哀川翔が語る「プーと大人になった僕」|「何もしない」をどう過ごす?哀川流・人生を楽しむ極意

自分のアタマで考えて人生を切り開いていく

──激務だったVシネマ時代の経験から、哀川さんはクリストファー・ロビンの気持ちも理解できる?

そうね、特にカネがなくなったときの恐怖感ってあるじゃん。俺も昔は温泉に3日いると「やべえな、そろそろ仕事入れねえと」って焦ってた(笑)。でも今は仕事も楽しい。どっか遊びの延長になってるからね。ずっと趣味でやってきたことがいろいろ仕事に転換していった。

──なるほど。

「プーと大人になった僕」

キャンプの番組がやたら多くなったり、カブトムシや釣りの仕事が来たり。でもそれは幼い頃から自分で身に付けてきたことだから、やったことのないものを急にやれって言われても無理なのよ。釣りの経験ない人に釣り番組の依頼が来ても、まず船に酔っちゃうしさ(笑)。だから「何もしない」時間を子供のうちに与えて、自分なりの遊びをやらせとけってことも、この映画は言ってんじゃないのかな。自分のアタマで考えて人生を切り開いていくってのはものすごく大事なことだよ。

──子供の頃に夢中になった遊びが、実は「一生使える技術」に育つんですね。

そういうこと。だからこそ子供の自発性を大切にしないと。俺がこの映画で好きなシーンはさ、娘がクリストファー・ロビンに「お父さんが選んだ本じゃなく、私が選んだ本を読んで」って言うところ。あれは名言だと思うよ! 子供が本当に心を開く瞬間ってああいうことだと思うから。

哀川翔(左)とプー(右)。「プーと大人になった僕」ビジュアル

まず子供を俺の遊びにハメる

──哀川さんもお子さんが選んだものを優先し、自分がサポートする立場を取られる?

哀川翔

うーん、遊びに関してはね、まず子供を俺の遊びにハメる(笑)。逆に俺の遊びから離れたときに、子供たちは独創的な自分の遊びに走るんだよ。

──え? それはどういうことですか?

子供たちが夏休みのとき、海ばっかり連れて行ってたんだよね。下の2人が小学校の頃かな、30日連続で海に連れて行ったこともある。そしたら31日目の朝に「さあ、海行こうか!」って言ったらさ、5人の子供たちが全員そろって「たまには家でくつろごうよ!」って。

──(爆笑)。この映画の逆ですね。子供のほうが「今日はお父さんと遊びたくない、おうちにいたいの!」って。

そのボイコットの瞬間に俺のほうの目覚めがあったね(笑)。だからそれも成長過程だよ。子供が親離れするって大事なことじゃん。

映画の後半は「有給休暇の発明」の瞬間

──哀川さんとプーの共通点を考えると、完全にアウトドア派ってこともありますね。

プーとその仲間たちは一応ぬいぐるみだけど、ファンタジーの世界ではマジで動物だからね。本来人間も動物だから、アウトドアで陽が昇ったら起きて、沈んだら寝るってのが最高のパターンなんだよ。子供は放っておいたらそうだから。大人が子供のリズムを狂わせてるから。

──はい。

でも今の俺なんか家族で一番早く寝るもんね(笑)。0時になったらバシッと電気落として「早く寝ろ」、陽が上がったら「起きろ」みたいな。それが一番体調がいいよね。体調がいいと気分もいい。でもプーの仲間だったクリストファー・ロビンですら、やっぱり仕事が忙しくなって変な使命感持っちゃうと、その当たり前の原理を忘れちゃうんだよ。

「プーと大人になった僕」

──ブラック企業の社畜みたいになってましたもんね。

よくないよね……。だから俺、その反省から有給休暇が生まれたと思ったもん。この映画の後半の展開、これは「有給の発明」の瞬間なんだって。そういうふうに思ったんだよ。

──僕もそう思いました。

思ったよね。そのときにクリストファー・ロビンがピラミッドの図を持ち出して、会社の会議で見事なプレゼンをするじゃない。上に少数の富裕層がいて、下にたくさんの一般労働者がいる。だけどそれをくるっと逆にすると……ひらめいた!って。あれもすげえ面白かったな。

「プーと大人になった僕」
2018年9月14日(金)全国公開
「プーと大人になった僕」
ストーリー

100エーカーの森に住む親友プーや仲間たちと遊んでいた想像力豊かな少年クリストファー・ロビンも、今ではすっかり大人になり仕事中心の忙しい毎日を送っていた。ある日クリストファー・ロビンは、妻子と実家で過ごす約束だった週末に仕事を任されてしまう。職場と家族の問題に頭を悩ませていると、彼の前にかつて親友だったプーが突然現れて……。

スタッフ

監督:マーク・フォスター

キャラクター原案:A・A・ミルン、E・H・シェパード

キャスト

ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ジム・カミングス(※声の出演)ほか

日本語吹替

堺雅人、かぬか光明、玄田哲章、石塚勇、小形満ほか

哀川翔(アイカワショウ)
1961年5月24日生まれ、鹿児島県出身。1984年、一世風靡セピアのメンバーとしてレコードデビュー。1988年に和泉聖治監督作「この胸のときめきを」で映画初出演。テレビドラマ「とんぼ」や映画「オルゴール」への出演で注目を浴びる。1990年、高橋伴明によるVシネマ「ネオ チンピラ 鉄砲玉ぴゅ~」に主演して以降、数々のヒットシリーズを生み出していく。主な主演作に「獅子王たちの夏」や「勝手にしやがれ!!」シリーズ、「復讐」シリーズ、「借王(シャッキング)」シリーズなどがある。2005年に「ゼブラーマン」で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2014年にはVシネマ25周記念作品「25 NIJYU-GO」で主演を務めた。また2015年には芸能生活30周年記念で品川ヒロシ監督作「Zアイランド」に主演したほか、ラサール石井演出の初ミュージカル「HEADS UP!」に出演した。

2018年9月21日更新