映画「ダンケルク」 PR

「ダンケルク」特集 クリストファー・ノーラン インタビュー|陸海空のタイムサスペンス! 史上最大の救出作戦を描く狙いとは?

映像だけで物語を語ることにこだわった

──「ダンケルク」はセリフが極端に少ない映画ですね。今までのノーラン映画に比べると。

その通りです。私は確かに映画における会話シーンは好きなんですが、今回は言語に頼らない映画を目指しました。字幕翻訳代も安く済むでしょ(笑)。それは冗談ですが、映像だけで物語を語ることにこだわったんです。もともとサイレント映画が好きですからね。セリフではなく映像と音響による純粋な映画体験にしたいんです。ストーリーもできる限り削ぎ落として。

──面白いですね。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の取材でジョージ・ミラー監督にインタビューしたときもサイレント映画に戻ろうとしたと言っていました。バスター・キートンの作品などを参考にしたと。

クリストファー・ノーラン

確かに「怒りのデス・ロード」にはキートンのエッセンスがはっきり見えますね。サイレント映画の話法や文法は、現在の映画とはまったく違います。もう違う言語と言っていい。それを今、研究することで、新しい可能性が開けると思います。ちなみに私が今回「ダンケルク」の参考にしたサイレント映画はまず、エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督の「グリード」(1924年)と、F・W・ムルナウ監督の「サンライズ」(1927年)、それにD・W・グリフィス監督の「イントレランス」(1916年)です。

──「サンライズ」はボートによるサスペンス演出が有名ですね。「イントレランス」は異なる時間軸を並行して描く構成が「ダンケルク」と似ている。それに古代バビロニアの大都市を実物大のセットで再現した、実物志向もノーラン監督に似ています。シュトロハイムも本物主義で、画面には映らない下着までこだわったことで有名ですが、なぜ「グリード」?

「グリード」のようなサイレントの大作で特に参考にしたのは大量のエキストラの演出方法。何百もの人々をコントロールしてスペクタクルを作り上げる技です。群衆シーンは映画の原初的な魅力でもあり、それは今も変わっていないと思います。

──グリフィスの大群衆シーンを見るといったいどうやって演出したんだろうと思いますよね。携帯も無線もない時代に。

手旗信号を使っていたようですね。「ダンケルク」でも手旗信号を使ったんですよ。無線だと周囲の音が邪魔で聴こえないときがあるので。手旗信号は実際の戦争で使われますが、戦争映画の演出は戦争そのものに似ています。大量の人員を動かすわけですから。助監督は現場の指揮官ですね。

──戦闘機が海面に墜落するのをコックピットから撮ったシーンでは、ヒッチコックの「海外特派員」(1940年)の飛行機墜落シーンを思い出しました。

あれは本当にすごい! コックピットの窓に海面がぐんぐん近付いて、着水と同時に海水が窓を突き破ってカメラに向かってたたきつけられる。どうやって撮ったか知ってますか? あれはコックピットの前に大きな半透明のスクリーンを張って、裏側から海面の映像を映写してるんですよ。で、そのスクリーンの裏側には巨大な水タンクもあって、海面激突の瞬間に一気に水を放出するんです。実はスクリーンはライスペーパー(ベトナムで春巻きなどを巻くお米の紙)で作ってあるので、水で簡単に破れる仕組みです。CGに頼らない時代はみんな工夫してたんですよ。

──「ダンケルク」の着水シーンはどうやって撮ったんです?

それはまだ秘密です!(笑)

──「ダンケルク」は撤退の物語です。英国にとって勝利の戦いである「バトル・オブ・ブリテン」(ドイツ空軍によるイギリス本土攻撃を空中戦で撃退した戦い)を映画化しようとは思わなかったんですか?

