映画ナタリー Power Push - ナタリー×Hulu 語りたくなる1本がある。
紀里谷和明編
テレビやPC、スマホなどさまざまなデバイスで国内外のドラマや映画が楽しめる月額制の動画配信サービス「Hulu」。ユーザー数100万人突破を記念し、今年4月より「フールー、オン」と題したキャンペーンを展開している。
ナタリーでは、音楽、コミック、お笑い、映画の各ジャンルごとに「フールー、オン」の特設サイトと連動したインタビュー企画「語りたくなる1本がある。」を実施。第1弾となる今回は、ハリウッド進出作「ラスト・ナイツ」の公開を控えた紀里谷和明が映画ナタリーに登場する。紀里谷がHuluで配信中の作品から選んだ「語りたくなる1本」とは?
取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 小坂茂雄
「イレイザーヘッド」でアートに対する姿勢が形成された
──今回の特集のテーマが「語りたくなる1本がある。」ということで。映画についてじっくりと語りたくなるようなシチュエーションがありましたら教えてください。
僕ね、映画っていつも1人で観に行くんですよ。デートとかでは絶対行かない。
──どうしてですか?
だって時間がもったいない。2人で観ていると2時間会話できないしね。ほかのことをやっていたほうがよくない?って思うんですよね(笑)。
──女の子と行くと映画に集中できないからというわけではなく(笑)。
そう。女の子と映画の話なんかほとんどしないし、したって僕は聞いているだけだしなあ。「ああそう、そっかあ、いいよねえ」って。
──優しい(笑)。そこでご自身の意見を口にすることはないんですか?
ないですね……。これまでの人生で同じ映画とかほとんど観てないし。で、誰と語るんだろう。例えば岩井俊二さんとか蜷川実花さんとか、ほかの監督と話していても映画の話にならないもんね。どうしても自分の作品の話とか、苦労話になっちゃう。客観的な目線になれないから、作り方の話になっちゃうし……。業界のやつらと飲みながら映画の話とかしていても、喧嘩になっちゃったりするしね。「それは違うと思うよ!」みたいな(笑)。
──今回は紀里谷監督の語りたくなる作品を選んでいただきましたが、一番お気に入りの映画は?
僕が一番影響を受けたのは、デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」かな。高校がボストンのアートスクールだったんですけれども、そこが極めてアーティスティックな環境で。その当時のうちの高校ではみんな観てる、って感じ。まだデヴィッド・リンチって人が誰なのかっていうのもよくわかっていないような状況の中で、こんなのあるぜみたいな感じで、ワサワサワサワサって話題になっていって。ある友達は「観たあと、シャワーを浴びたくなるような映画なんだよね」って(笑)。
──あはは(笑)。すごい表現ですね。
で、僕も観まして。まあその当時って、こういう自由な映画が本当多かったんですよね。こんなの今作れないと思うんですよ。すごい衝撃を受けて、高校生なりに自分の視点であったりとか、アートに対する姿勢が形成された作品群の中の1つ。今の僕のMVとかも、この辺りにすごく影響を受けていますね。
──なるほど。
当時はまだ高校生だったんで、こうでなければいけない、みたいなものがなかったんですよ、物ごとや作品に対して。あとは考え方とかも。まあ衝撃を受けつつもすんなりと観た、っていう感じなんです。クリエイティブというところに非常に根ざした時代だったので、人がどう思おうが関係なしに、アーティストそれぞれの「こういうものを作りたい」っていう思いがダイレクトに作品に反映されていた。映画も然り、音楽も然り。ありとあらゆる新しいものが1970年代後半から1980年代中盤ぐらいまでにかけて生まれていて、うらやましい時代ですよね。
──今だといろんなしがらみがありますよね。
そう。この当時ってそんなに映画が商業として成立してなかったから。それが逆によかったんじゃないですか。まだアートとして存在し得た時代だったというか。
「皇帝のいない八月」は子供心に衝撃的だった
──では「イレイザーヘッド」と近い年代の「皇帝のいない八月」はいかがですか。これはいつ頃ご覧になったんですか?
確か小学生だったと思う。10歳くらいのときにテレビで観たんですよ。いわゆる“右”の話で。そういう思想がわかんないわけじゃないですか、右とか左とか。映画の中では戦争の話をしていたし、戦争が終わってるのにこういう人たちがいるんだ、っていうのが子供心に衝撃的で。「なんかすごい映画だな」と思いながら観ていたのを覚えてる。それ以来観返してないけれども。これってトレインジャックの話なんですよね。それで、渡瀬恒彦さんと山﨑努さんのシーンがあるんですけど。捕まった山﨑さんが車椅子に乗せられて、渡瀬さんが乗っている列車のそばまで連れて来られるんですよね。観ました?
──2人のまなざしが一瞬だけ交錯する場面ですよね。
そう。その一連の描写が子供心に印象に残って。ほかにも「蘇る金狼」とか「野獣死すべし」とか、その辺の作品にはすごく影響を受けているんですよ。だから「GOEMON」や「ラスト・ナイツ」もそうだけど、僕の映画ってちょっと男臭いものが多いんだと思う。
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月額制の動画配信サービス。テレビやPC、スマートフォン、ゲーム機などさまざまなデバイスで視聴できる。わずか3分の会員登録で人気映画やドラマ、アニメがすべて見放題に。今年4月よりユーザー数100万人突破を記念し、現在「フールー、オン」と題したキャンペーンを実施中。
紀里谷和明の語りたくなる作品リスト
- イレイザーヘッド
- 皇帝のいない八月
- スカーフェイス
- メタルヘッド
- SHAME -シェイム-
- アポロ13
- シンドラーのリスト
- エリザベス
- イントゥ・ザ・ワイルド
- ロスト・ハイウェイ
紀里谷和明が選んだ作品はHuluで配信中。Huluで作品を観よう!
※各作品のHuluでの配信には期限があります。
紀里谷和明(キリヤカズアキ)
1968年4月20日生まれ、熊本県出身。1994年より写真家として活動をスタートさせ、SMAP、サザンオールスターズなどのCDジャケットやMVの撮影を手がける。2004年に「CASSHERN」で長編監督デビュー。2009年発表の「GOEMON」以来6年ぶりとなる最新作「ラスト・ナイツ」が11月14日に公開される。
「ラスト・ナイツ」
紀里谷和明のハリウッド進出作。架空の封建国家を舞台に、忠誠心や名誉、正義、尊厳などをテーマにした人間ドラマ。主君の不当な死に報いるため、彼に忠誠を誓った騎士たちが立ち上がるさまを描く。出演はクライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、伊原剛志、アン・ソンギら。11月14日より全国でロードショー。
©2015 Luka Productions.
2016年1月8日更新