コミックナタリー Power Push - 「ライチ☆光クラブ」
“成長を否定した少年たち”の証言
絶対に雷蔵をやりたいと思っていた
──原作はもともとご存知でしたか?
舞台化されていたので知ってはいましたし、一度読ませていただいていました。自分がやるなら、絶対に雷蔵をやりたいと思っていたんですよ。
──へえ!
実はもしそういった機会があるならと、虎視眈々と狙っていたんです。で、たまたま運よく声をかけていただいて。オーディションで、最初はゼラやジャイボの台本も読んだんです。でも僕は雷蔵しか狙ってなかったので、「次、雷蔵をやってみて」と言われたときに「ここだ!」とそこに全精力を注ぎました。だから役が決まったときは本当に待ちわびていた瞬間というか、自分が掴みたかったものを掴めたので、うれしかったですね。
──なぜ雷蔵にこだわっていたんでしょうか。
雷蔵って女性の心を持っていたり、いろんな過去があったり、陰の部分があったり。そういうのを表現するのってすごく難しいことだけど、挑戦したい気持ちがあったんです。
──松田さんはこれまで舞台や映像でいろんな役を演じてこられたと思いますが、オネエキャラは初めてですよね?
初めてです。実は「ライチ☆光クラブ」の撮影を終えてから、「フェードル」という舞台で女性役をやったんですけど、やっぱり難しかったですね。雷蔵を演じるときは仕草ももちろんですし、筋肉の収縮もできるだけ柔らかくして、肉々しい部分を作ったりしてました。骨盤も内に内にって、ずっと意識してましたし。ただ雷蔵を追うというよりは、女性誌をたくさん見て研究してましたね。
──それは何か理由があったんでしょうか。
雷蔵がやってしまう手の仕草とかって、女性への憧れやトラウマが生じてああなってると思うんです。雷蔵を追いかけてもただ雷蔵を追いかけた人にしかならないけど、雷蔵が憧れた女性を追いかけたら、自分自身の雷蔵が演じられるんじゃないかと。
──女性らしさを磨くうえで実践していたことはありますか?
半身浴してたし、ネイルもしてたし、手もずっとケアしてたし。常にハンドクリーム塗ってました。キャストのみんなが夜飲んでるときも、僕は飲まずに半身浴して。
──ああ、あまり飲んだらお肌にも悪いですし。
そうそう、むくんじゃうし(笑)。
──雷蔵がお裁縫しているシーンは、本当に女性らしさを感じました。
ありがとうございます。本当は原作に出てくる猫ちゃんマスクも作りたかったんですけどね。「どきんこ」とかも言いたかったんですけど(笑)。そこはまた置いておこうかなと。いつか出せるかもしれないし。
自分を綺麗だと思い続けました
──松田さんの「どきんこ」がどこかで聞けることを期待したいです。先ほど雷蔵にはトラウマがあったとおっしゃっていましたが、そこは原作には描かれていない部分ですよね。どういった解釈なのか、お伺いできますか。
この「ライチ☆光クラブ」の時代って、まあパラレルな世界ですけど、家族構成などから考えるに、雷蔵を認めてくれる場所ってほとんどなかったと思うんです。今でこそオネエとか性同一障害って言葉が認知されていますけど、そうではない世界なので。その中で雷蔵にとって、唯一自分のことを必要としてもらえて、ムードメーカーだったり華になれる場所っていうのが、光クラブだったんですよね。きっと拒絶されてきた過去とかもあるだろうし、自分の求めていたものと周りのすれ違いもあっただろうし。そういうものが、雷蔵の女性らしく生きたいっていう気持ちをより駆り立てたんだと思うんです。
──なるほど。
あと雷蔵を演じるうえでは、自分を綺麗だと思い続けましたね。毎日それを思うことに必死でした。世界一かわいいと思わなきゃ、雷蔵にはなれないし。プライドが僕を一番駆り立ててくれたというか。でもやっぱり不安で。だから現場でいろんなスタッフさんやキャストさんが「かわいい」って言ってくださるのが、僕にとっての唯一の励みでしたね。
──最後に、ここに注目してほしいというポイントがあれば教えてください。
世界観ですかね。退廃的で残酷で儚くて、本当に無垢な夢を持った少年たちの作品が、ここまで忠実に作り上げられている。セットから、役者の皆さんから、細かいことを言うと小道具から、照明から、そして音楽も。細部の細部まで計算し尽くされています。雷蔵は出演シーンがすごく多いわけではないですけど、行動の意思はすべて見えてきます。美しいものに対しての嫉妬だったり、肉体の使い方だったり、こだわったポイントがたくさんあるので、どの瞬間でもいいんですけど、どこかワンシーンだけでも雷蔵がここにいるんだなって思っていただけたら、僕はそれだけで幸せです。
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「ライチ☆光クラブ」2月13日新宿バルト9にてロードショー、2月27日より全国拡大公開
工場から黒い煙が立ちのぼり、油にまみれた町、螢光町。この貧しい地の廃墟へ、深夜に集まる9人の中学生がいた。この秘密基地の名は「光クラブ」。光クラブのメンバーは醜い大人を否定し自分たちだけの世界をつくるため、兵器として機械(ロボット)を開発していた。巨大な鉄の塊で作られた機械が動く燃料は、永遠の美を象徴するライチの実。その機械は「ライチ」と名付けられ、悪魔の数列666でいよいよ起動する。ライチに与えられた目的は、光クラブに美しい希望をもたらす「少女の捕獲」。光クラブのリーダーであるタミヤ、実質的支配者のゼラ、ゼラを偏愛するジャイボと絶対的な忠誠を誓うニコ……光クラブ内でそれぞれの愛憎が入り乱れ、裏切り者探しがはじまる中、ライチはとうとう美少女・カノンの捕獲に成功する──。
果たして、少年が願う大人のいない永遠の美の王国は実現するのか……。
スタッフ / キャスト
監督:内藤瑛亮
脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮
原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版)
配給・宣伝:日活
制作:マーブルフィルム
出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音 、杉田智和(声)
©2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会
松田凌(マツダリョウ)
1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。2012年にミュージカル「薄桜鬼」斎藤一篇で主演を務めたほか、特撮テレビドラマ「仮面ライダー鎧武/ガイム」、テレビ「ニーチェ先生」、青山真治古典プロジェクト舞台「フェードル」などに出演。1st写真集「Zero」がワニブックスより発売中。