2016年に香港で起きた麻薬密売事件をモデルにした本作は、元警官の新人検事フォクが法曹と裏社会が絡む巨大な陰謀に立ち向かう法廷アクション。ドニー・イェンがフォクに扮し、ジュリアン・チョン、マイケル・ホイ、フランシス・ン、ケント・チェンらもキャストに名を連ねた。
アクション部にとって、チャレンジングな現場だったという本作。スタントチームが作るアクションシーンのVコン(ビデオコンテ)を見て、ドニー・イェンは「面白い」と言いながらも「やるかどうかはわからない」と曖昧なまま進行するのが常で、スケジュールや撮影内容の変更の連続だったそう。フォクが大量の敵と乱戦するシーンでは、大内が「Vコン通りに撮るには5日必要です」と伝えると、予算削減のために「いや、2日だ」と2本指を立てて返されるも、最終的には20日ほどに及んだなど流動性に満ちた現場だったと振り返る。
また、大内がこれまで参加したドニー・イェン作品では、アクション監督 / 監督の谷垣健治と組んでいたが、本作では谷垣が不在。日本人スタッフを率いての環境作りからすべて自ら行う必要があり、言語の壁もある中、ドニー・イェンと直接コミュニケーションを取りながら制作を進めるのは初めての経験だったという。大内は「不安があったし、クビになるんじゃないかなと思いながらも精いっぱい臨みました」と吐露しつつ達成感をにじませた。
本作は“法廷サスペンス”であるため、当初はアクションが少ない想定だった。だが、アクション部はドニーのアクションを期待する観客のために、蹴りや打撃を含めた動きを準備。しかし「俺はパンチも蹴りもしない」と本人からのまさかの言葉が飛び出したこともあったという。キャラクター設定も直前で変更され、脚本をベースに作ったアクションが“白紙”になることも珍しくなく、柴田は「脚本の翻訳の最中に改訂版が届き、キャラ設定が変わっている。途中から脚本を読むのをやめました(笑)」と苦笑。さらに撮影当日、突然戦闘シーンが追加されることも。ドニー・イェンとフランシス・ンのバトルは、台本上は芝居だけだったというが、当日になって「え、戦うの?」と一同驚きながら対応したという。
ドニー・イェンから次々と繰り出されるアイデア1つひとつに応じきったアクション部。大内は「ドニーの現場を経験したことあるメンバーだし、みんな『どうせ想定外のことしか起こらない』と覚悟はしていました」と述べ、「でもそこが面白くなるところ。ドニーさんが急に出すアイデアに対応できるのが香港映画なんだと思います」とやりがいに言及した。
スタントチームからの裏話も続々と飛び出す。トラックを使った路地裏のアクションシーンに関しては、敵をトラックの荷台に閉じ込める戦闘もあり、撮影用にトラックを改造。パワーゲート(昇降装置)の開閉速度の調整や、カメラが入る場所を開けるなど細部に至るまで工夫が施された。また山本がドロップキックを受けるアクションでは、ドニー・イェンが脚を負傷するアクシデントが発生し、そこから山本は“膝をけがさせたやつ”とあだ名を付けられたと述懐。そして撮影が終盤に差し掛かる頃、ドニー・イェン主催のクリスマスパーティに招待された際には、抽選会で山本が1等賞のiPhoneを引き当て、そこから山本のあだ名は“iPhone”に。山本が「“けがさせたやつ”よりよかった」と安堵の表情を浮かべるも、大内は「いや、ドニーの中では“膝をけがさせたのにiPhoneを持ってったやつ”って認識だと思う」と言いのけて会場の笑いを誘った。
なお本作には「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の四仔(セイジャイ)役で注目を集めた
イベントでは、本作のために制作されたVコンの一部も特別上映された。本編には採用されなかったシーンの構成も含まれており、観客からは感嘆の声と拍手が上がる。そして司会のギンティ小林からの「“Vコン映画祭”もやってみたいですね」との声に、大内は「そういうのができたら面白いですよね。スタントマンたちが必死に作っても、表に出せないままのVコンがほとんどなので」と述べ、創意工夫をもっと広く共有できる場への興味を示した。
最後は、法廷で飛び出すセリフ「意義あり!」が書かれたボードを蹴り割るパフォーマンスが行われた。誰が蹴るかをめぐって“アクション合戦”が勃発しスタントマンたちが戦う中、「どけー!」と大内が飛び入りドロップキックでボードを粉砕。会場は拍手に包まれ、大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。
映画「プロセキューター」日本のスタントチームがアクション披露!
「プロセキューター」は全国で上映中。
大内貴仁 @takahitoouchi
明日から山本はiPhoneと呼ばれるようになるな笑 https://t.co/F6xKkJISnl