映画「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」特集 豆原一成(JO1)×市毛良枝 / 豆原一成(JO1)×八木莉可子対談 | 本当のおばあちゃんと孫みたい!優しさたっぷりな家族の物語 (2/2)

JO1豆原一成(JO1)×八木莉可子 対談

とりあえず確認してみる拓磨がかわいい(豆原)

──まずはそれぞれのキャラクターの魅力から聞かせてください。豆原さんは就職活動を前にして未来を見出せない大学生・安藤拓磨を演じました。

豆原 大好きなコーヒーに関して、知識は豊富だけど「カフェを開きたい」という夢には一歩踏み出せずにいる自信のなさが魅力的でした。周りの人たちは消極的なところも拓磨のよさだと知っていますが、「でも、自分は……」と踏みとどまってしまうんですよね。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」より、豆原一成演じる安藤拓磨

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」より、豆原一成演じる安藤拓磨

──背伸びをしない拓磨の姿には、親しみやすさがありました。

豆原 そうですね。あとは、意外と抜けている部分もあります。紗季に「俺のどこが好きなの?」とかストレートに聞いちゃったり。相手の思いが気になっても、実際に聞くのは照れくさいじゃないですか? 僕だったら冗談っぽく聞いてしまうと思います。でもそんなことも考えず、とりあえず確認してみる拓磨はかわいいなと思いました。

左から豆原一成、八木莉可子

左から豆原一成、八木莉可子

──八木さんはそんな拓磨を見守る恋人・大石紗季を演じました。聡明で心優しく、誰もが思わず好きになるような人物でしたが、このキャラクターをどう捉えていましたか?

八木莉可子 拓磨の魅力も自信のなさも知っていて、彼を引っ張っていくイメージが紗季にはありますが、紗季自身も彼に助けられている気がしたんです。弱いところってつい隠したくなりますよね。でも拓磨には「俺のどこが好きなの?」と純粋に聞けるまっすぐさや、弱さをさらけ出せる強さがあって、そこに紗季は惹かれたんじゃないかなと考えました。彼をリードしているようで、実は互いに支え合って生きているというか。私は恥ずかしくて本音を隠しちゃうタイプなので、紗季が拓磨に「会いたかった」ではなく「コーヒーを飲みたかったから」と遠回しに言うところにも共感できました。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」より、八木莉可子演じる大石紗季

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」より、八木莉可子演じる大石紗季

──役作りの段階や実際に演じるにあたって、監督から何か要望はありましたか?

豆原 監督には「自然体でお芝居をしてほしい」と言われていました。何度か“本読み”の機会があって、その都度「もうちょっとこういうふうに」と教えていただきましたね。いい意味で“自然”というのが、僕自身とこの作品のテーマだったなと思います。

八木 セリフが決まっているし、カメラにどう映っているかを意識しながら演じる必要があるので、ナチュラルに振る舞うのはすごく難しいんですよね。私はまだまだですが、市毛良枝さんや長塚京三さんは「どうやってあの雰囲気を出すんだろう?」と思えるくらい自然に感じられました。特に家事をするシーンは実際に毎日されているかのような佇まいで、学ぶところだらけだなと感じながら、すぐそばでお芝居をさせていただきました。

──隣でお話を聞いていた豆原さんも、大きくうなずいていらっしゃいます。

豆原 本当にその通りです。コーヒーを淹れるなど、決められた動きをしながらセリフを言うとなると、もう“自然”にはならなくて。僕にとって“自然”が一番難しかったです。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」の撮影現場で、コーヒーの淹れ方を念入りにリハーサルする豆原一成

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」の撮影現場で、コーヒーの淹れ方を念入りにリハーサルする豆原一成

