豆原一成(JO1)と市毛良枝がダブル主演を務めた映画「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」が、10月24日より東京・新宿ピカデリーほか全国で公開される。同作は、夢に迷う孫と夢を見つけた祖母による、人生のふとした喜びを描くヒューマンドラマ。母の出張をきっかけに一緒に暮らすことになった2人が、祖父の遺品である手帳に不思議な数式を見つけることから物語が展開していく。
監督は映画「大河への道」の中西健二。日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」や映画「BADBOYS -THE MOVIE-」などへの出演で俳優としての活躍も注目される豆原が、少し頼りないが優しい大学生の孫・安藤拓磨を演じ、1981年公開作「青葉学園物語」以来44年ぶりの映画主演となる市毛は、かつての夢だった学びを楽しむチャーミングな祖母・安藤文子に扮した。
映画ナタリーでは同作の公開を記念して、豆原と市毛、そして豆原と拓磨の恋人・大石紗季役を担った八木莉可子による対談を、2本立てでお届け。1カ月間の撮影を経て感じたお互いの魅力や今情熱を注いでいること、JO1が歌う主題歌「ひらく」、本作を通じて伝えたいメッセージについて語ってもらった。
取材・文 / 秋葉萌実撮影 / 梁瀬玉実
映画「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」予告編公開中
「まめ、すごいな!」に身が引き締まった(豆原)
──「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」は、観た人が「自分も一歩踏み出してみよう」と考えるきっかけになるような、とても温かい作品でした。豆原さんは、出演情報の解禁時に「自分の中ですごい挑戦」とコメントされていたのが印象的です。今回は市毛さんとのダブル主演ということもあり、俳優としての期待の高さを感じましたが、ご本人としてはどのようなところが挑戦でしたか?
豆原一成 市毛良枝さんとダブル主演というのはもちろん、名だたる俳優の皆さんと共演するというのは、今まであまり経験したことがなかったんです。光栄でしたが最初はすごく不安で、プレッシャーもありましたし……自分にとってはまさに挑戦でした。
──そんなチャレンジを経て、ご自身の中で成長を実感した点はありましたか。
豆原 「まだまだやれるべきことがたくさんあるな」というのは改めて感じました。ベテランの皆さんとお芝居をご一緒することで、学ぶことがすごく多くて。成長できたかどうかは自分では正直わからないですが、いろんなものをインプットすることができましたし、今後もどんどんいろいろなことに挑戦してみたいです。
──映画主演は5月公開の「BADBOYS -THE MOVIE-」に続いて2作目ですね。同作で演じたキャラクターとは印象が大きく変わる役どころでした。JO1のメンバーからはどんな反響がありましたか?
豆原 みんな映画の公開を楽しみにしてくれています! これまで、家族の優しい日常を描いた作品に出たメンバーはいませんでしたし、市毛さんと共演すると知って「まめ、すごいな!」と応援してくれました。自分としても、そういう言葉をもらうことでより身が引き締まりましたね。主題歌を僕たちJO1が担当させていただいたご縁もあるのでメンバーにもぜひ観てほしいです。
──拓磨は少し頼りない面もありますが、優しさにあふれた人物です。この作品をきっかけに、市毛さんのファンの皆さんにも「かわいい孫」として豆原さんの魅力が伝わるのでは?と思います。
市毛良枝 私の周りにも、豆原さんのファンがたくさんいるんですよ! 彼は「成長できたかどうかわからない」と話していましたが、撮影から1年経った今も変わらない雰囲気でいてくれるところが素敵だなと思います。「どちら様でしたっけ?」と言われなくてよかった。
豆原 それは絶対に言わないですよ!(笑)
市毛 髪の色だけ変わりましたね。
豆原 はい、すごく明るくなりました! そこだけは違いますね(笑)。
共通点は筋肉(市毛)
──市毛さんは1981年公開の「青葉学園物語」以来、44年ぶりの主演作です。
市毛 私としては久しぶりというか、そういえばあったかな?くらいの感じです(笑)。
──(笑)。文子が夫との暮らしを慈しむ様子や、若い頃の夢を叶えるためアクティブに日々を楽しむ姿はまぶしく見えました。
市毛 今思い返すと、その時々に感じるまま動いていた気がするんですよね。よく考えたら怖い人とがんばって戦ってみたり、とんでもない行動をしているのですが(笑)。
豆原 なかなかアグレッシブですよね。
市毛 それも考えた末に……というよりは、その場ですぐ「間違ったことはダメよ!」と行動を起こすんです。今回は役柄のおかげで自由にのびのびと演じていましたね。
──ご自身にとっても共感できるキャラクターでしたか?
