP!」に出演した。

2018年9月21日更新