コミックナタリー Power Push - 「ライチ☆光クラブ」
“成長を否定した少年たち”の証言
ニコの強さや威厳は、弱い部分から来ている
──原作については、もともとはご存知でしたか?
そうですね。原作は読んでました。もともと古屋さんの作品はよく読んでいたんです。14年くらい前に園子温監督の「自殺サークル」という映画があったんですけど、それのコミカライズを古屋さんが描いていらっしゃって。それで初めて古屋さんの作品を読んで「面白いな」と思っていたんです。「ライチ☆光クラブ」もけっこう前に読んでましたね。
──では映画化の話を知ったときは、どんな感想を持たれたんでしょうか。
「ああ、映画やるんだな」と。舞台化されていることは知っていたんですけど、映画になるということで、もっと原作に寄ったというか、リアリティのある画作りになるんだろうなと思いました。想像すると楽しみで、「ぜひやらせてください!」という感じでしたね。
──池田さんの演じられたニコは、ゼラに絶対的な忠誠を誓うという役柄です。ご自身とニコで、近いところはありますか?
このキャラクターたちの中で自分がやるならニコかなあとは思ってましたね。僕は鬱屈しているよりは発散型のキャラクターのほうが好きなので、光クラブの中でだったら、ニコやゼラが素敵だなと思っていました。もとはマンガですし、みんなそれぞれ強いキャラクター性があるというか、いい意味でキャラクターっぽい人物たちというか。自分が演じるとしたら、ジャイボなんて難しいよな、と思いながら(笑)。
──ニコを演じるにあたっては、どう役作りされていったんでしょうか?
僕、普段からもそうなんですけど、役作りするうえでバックボーンをしっかり考えるようにしてます。例えば「ぼくらの☆ひかりクラブ」は小学生から中学生になるまでの話ですけど、すべての日々が描かれているわけじゃない。ここに描かれてないときのニコはどんなだったんだろうかというのを推測して、キャラクターのディテールを深めていきます。あとは「僕はこういうキャラクターだと思うんですけど」と監督と話して、相違があったら修正して、という感じですね。これを最初にしっかりやっておいて、あとはあまり考えず。キャラクターのことをちゃんと理解した後であれば、どんなセリフでもどんなシーンでも、こうなるであろうということが、自然にわかってくるんです。
──最初に、キャラクターを自分に染み込ませていくんですね。ニコを演じる上で、一番大切にしていたことはありますか。
表面的に見える、気の張った、というか忠誠心からくるピリピリした雰囲気は大事にしたいなと思っていたんですけど、まずそれはどこからくるんだろう、というのもしっかり考えていこうと思っていました。彼がなぜそうなってしまったのかっていうところを、しっかり根本に持って。生まれてからずっとそういうふうに生きてきた子では、絶対にないわけですから。
──ええ。「ぼくらの☆ひかりクラブ」では、ニコは最初、貧乏で自信なさげな子供でしたね。
僕は、ニコの強さというか、威厳みたいなものは、弱い部分から来るんだろうなと思ったんです。自分に弱いところがあって、そこが嫌いだったり、そういうところに本質があるからこそ、逆説的に強く見せているんじゃないかと。そういうちょっとしたズレとか、自分の弱さを隠すから出てくる怒りだったりとかを、全面に出せるようにしたいと思っていましたね。
古川くんが本番でいきなり踏んでくれたから、ニコの悲しみが表現できた
──ニコはゼラへの忠誠心がとても強いキャラクターゆえに、後半で抱く絶望感も人一倍だったかと思います。ゼラに裏切られるシーンはどのようなお気持ちで演じていましたか?
現場では古川(雄輝)くんとも仲よく話してはいたんですけど、そのシーンについてはほとんどしてなかったんです。だからぶっつけ本番というか。古川くん、テストではやってなかったんですけど、本番で急に僕の手を思いっきりバーン!って踏みつけて。
──えー!
