実験映像作家・
超現実的な視覚世界や人間に潜在する狂気、不条理を追求してきた伊藤。2000年代以降は、それまでに手がけた実験映像作品のテーマやコンセプトを発展させながら、フィクション作品に没頭してきた。
本特集では、分身のような2人の女性の行動を日常的な時間・空間を超越して描いた最新作「遠い声」を上映。このほか、死にまつわる3つの物語を紡いだ初長編「
配給はダゲレオ出版が担当。12月19日には伊藤と映像作家の磯部真也、20日には伊藤と批評家の
「伊藤高志 劇映画特集」開催概要
開催日時・会場
2025年12月13日(土)~26日(金)
東京都 シアター・イメージフォーラム
上映時間
連日 21:00~
税込料金
一般 1500円 / 大学・専門学生 1400円 / シニア(60歳以上)1400円 / 会員 1300円 / 障害者割引 1300円
上映プログラム
Aプログラム(86分)
「遠い声」+「最後の天使」
Bプログラム(76分)
「遠い声」+「甘い生活」
Cプログラム(72分)
「零へ」
Dプログラム(70分)
短編集1:「SPACY試作/1980」「SPACY」「BOX」「THUNDER」「DRILL」「GHOST」「GRIM」「写真記」「WALL」「写真記87」「悪魔の回路図」「ミイラの夢」
Eプログラム(77分)
短編集2:「12月のかくれんぼ」「THE MOON」「ZONE」「ギ・装置M」「モノクローム・ヘッド」「めまい」「静かな一日・完全版」
上映後トークショー
12月19日(金)Cプログラム上映後
<登壇者>
磯部真也(映像作家) / 伊藤高志
12月20日(土)Aプログラム上映後
<登壇者>
佐々木敦(批評家) / 伊藤高志
伊藤高志 コメント
「遠い声」(2024年)
この作品は二人の女性が登場する。分身のような二人はそれぞれが同じチェキカメラを持ち歩き、一人は異様な気配にレンズを向け、一人は黒のワンピースを様々な場所に吊るして撮影している。二人はその彷徨いの中でお互いの存在を探し求めているようにも見えるが声は届くことがない。日常的な時間・空間を超越して二人の行動を描くこと、見つめ合うという強い視線の交差はあるものの二人は決して触れ合うことができないという空虚感を描くことでこの世界の不確実性を描きたいと思った。最近の戦争や環境問題、AIに想像される狂気性といった、恐ろしい気配に満ちた時代になってきたという底知れぬ不安を背景に、現実と虚構の境目が不明瞭になってきた時代を私なりに表象してみた。
「零へ」(2021年)
映像はスクリーン上に強い存在感を描き出すと共に、それは単なる虚像さという不在感を思い知らす残酷なメディアである。映像が持つこの両義性こそに私は強く興味を抱く。今回の作品は「死」をテーマに映画を撮ろうとする女子大生、「死体」を捨てるために放浪する中年の女、「死の影」に怯える老人という死にまつわる3つの物語と、それらに出演したキャストのインタビューを交えた作品だが、虚実、生死、存在といった境界が溶解することで現れる不穏を強く描くことで、私たちが生きている世界は不確実性に満ちていることを暗示させたいと思った。
「最後の天使」(2014年)
人が人と出会い関係を生み出していくという劇映画の常識的な話法を踏襲しながら、1つの物語として収束していくのではなく、拡散し、混沌としたイメージの海へ放り投げ出されるような映画をめざした。2組のカップルの不穏な関係。彼女は私の妄想なのか、それとも私の方が彼女の妄想なのか、その境界は曖昧になり、存在に対する不安が次第に高まっていく。
「甘い生活」(2010年)
死に場所を探しているのか? ただひたすら街をさまよい歩く喪服を着た女の物語と、破壊的な行為に明け暮れる少女の物語が交錯し溶け合い混沌としていく様を描く。少女は女の悪夢なのか? または女の方が少女の妄想なのか? 夢と現実の境界、内面と外部世界の境界、生と死の境界、光と闇の境界、そんな境界と呼ばれるものが喪失することで生まれる不安定で希薄な存在感を描きたいと思った。
映画ナタリー @eiga_natalie
実験映像作家・伊藤高志の劇映画をイメージフォーラムで特集、「遠い声」「零へ」など
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