2011年6月23日に不慮の事故で死去したポエトリーラッパー・不可思議/wonderboyの楽曲「世界征服やめた」を原案および主題歌とする本作。内向的な社会人・彼方の人生が、どこか飄々としつつ白黒をはっきりさせたがる同僚・星野の決断によって揺れ動くさまが描かれる。
俳優・アーティストとして活動する北村は「人生で初めて監督という立場でこの場に立たせてもらいました」と張り詰めた表情を浮かべるが、舞台挨拶に初登壇の藤堂を一瞥して「もっと緊張するものだと思ったけど、すべてが初めての彼を慰めていたので、緊張する間もありませんでした」と笑みをこぼす。企画が始動したのは2023年3月頃。北村は「たくさんの脚本を読んできたのに、いざ自分が書くとなると難しい。なるべく役者として寄り添えるよう、自分の口でセリフをしゃべりながら書き進めました」と振り返る。そして「人生の中で映画と音楽に救われる瞬間がたくさんあったので、ある意味、それが複合的になった作品です」と達成感をのぞかせた。
彼方役の萩原は「いろんな匠海を現場で見てきたはずなのに、全然知らない彼を突き付けられるような。どこにしまってたんだろう?みたいなものを感じました」と脚本を読んだ際の心境を思い返す。自身の役については「僕ありきで書いてくれた部分もあるんだろうなと。体の内側まで見られていたみたいな感覚」と言及。一方で「当て書きのようで、この役って絶対に北村匠海もできるんですよ」とも切り出し、「いろんな役者がいる中で、匠海には共感という言葉では収まらない、共鳴しているところがあると思ってます。だから匠海もきっと演じられるけど、どこかで僕なりのを表現したいという思いがありました」と本作に挑んだ際の心境を明かした。
星野役の藤堂は、脚本を読んで「北村匠海らしさが出ている」と思ったと口にし、「匠海くんって温度を感じられる人間で。言葉1つひとつのチョイスが温かいんですよね。楽曲『世界征服やめた』の歌詞ともリンクしているというか、渾然一体になっている印象でした」と感想を伝える。キャスティングは北村いわく2人とも当て書きで、「監督の立場で見てみたいと最初に思ったのが藤堂日向。『東京リベンジャーズ』で出会い、仲が深まるうちに、役者として生きたいという彼の渇望を目の当たりにして、それを撮りたいと思った」「役者としての感覚が自分と近い人は利久しか浮かばなかった」とそれぞれの起用理由を説明。そして「2人がそろったとき、自分のやることはもうやったという感覚でした」と振り返り、萩原と藤堂への絶大な信頼をあらわにした。
いざ撮影が始まると、監督・北村匠海から繰り返し放たれた演出指示は「生きて」だったそう。萩原は撮影を振り返り、「余白が長すぎるんです。ほぼ放置されてるんじゃないかってぐらい無限にカメラが回ってるから、緊張しますよ」と苦笑。北村から「彼方が自宅で歯を磨いたりソファに座るシーンは、利久がクランクインしてすぐにテストもなしに『じゃあもう回すから。生きて』と言って撮りました」とエピソードが飛び出すと、萩原は「びっくりですよ!」と嘆く。居酒屋のシーンでは「完食するまでカメラ止めないから」という演出もあったそうで、脚本の段階では30分程度の想定だったものの、完成した作品は最終的に50分の長さに。また藤堂は「役作りがうまくいかず監督に相談したら、『とにかく陽の存在でいてほしい。でも悲しさや痛みもひっくるめた涼しさを持っていてほしい』と言われて。抽象的に思えるけど、匠海らしいアドバイスをもらえて足掛かりがつかめました」と、役者ならではの助言に救われたことを明かした。
今後チャレンジしたいことを聞かれると、北村は「やってみたいことはいくらでもある。祭りで焼きそば作ったりとか。映画においてやりたいのは助監督」と声を弾ませる。「2人とも今後もいろんな関わり合い方をしていきたい。自分がまた監督をやるとき、助監督入ってくれない?ってお願いすることもあるかも」と続けると、萩原も藤堂も「なんでもやりますよ!」と即答。さらに北村は「実は次の作品も書いてたりするんですけど、実現するかわからない。ただ自分の蓄えとして書いているので、ライフワークとして続けたいです」と先を見据えた。
「世界征服やめた」は2025年2月より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開。
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【映画『世界征服やめた』ワールドプレミア上映イベント】監督・北村匠海の演出は「生きて」 萩原利久が撮影述懐 藤堂日向はアドバイスに感謝 https://t.co/HMJqUVhjlB
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