──撮影期間は、2024年の6月中旬から約1カ月だったそうですね。なかなかタイトなスケジュールだったのではないかと思います。

豆原 撮影自体は一瞬だったような感覚があります。あとは、僕は暑がりということもあって、すごく暑かった思い出が……。

──梅雨の時期で豪雨の日もあったものの、屋外での撮影では天候に恵まれたと聞きました。

豆原 確かに、ロケの日は雨も降らずでしたね。作品のメインビジュアルにもある、富士山を遠くから眺めるシーンも、晴れたおかげですごくきれいに映りました。富士山に登ったことも、こんなに近くで見たこともなかったので新鮮でした! それと、素晴らしい俳優の皆さんとお芝居できたのは自分にとっては本当に得難い経験だったなと、今も感じています。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」ビジュアル

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」ビジュアル

これが大先輩のすごいところなのか!(豆原)

──先ほど話題に出た市毛さんについて、もう少し教えてください。50年以上活躍されている大先輩ですが、お芝居そのものや現場での振る舞いから得た刺激はありますか?

豆原 市毛さんが現場にいらっしゃっていろいろな方とコミュニケーションを取るだけで、現場の雰囲気が変わっていくんです。ご本人はそういうつもりはないかもしれませんが、「これが大先輩のすごいところなのか!」と勉強になりました。僕も一応ダブル主演でしたが、何もできなくて(笑)。本当に市毛さんに付いて行くという感じでした。

──そういった方が、ダブル主演としてご一緒してくださるのは心強いですね。

豆原 そうですね。市毛さんの姿に刺激を受けて、自分もがんばらなきゃという気持ちになりました。お芝居をしているときはもちろん、カメラが回ってないときも本当に優しい方で、すべてにおいて人柄のよさが出ていました。

八木 豆原さんがおっしゃる通りです。凛とした姿が素敵で、私も背筋が伸びる思いでした。かなり歳下の私にも気さくに接してくださって。お芝居について監督に質問や相談をされていて、すごく能動的に作品に臨まれている姿にも刺激を受けました。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」場面写真

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」場面写真

──お二人とも直接教えを受けるのではなく、現場での振る舞いを見て自発的に吸収していったんですね。ちなみに共演シーンの撮影時には、どんなお話をされていたのでしょうか。

豆原 僕は主にトレーニングの話ですね。市毛さんはいろんなことをアクティブに楽しんでいて、登山やダンスなど体を動かすことがお好きだそうなので、僕の話を聞いていただいてました(笑)。

八木 拓磨、文子、紗季の3人でおすしを食べるシーンの撮影では、私もそこに交ぜてもらって楽しんでいました。市毛さんは、作り手側のこともすごく詳しいんです。メイキング担当の方とドキュメンタリーのお話をされていたときは、一緒になって聞いていました。

豆原一成

豆原一成

八木莉可子

八木莉可子

本当のおばあちゃんと孫みたい(八木)

──この作品の大きなテーマの1つに「孫と祖母の物語」があります。八木さんから見て、孫と祖母役の豆原さん、市毛さんの関係性はどう映りましたか。

八木 本当のおばあちゃんと孫みたいでした! もちろん豆原さんが市毛さんに敬意を抱いているのも感じましたが、とても仲が良くて自然な関係性でしたね。

豆原 うれしい。ありがとうございます。

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」場面写真

「富士山と、コーヒーと、しあわせの数式」場面写真

──豆原さんにとって、市毛さんはどのような存在ですか?

豆原 大好きです! 大先輩ではありますが、1人の人間として僕に接してくださいましたし、マネージャーさんや現場のスタッフさんなどにも分け隔てなく優しい。いろいろな方とおしゃべりされている姿が印象的です。

──豆原さん、八木さんのお互いの印象についてもぜひ聞かせてください。

八木 豆原さんはJO1としてパフォーマンスをしてる姿をテレビで観る機会が多かったので、「かっこいい人」というイメージがありましたが、誰に対してもフラットで壁がなく、純粋なところが拓磨に似ていました。話しやすくて素敵な方で、豆原さん自身のよさが拓磨にも出ていると思います。

豆原 うれしいですね(笑)。八木さんはきれいで強さを持った方というイメージがあったけれど、実際はすごく優しい。会うのは久々でしたが、変わらず面白くて普通に話せました。

