コミックナタリー Power Push - 「ライチ☆光クラブ」
“成長を否定した少年たち”の証言
劣等感でぐちゃぐちゃになるまで役のイメージを膨らませた
──原作はもともとご存知だったんでしょうか?
出演が決まってから初めて読みました。少年たちがなんで大人を恨むのかとか、そういうことを頭で難しく考えさせるんじゃなくて、感覚的に訴えかけてくるものがあるなと思いました。ゼラの言葉を聞いていると、ワナワナワナってアジテートされて盛り上がってくるものがあるんですよね。一瞬でブワーッと読み終わっちゃいました。多分僕が14歳や15歳くらいであの作品に出会ってたら、ちょっと人生変わってたなと思います。
──原作には狂わされるような熱がありますよね。ご自身が演じたカネダについては、どのように役作りされていきましたか?
あまり人に会わずに、なるべく家の中で過ごすようにしていました。自分の中の劣等感とか、マイナスの破片を大きくしていって。カネダを象徴する“鬱屈とした瞳”っていうのも、ただ真似るんじゃなくて、ちゃんと鬱屈とした瞳にならないといけないと思ったんですよ。誰かに見られるのも恥ずかしいとか、自分が劣等感でぐちゃぐちゃになるまで(役のイメージを)膨らませていきました。
──カネダは長い前髪が特徴的でしたが、あの髪型にして気分は変わりましたか?
変わりますよー! あの髪型にして帽子を被ると、自然と猫背になるんですよね。目の片側が隠れているし、帽子で視界が遮られていることによって、人と目が合わなくて済むんです。髪型でけっこう助かった部分はありますね。
──撮影時の思い出や共演者の方とのエピソードを聞かせていただけますか。中条あやみさんは撮影現場が「監獄のようだった」とおっしゃっていました(参考:映画「ライチ☆光クラブ」紅一点のカノン役は中条あやみ、古屋兎丸も太鼓判)が。
撮影中は常に暗くて寒くて、ボーッとしていると精神が持っていかれそうになるというか、現場の雰囲気に飲み込まれちゃうんです。そういうときに野村(周平)くんが「季節、俺はピースな現場が好きだよ」って助けてくれたりして。「あ、やっべえな、今俺ピースじゃない空気作っちゃったかな」とか日々反省していました。とにかく環境が完璧だったので、立ってるだけで光クラブのメンバーになれるというか。
──光クラブのみんなでライチを作っているシーンが印象的でした。
あのシーンでカネダが前髪をフッフッて吹いているじゃないですか、あれはアドリブなんですよね。今回「ぼくらの☆ひかりクラブ」っていう前日譚を描いたマンガのエピソードも盛り込まれることになって、カネダという人物の多面性が見られるんです。僕は「ライチ☆光クラブ」や「ぼくらの☆ひかりクラブ」を読んで「カネダってかわいいな」と感じて。そのかわいさをどこかに盛り込みたいっていう目論見があったんですよ。
──その思いを、前髪を吹く仕草に込めたんですね(笑)。
撮る直前、監督から「カネダはハンダゴテを使って作業してほしい」と言われて、「前髪フッフッをやるならここだろ!」と思って入れちゃいましたね(笑)。
──カネダらしさが表れていてとてもよかったです。観た人はクスっと笑ってしまうと思います。
本当ですか! うれしいですね。真剣にやってるんだけど、そういうことが起きちゃうっていうのがカネダらしいんですよね。
見どころは原作とはちょっと違う部分
──ほかには、タミヤとダフとカネダの3人だけの場面がありますよね。あのシーンはいかがでした?
あれは撮影の初日だったんですよ。僕は経験も浅いですし、生まれたときから一緒にいるっていう彼らの距離感をどうやって再現したらいいんだろうという迷いがあって。「これはまずいんじゃないかな」と思って、野村くんに相談したら「大丈夫だよ。俺も怖いし」って言ってくれたんです。そこでちょっと吹っ切れたものがありました。無理をしなくていいんだなって思えたんですよね。
──撮影中は野村さんと一緒にいることが多かったんですか?
そうですね。雷蔵役の松田凌くんと一緒にいることも多かったかな。松田くんはマイペースなんですよ。みんなと一緒にいないで、ずっと1人でケータイのゲームをやってるんです。彼はすごくおっとりしていてそばにいるだけで落ち着くので、待ち時間は基本的に松田くんの隣に座ってました。
──松田さんの存在は過酷な現場での癒やしだったんですね。映画の中でここはぜひ観てほしいというポイントやシーンはありますか?
カネダというキャラクターは、実は原作とちょっと違う部分があるんですよ。これは言わないほうがいいのかもしれないけど……(笑)。僕としては、そこが見どころです。その場面に向かって演技のプランを練っていったので、映画を観た方がそれぞれ答えを受け取ってカネダに共感してくれたら最高だなあって思います。
──例えばどのようなことを気にされたんでしょうか?
「僕は怖いよ」とか「ごめん」とか。カネダはそういう一言のセリフが割と多かったりするんですよね。その1つひとつに気持ちを込めました。
──ゼラに背こうと誘うタミヤに、カネダが「僕は怖いよ」と言うシーンですよね。あの場面はどのような気持ちで演じましたか?
タミヤから「光クラブを抜けよう。あんな光クラブはもういらない」と言われたときに、「それは嫌だ」って思ったんですよ。
──どうしてですか?
集団に属する快楽みたいなものがあったんですよね。初めてみんなで撮影をしたときに、ゼラの「一つ」という言葉にあわせてみんなで10箇条を読んで、トランス状態に入ったというか。あの集団にいることがカネダの存在を支えているという一面もあるなと思ったんです。だから光クラブを抜けることに関しては、カネダの中に引っかかるものがあって。そこから気持ちが盛り上がって、「僕は怖いよ」と言葉になったという思い出がありますね。
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「ライチ☆光クラブ」2月13日新宿バルト9にてロードショー、2月27日より全国拡大公開
工場から黒い煙が立ちのぼり、油にまみれた町、螢光町。この貧しい地の廃墟へ、深夜に集まる9人の中学生がいた。この秘密基地の名は「光クラブ」。光クラブのメンバーは醜い大人を否定し自分たちだけの世界をつくるため、兵器として機械(ロボット)を開発していた。巨大な鉄の塊で作られた機械が動く燃料は、永遠の美を象徴するライチの実。その機械は「ライチ」と名付けられ、悪魔の数列666でいよいよ起動する。ライチに与えられた目的は、光クラブに美しい希望をもたらす「少女の捕獲」。光クラブのリーダーであるタミヤ、実質的支配者のゼラ、ゼラを偏愛するジャイボと絶対的な忠誠を誓うニコ……光クラブ内でそれぞれの愛憎が入り乱れ、裏切り者探しがはじまる中、ライチはとうとう美少女・カノンの捕獲に成功する──。
果たして、少年が願う大人のいない永遠の美の王国は実現するのか……。
スタッフ / キャスト
監督:内藤瑛亮
脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮
原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版)
配給・宣伝:日活
制作:マーブルフィルム
出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音 、杉田智和(声)
©2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会
藤原季節(フジワラキセツ)
1993年1月18日生まれ、北海道出身。「人狼ゲーム ビーストサイド」で本格的に映画デビューを果たし、「百円の恋」「新宿スワン」「イニシエーション・ラブ」など映画を中心に活動。公開待機作に宮藤官九郎監督作「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」、ハリウッド映画「Silence(原題)」がある。