安部公房の小説を映画化した「
「箱男」はダンボールを頭からすっぽりとかぶり、一方的に世界をのぞき見る“箱男”に魅せられたカメラマン“わたし”の物語。自身も箱男としての一歩を踏み出した彼が、数々の試練と危険に襲われるさまが描かれる。“わたし”に永瀬が扮し、箱男の存在を乗っ取ろうとするニセ医者役で浅野、“わたし”を誘惑する謎の女・葉子役で白本、箱男を完全犯罪に利用しようとたくらむ軍医役で佐藤が出演した。
1973年に発表された同名小説は、その幻惑的な手法と難解な内容のため映像化は困難と言われていた。1997年、安部本人から直接映像化を託された石井のもとで製作が決定。しかしドイツ・ハンブルクでのクランクイン前日、不運にも撮影が頓挫するという経緯があった。安部の生誕100年にあたる2024年、ついに「箱男」の映画を完成させた石井は「本当に夢のよう。まるでまだ私が箱の中に入って夢を見ているんじゃないかという気分です」と達成感をあらわに。「制作しないという選択肢は一度もなかった」と言い切り、「映画館でしかできない体験を作りたいといつも思っています。これは皆さんに箱男になってもらい、箱男の中の迷宮にいざなう冒険を体験する映画。この素晴らしい俳優方が皆さんを導くので、身を委ねて体験していただければ」と観客に呼びかけた。
1997年当時も同じ役でキャスティングされていた永瀬は、撮影中止が告げられる直前に偶然見かけた石井の後ろ姿について「一生忘れないと思いました」と振り返る。そして当時の役作りについて「ホテルの部屋でずっと箱に入っていました。トイレとお風呂に入るとき以外は箱の中で生活を。(箱男の)役をちょっとでも感じたいと思って」と回想。今回も同様のアプローチを実践したそうで、「撮影前にやりました。でも前回と違って、うちに小さな相棒がいまして。猫っていうんですけど。そいつが箱に興味を持つので、一緒に入ったりしていました」と和やかなエピソードを明かした。
永瀬は、同じく出演予定だった佐藤と交わした当時の会話も述懐する。「撮影が中止になり、ドイツのスタッフが集いの場を設けてくれたんですが、浩市さんに『デートしよう』と声を掛けられてパーティを抜けたんです。すると浩市さんが『俺は棺桶に釘を打つ寸前だ。お前はどうするんだ?』とおっしゃって。僕は『釘を打たれてもぶち破って出ていきたいです』と答えました」と明かす。抽象的な会話の内容に、佐藤は苦笑しながら「補足します。『俺はこの役を棺桶に入れて埋めるよ』というニュアンスで話しました。でも永瀬さんの『埋めきれない』という話を聞いて、うれしくもあり、切なくもあり……ということです」と解説。永瀬は「あんなに緊張した“デート”はあとにも先にもありません(笑)」としみじみ振り返った。
また今回新たにキャストに加わった浅野は「このタイミングで『箱男』を制作するとはびっくり。でも、この人たちだったら必ずやってくれるだろうという安心感があって。最初から完璧なものが目の前に用意された感じで、そこに入れるのはありがたいと思いました」とオファーを受けた時点で手応えがあったことを口にする。オーディションで役をつかんだ白本は「絵に描いたようなガッツポーズと雄叫びをあげたのを覚えています。皆さん、毎回違う刺激を与えてくださるので、自分が想像しきれなかった葉子を引き出していただけました」と“レジェンド”たちとの共演を感激混じりに振り返った。
「箱男」は8月23日より全国ロードショー。
映画「箱男」予告編
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ホッタタカシ @t_hotta
最初の構想通り、ドイツで撮影してほしかった気も少しある。
【イベントレポート】制作頓挫から27年「箱男」完成、永瀬正敏は箱に入って撮影準備「猫も入ってきた」(写真10枚) https://t.co/xMu0kRVdTN