市毛 もちろん! 夫を亡くしてすぐはお料理の分量を間違えるところもありリアルですし、ほかにも共感できる要素だらけです。夢を見つけて動き出してからは、元気に過ごす姿に魅力を感じました。私の母がこういう人だったので母をイメージして演じました。
豆原 そういえば、撮影時期はすごく暑かったですね。カメラが回っている間はクーラーを切らなきゃいけなかったので、おばあちゃんの家で過ごすシーンでは、汗で何度も現場を止めてしまいました。大きな扇風機を自分に当てながら「市毛さん、大丈夫ですか?」と声を掛けていましたが、汗をかいていたのは僕だけでした(笑)。
市毛 私もかいていましたよ。
豆原 本当ですか? 全然気付かなかった!
──スクリーンには映らない苦労があったんですね。豆原さん、市毛さんと共演シーンの多い八木莉可子さんは、(後掲する豆原との対談で)お二人の関係性を「本当の孫とおばあちゃんみたい」とお話しされていました。
市毛 そうなんだ! 確かにそうかもね。日常と仕事との境目があるのかないのか、わからないまま日々が過ぎていきました(笑)。
豆原 市毛さんには本当に優しくしていただいて……。
市毛 私は普通にしていただけですよ。普段のままお芝居をして、また日常に戻るという感覚でした。
──ナチュラルな状態でいられる温かい現場だったんですね。お二人には共通点もあるとか。
市毛 筋肉ですか?
豆原 市毛さんは本当にすごいんですよ。いろんなことに興味を持たれていて尊敬します。
市毛 すごくはないです。ただ筋肉が大好きなだけ(笑)。
豆原 僕が筋肉やトレーニングの話をしたら「何それ?」って言われるかなと思ったんですが、興味津々な様子で聞いてくださいました。
市毛 筋肉を鍛えるのも見るのも、どちらも好きなんです。鍛えている人の体はきれいだし素敵ですよね。豆原さんのトレーニングの話は、私とはまったくレベルが違いましたが。
豆原 そんなことないですよ! いっぱいお話しできてうれしかったです。市毛さんはダンスもされていて、JO1のダンスも「やってみたい」と言ってくださいました。
市毛 やってみたいけど、無理無理! 私が取り組んでいるダンスの種目にもリズムが速いものがあって、楽しいけれど足が付いて行かないこともある。でも、ダンスを観るのは昔から大好きで、自分もそういうジャンルに挑戦したい気持ちはあります。
──ダンス好きの市毛さんにとって、豆原さんの活躍ぶりは観ていて楽しいのでは?
市毛 ですよね。一度、JO1として踊っているところを生で観てみたいです。実はご一緒するまでJO1のことをよくわかっていなかったのですが、ダンスの先生が大ファンらしくて。オーディション番組(2019年に行われた「PRODUCE 101 JAPAN」)の頃から注目していたそうです。
豆原 それはとてもうれしいです。ぜひ市毛さんにもライブに来てほしいです! いつも気合いは入っていますが、来てくださったら倍以上(のエネルギー)で踊っちゃいます。
豆原さんはとってもかわいい存在(市毛)
──ちなみに、ひと足先に豆原さんへお話を伺ったとき、市毛さんについて「大好きです」とおっしゃっていました。
豆原 はい! 市毛さん大好きです。
市毛 私は普通に現場にいただけなのに……! ありがとうございます。男の子に「かわいい」と言うのは失礼かもしれないけど、豆原さんはとってもかわいい存在です。
豆原 そう言っていただけてうれしいです。
市毛 もちろんかっこいいところもありますが、少年らしさが今も失われていないのが素敵で、純朴なまま成長してほしいなと思います。急に「どちら様?」とは言わないでほしい(笑)。
豆原 そんなこと言うわけないじゃないですか!
