東映ツークン研究所では、新たな映像表現を目指して2019年からデジタルヒューマンの技術開発を遂行。ショートムービーの“主演”には、映画「蘇える金狼」「ブラック・レイン」やドラマ「探偵物語」など数々のヒット作を残し、1989年に死去した松田が選ばれた。
顔の復元には複数人の超高精細3DCGデータをもとに機械学習で生成した顔モデルを利用。表情の動きには、トラッキング技術で松田のボディダブル(代役)の表情を解析し、アニメーションが付けられた。また声の復元に関しては、AIによる音声復元およびAI音声ディレクション全般を、ゲームなどの開発を行うクリエイティブ企業ORENDA WORLDが担当。音声合成分野でよく知られる名古屋大学発の企業TARVOのAI音声変換技術「Suara」を使用して復元に挑んだ。
ショートムービーは、松田が夜のトンネル内を車で運転する姿、彼が触れたことのないはずの現代のスマートフォンを使った通話姿、昭和を感じさせるようなジッポーで煙草に火を点ける姿などが映し出され、現代と過去が融合された内容となっている。監修を担当した
なおデジタルヒューマン研究開発プロジェクトでは、この技術を今後の映像作品で生かし、過去の偉人やスターをスクリーンの中によみがえらせていく。さらに街中での道案内や広告、接客といった幅広い技術活用の可能性を追求する。
松田美由紀 コメント
青いライト、煙草の香り。俳優、松田優作の短編映画ができあがりました! 亡くなって33年経った今、皆さんの想いで新作が作られた気持ちです。
監修ではパソコンに向かって少しづつ、時間をかけて、優作の世界に入っていきました。形を追い求めるのではなく私の中の記憶、優作への想いを頼って一歩一歩近づいていく。圧倒的に強いオーラ。それだけを感じながら制作のお手伝いをしました。どんどん顔に魂が吹き込まれていくから不思議。ぜひ現代の優作に会ってみてね。
岡本美津子(東京藝術大学大学院映像研究科教授)コメント
人は微妙な顔の筋肉の動きで感情を読み取ろうとするのですが、この映像ではそれが自然に表現されており、デジタルヒューマンを見たという印象よりも普通のドラマの1シーンを見たというのが率直な感想でした。今回の映像は、デジタルヒューマンが1人の俳優として活躍できる可能性があることを提示した素晴らしい作品だと思いました。また、この技術を東映ツークン研究所の目的の一つでもある社会実装においても活用することで、現代社会に様々な可能性を提供してくれると期待しています。
神谷英樹 Hideki Kamiya @PG_kamiya
マンダロリアンのあの人もすごかったから、日本でもこういう技術研究は大事よね… https://t.co/aQQbjdsNlT