もう、痛ーい!と思いながら(笑)。でもそれがすっごく悲しくて。あのシーンに関しては、古川くんが本番でいきなり踏んでくれたから、その悲しみが表現できたのかなって思います。
──仲のよかった共演者の方はいらっしゃいますか?
古川くんが一番仲よかったかなあ。現場でも同じシーンが多かったですし。古川くんも僕も、「ウェーイ!」って楽しめるタイプでもないので(笑)。
──隅っこに2人でいるような感じだったんでしょうか(笑)。
そうですね。空気が独特な現場でしたし。廃工場とか、ああいうセットが組まれた異様な空気感で、スケジュール的にもみんな相当しんどい中でやっていたので、ちょっと変になっちゃって、普段だったら絶対話さないこととか、いっぱい話した気がしますね。古川くんは今回が初共演だったんですけど、終わってからもよく一緒に遊んでます。
──最後に、原作ファンにメッセージをお願いします。
僕はもともと、いち原作ファンだったので、楽しみにしてらっしゃる皆さんの気持ちは一番よくわかると思うんですけど、やっぱり好きな作品が映像化されるのって、不安な部分もあると思うんですよね。マンガや小説って、自分の頭の中でイメージする部分が大いにありますから。ただ、今回の映画に登場するキャラクターの完成度は、間違いなく素晴らしいと僕は思っていて。マンガの、このコマとこのコマの間にこういう仕草をしていたんだろうと納得させられると思います。また違うストーリーの部分も、原作が好きであればきっと愛していただけるだろうなと思います。
──ニコが関わってくる部分で、原作と映画では異なるシーンがありますね。
これは僕の考えなので監督がどう思っていたかはわからないんですけど。マンガ的表現と映画的表現で違う部分というか、映画はファンタジーの中にリアリティがないと成立しづらいと思うんです。なので映画のリアリティとして、ああいう形で通したほうがリアルだったんじゃないかと。また違った側面の「ライチ☆光クラブ」が観られると思うので、原作ファンの方にも楽しんでいただきたいですね。
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「ライチ☆光クラブ」2月13日新宿バルト9にてロードショー、2月27日より全国拡大公開
工場から黒い煙が立ちのぼり、油にまみれた町、螢光町。この貧しい地の廃墟へ、深夜に集まる9人の中学生がいた。この秘密基地の名は「光クラブ」。光クラブのメンバーは醜い大人を否定し自分たちだけの世界をつくるため、兵器として機械(ロボット)を開発していた。巨大な鉄の塊で作られた機械が動く燃料は、永遠の美を象徴するライチの実。その機械は「ライチ」と名付けられ、悪魔の数列666でいよいよ起動する。ライチに与えられた目的は、光クラブに美しい希望をもたらす「少女の捕獲」。光クラブのリーダーであるタミヤ、実質的支配者のゼラ、ゼラを偏愛するジャイボと絶対的な忠誠を誓うニコ……光クラブ内でそれぞれの愛憎が入り乱れ、裏切り者探しがはじまる中、ライチはとうとう美少女・カノンの捕獲に成功する──。
果たして、少年が願う大人のいない永遠の美の王国は実現するのか……。
スタッフ / キャスト
監督:内藤瑛亮
脚本:冨永圭祐、内藤瑛亮
原作:古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」(太田出版)
配給・宣伝:日活
制作:マーブルフィルム
出演:野村周平、古川雄輝、中条あやみ、間宮祥太朗、池田純矢、松田凌、戸塚純貴、柾木玲弥、藤原季節、岡山天音 、杉田智和(声)
©2016『ライチ☆光クラブ』製作委員会
池田純矢(イケダジュンヤ)
1992年10月27日生まれ、大阪府出身。2006年、第19回ジュノンスーパーボーイコンテストで史上最年少準グランプリを受賞しデビュー。以後、数々の映画、ドラマに出演。近年は舞台にも活躍の場を広げ、「ベイビーさん~あるいは笑う曲馬団について~」「アヴェ・マリターレ!」などで主演を務める。