市毛 雰囲気はふわっとしているけど、バリバリ踊れるというギャップがかっこいいですよね。
もっとトレーニングに情熱を注ぎたい(豆原)
──映画好きとしては、お二人の共演をまた観たい気持ちもあります。もしそんな機会があったら、次はどういう関係性の役柄を希望しますか?
豆原 難しい! 今回はうれしいことに“本当の孫”とおっしゃっていただけたので……。
──敵対する役どころではなさそうですね。
豆原 そうですね、敵対はしないだろうな。なんでしょう?
市毛 まったく違う役柄をいくつか演じるオムニバス作品はどう? 私は以前ラジオドラマをやっていて、ゲストの方と別の役どころで毎月4~5作品作るという番組を担当していたんです。孫や家族、他人だったり、もしかしたら敵対していたり……というショートストーリーを並べてみたら楽しいかも。
豆原 それは面白いですね! 市毛さんと何回も共演できたら、すごくうれしいです。
──ぜひシリーズで観てみたいです。本作にちなんで、拓磨にとってのコーヒーのように、お二人が大切なもの、情熱を注いでいるものはありますか。
豆原 僕はもっとトレーニングに情熱を注ぎたいと思っています。
──忙しい時期でも朝からジムに行くそうですね。
豆原 そうですね。今日は入り時間が早くなかったので、朝9時半くらいに行ってきました。
市毛 いつ寝ているんですか?
豆原 たくさん寝ていますよ! いっぱいトレーニングや運動をして、寝ています(笑)。あと、最近はブレイクダンスをやってみたらすごく楽しかったです。
市毛 やればできちゃうものなんだ!
豆原 いつも踊っているダンスとは違うので難しいですが、筋肉でちょっとカバーできました。
市毛 すごい! 私が今情熱を注いでいるものは朗読かな。声だけで表現するから、聴いてくれた人がいろんな景色を楽しめるし、想像でどこにでも行けるのが好きです。突然この場がフランスになっても、アメリカになっても成立する。舞台転換せずに、言葉だけで想像を広げられるのが大好きで続けています。
主題歌「ひらく」はJO1みんなが大好きな曲(豆原)
──最後に、JO1が歌う主題歌「ひらく」の話も伺いたいです。「ひまわりの約束」で知られる秦 基博さんの書き下ろしで、家族を思う素晴らしさが込められた本作の物語に寄り添う楽曲です。
市毛 優しくてすごく素敵な曲ね。「まさに画竜点睛だ!」としびれました。
豆原 本当に素敵な曲です。“秦さん節”を歌詞や曲調に込めつつ、JO1が歌ったときの雰囲気やパート割も感じながら作ってくださったんだろうなと感じました。何よりもこの映画にぴったりの楽曲を作っていただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
映画「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」主題歌 JO1「ひらく」MV公開中
──JO1として今後も活動を続けていくうえで、「ひらく」はどんな位置付けの曲になりそうですか。
豆原 JO1のメンバーみんなが「大好きな楽曲」と言ってくれています。自分が作ったわけではありませんが、ダブル主演を務めた映画の主題歌に対して、そういう言葉をもらえるのはすごくうれしいです。バラードだからこそ、ライブでは音源とは違う歌い方を楽しんでもらえると思いますし、皆さんに愛される楽曲として、これからもたくさん歌っていきたいです。
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JO1豆原一成(JO1)×八木莉可子 対談