──実は私も、お会いするまでクールビューティーな方というイメージを勝手に抱いていました。

八木 すごく言われます! でもしゃべると全然違うみたいです(笑)。

豆原一成

豆原一成

八木莉可子

八木莉可子

人や世界の温かさ、夢を抱くことの大切さを感じてもらえたら(八木)

──劇中で拓磨と紗季が悩みながらも少しずつ成長していく姿は、若い世代にとって共感できる要素が多いのではと思います。お二人はこの作品を通じて、どんなメッセージを受け取ってほしいですか。

豆原 僕は今23歳ですが、20代は新しく何かを始めるのに躊躇してしまう時期なのかなと感じています。10代まではアグレッシブに動いていても、年齢を重ねると落ち着いてきて新しいことを取り入れる機会が少なくなる。自分自身も「やりたいけどやれないな」と思ってしまうこともあるんです。でもそういう世代の方々には、可能性を閉ざさず、少しでも興味のあることにはぜひチャレンジしてほしいです。拓磨のように新しい世界が開けると思います。

八木 いろんなことを夢見ていた10代を過ぎて、現実的なことが見えてくる頃ですよね。拓磨のように一度はつまずいてしまっても、その先に手を差し伸べてくれる人がいるだろうし、挑戦することで得られるものもある。この映画は、登場人物の1人ひとりが何かしら悩みを抱えていて、支え合いながら生きているところがすごく素敵なんです。作品を通じて、人や世界の温かさ、夢を抱くことの大切さを改めて感じてもらえたらうれしいです。

左から豆原一成、八木莉可子

左から豆原一成、八木莉可子

プロフィール

豆原一成(マメハライッセイ)

2002年5月30日生まれ、岡山県出身。サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」を経て2020年3月にデビューしたグローバルボーイズグループ・JO1のメンバー。2025年10月22日に10thシングル「Handz In My Pocket」をリリース。個人では俳優としても活躍しており、映画「半径1メートルの君~上を向いて歩こう~」「劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア」「BADBOYS -THE MOVIE-」、ドラマ「超人間要塞ヒロシ戦記」、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」などに出演した。

(P1)ヘアメイク / 西尾さゆりスタイリング / 岡本健太郎

(P2)ヘアメイク / 西尾さゆりスタイリング / 齋藤良介
衣装協力 / ニット LITTLEBIG(税込2万7500円)、ネックレス LION HEART / Sian PR(税込7万4800円)、リング LHME / Sian PR(税込4950円)、そのほか スタイリスト私物

市毛良枝(イチゲヨシエ)

9月6日年生まれ、静岡県出身。文学座附属演劇研究所、俳優小劇場養成所への所属を経て、1971年にドラマ「冬の華」でデビューし、1981年公開の映画「青葉学園物語」では主演を務めた。出演作はドラマ嫁姑シリーズ「小さくとも命の花は」、「やまとなでしこ」、「富豪刑事」「駐在刑事」「無用庵隠居修行」シリーズ、「終活シェアハウス」、映画「望み」「明日を綴る写真館」など多数。俳優活動に加えて、執筆・講演なども精力的に行っている。介護のエッセイが、今秋出版の予定。

ヘアメイク / 竹下フミスタイリング / 金野春奈
衣装協力 / yume(カーツ 03-3486-0578)

八木莉可子(ヤギリカコ)

2001年7月7日生まれ、滋賀県出身。2015年に芸能界デビューし、翌年にポカリスエットのCMキャラクターを務めて注目を集めた。以降映画「スパゲティコード・ラブ」「劇場版ドクターX」「パリピ孔明 THE MOVIE」、Netflixシリーズ「First Love 初恋」、連続テレビ小説「舞いあがれ!」、ドラマ「潜入兄妹 特殊詐欺特命捜査官」「終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―」などに参加した。出演映画「WIND BREAKER/ウィンドブレイカー」が2025年12月5日に公開を控える。

ヘア / EMORI MIHO(ende)
メイク / NAO YOSHIDAスタイリング / Shohei Kashima
衣装協力 / Patchwork embroidered dressMURRAL(税込14万3000円)