「ダンケルク」より。

バトル・オブ・ブリテンは飛行機がたくさん必要ですから(笑)。それにすでに「空軍大戦略」(1969年)という素晴らしい映画もあるし。マイケル・ケインがよかったですね。ただ、バトル・オブ・ブリテンの問題はアンチクライマックスなんです。確かに勝利の戦いですが、結末はヒトラーが英国空爆をやめただけですから。それに対して、ダンケルクは確かに撤退の話ですが、チャーチル首相は「あの撤退が成功しなければ最終的に英国がドイツに勝利することはなかった」と言っています。ダンケルク撤退は兵士を救っただけでなく、国民の心をひとつにしたんです。

──去年作られた映画「ゼア・ファイネスト」はご覧になりましたか? ダンケルクの民間の小さな船についてのプロパガンダ映画を作る物語ですが、実際は8割以上の兵士が軍の駆逐艦に救われ、民間の小さな船はダンケルクまでたどり着けない場合が多かったという事実が描かれています。

ダンケルク撤退は確かに戦時プロパガンダに使われ、さまざまな伝説が作られましたが、彼ら普通の人々が命懸けで兵士を助けるために小さな船で危険な海に飛び出していったのは事実です。そして調べれば調べるほど実際にあったことは伝説以上に驚くべき事実の連続なんです。極めて複雑で、英雄的で……。それを知れば、あの戦いに参加した人々への感謝の念でいっぱいになりますよ。

ノーランのもとに集結した英国人俳優たち

トム・ハーディ(ファリア)

トム・ハーディ(ファリア)

「ダークナイト ライジング」以来のノーラン作品への参加となる。ナチスとの空中戦で孤軍奮闘するパイロットに扮した。

マーク・ライランス(ドーソン)

マーク・ライランス(ドーソン)

「ブリッジ・オブ・スパイ」で助演男優賞に輝いたオスカー俳優。ノーランとタッグを組むのはこれが初めて。イギリス本土から、船で兵士たちの救出に向かう市民を演じる。

右 / キリアン・マーフィー(謎の英国兵)

キリアン・マーフィー(謎の英国兵)

「バットマン ビギンズ」「インセプション」などノーラン作品の常連。今回は民間船に救出される兵士役を務めた。

ケネス・ブラナー(ボルトン中佐)

ケネス・ブラナー(ボルトン中佐)

俳優、監督、脚本家など幅広く活躍。ノーラン作品に初参加となる本作では、40万人の若き兵士たちの状況に危機感を募らせる軍人役で登場する。

フィン・ホワイトヘッド(トミー)

フィン・ホワイトヘッド(トミー)

1年半前まで皿洗いをしながらオーディションに通っていた新人俳優。若き兵士役を射止め、本作で映画初主演を飾った。

左 / ハリー・スタイルズ(アレックス)

ハリー・スタイルズ(アレックス)

オーディションによって選ばれ映画初出演。ホワイトヘッド演じるキャラクターと、ともに生きて故郷に帰ることを誓う兵士役に抜擢された。

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「ダンケルク」
2017年9月9日(土)全国公開
「ダンケルク」

1940年、海の町ダンケルク。フランス軍はイギリス軍とともにドイツ軍に圧倒され、英仏連合軍40万の兵士は、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められた。陸海空からの敵襲に、計り知れず撤退を決断する。民間船も救助に乗り出し、エアフォースが空からの援護に駆る。爆撃される陸・海・空、3つの時間。走るか、潜むか。前か、後ろか。1秒ごとに神経が研ぎ澄まされていく。果たして若き兵士トミーは、絶体絶命の地ダンケルクから生き抜くことができるのか!?

「史上最大の撤退作戦」と呼ばれたダンケルク作戦に、常に本物を目指すクリストファー・ノーランが挑んだ。デジタルもCGも極力使わず、本物のスピットファイア戦闘機を飛ばしてノーランが狙ったのは「観客をダンケルクの戦場に引きずり込み、360°全方位から迫る究極の映像体験」!

スタッフ / キャスト

監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
音楽:ハンス・ジマー
出演:トム・ハーディ、マーク・ライランス、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、ハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクション)、フィン・ホワイトヘッド

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クリストファー・ノーラン
1970年7月30日生まれ、イギリス出身。映画監督。1998年に「フォロウィング」でデビューして以降、「メメント」「インソムニア」など話題作を立て続けに発表した。2010年公開の「インセプション」は、第83回アカデミー賞にて撮影賞をはじめとする4つの賞を獲得。