スフィアでよかった

──スフィアの皆さんは、「声優ユニットのパイオニア」とも言われています。結成当時、15周年を迎えるという想像はしていましたか？

高垣　スフィアが始まったときは、15周年を迎えるとも、迎えられないとも思っていなかったと思います。もう1つの人生がスタートしたという感覚で、必死で目の前のことに4人で向かっていったら、気付けば10周年を迎えていました。そこからの5年間は、世の中がコロナ禍になったり、美菜子がイギリスに留学をしたり、4人揃って同じ空間で何かをすることができない期間があって。マネージャーさんたちも含め、「今のスフィアができることはなんだろう」と、模索していましたね。その5年間で、また新たにスフィアを作り上げた感覚があって。今は率直に、15周年を迎えられてよかった、スフィアでよかった、と感じています。

豊崎　私はこの4人じゃなかったら、ここまで続いていなかったと思います。結成当初はとにかく必死で。特に最初の2、3年はありがたいことにたくさん楽曲のリリースやタイアップがあって、先を見据えることがあまりできていなかったんですね。でも10周年を超えてからの15周年は、「迎えられるだろうな」と確信していました。今はスフィアがない人生を想像できないし、スフィアあっての私です。

──2017年から2019年までは音楽活動の充電期間もありました。さらに2020年からは1年半にわたり、寿さんがイギリスへ留学しています。そのときどきでスフィアの今後について考えてきたと思いますが、寿さんは留学中、どんな思いを抱いていましたか？

寿　私はスフィアとしての動きを止めるつもりは一切なかったです。「3人がOKしてくれたら留学に行ける」と思っていたので、最初にメンバーに相談しました。もし引き止められて、留学するためにミュージックレインを辞めることになったら、4人でスフィアを続けられないだろうなと思って。

戸松　「行っちゃダメ！」って引き止めてたら、行かなかったのかな？（笑）でも「留学したい」と聞いて、私たちはあんまり驚かなかったよね。

高垣　いつか行くと思ってたから、「そっか、だよね！」って。

豊崎　反対する理由が1つもなかったからね。

寿　イギリスに行ってもラジオの収録にリモートで参加するということは決めていたんですが、コロナ禍になり、結果的に世間的にもリモート収録が浸透して。メンバー全員がスムーズに移行できましたね。そしてコロナ禍の間には、スフィアでYouTubeを始めたことも新たな扉になりました。もしコロナ禍がなければ、3人がイギリスに来たり、イベントに出演したりできるかなという夢も描いていたんですけどね。

豊崎　冬休みを使ってみんなでロンドンに行こうって、話してたんだよね。

高垣　行きたかったなあ！

寿　来てほしかった！

高垣　次第に、離れているからこそスフィアとして楽曲をリリースしたいという思いが募って、初の配信シングル「スクランブルデイズ」を2021年にリリースしました。美菜子の歌はイギリスでレコーディングして、MVとジャケット写真は、それぞれの家で撮影した写真と動画を組み合わせて。さらにファンの皆さんから寄せられた写真と映像も使わせてもらい、あのときしか作れない作品を一緒に生み出せました。

──この5年の間には、結婚や出産といった私生活における変化もありましたね。そうした変化を経験しながらもユニットとして歩み続けている姿は、皆さんの背中を見て進む後輩たちにも影響を与えているのではないかなと思います。身近なところではTrySailさんやミュージックレイン3期生がいらっしゃいますが、後輩からはどんなふうに見られていると感じますか？

豊崎　後輩ちゃんたちからよく言われるのは、「本当に仲良いんですね」って。

全員　あははは！（笑）

高垣　それ、スフィアとしてデビューした頃、先輩からもよく言われてたよね（笑）。

豊崎　うん（笑）。結成した頃から、4人がそれぞれ吸収してきたものを4倍にして届けるイメージで活動してきたし、やりたいことは根本的にブレてなくて。留学や結婚、出産という人生経験も、すべてのことが無駄じゃなくて、何かしらスフィアに生きていると思います。こういう言い方は怒られてしまうかもしれませんが、仕事と遊びの間みたいな感覚があるんです。いや仕事なんですけど……スフィアはギリギリ遊びのような感覚で（笑）。そんなスタンスだから、続けられているところはあるかもしれないですね。

戸松　私は……後輩に示せることはないというか、人に教えたり引っ張っていくタイプではないんです。「こんな大人になっちゃダメだよ。反面教師にしてね」と冗談で教えるときもありますし（笑）。マネージャーさんには「戸松さんは教えなくていいです。一緒にアフレコに参加することで見せられることがあると思います」って言われて。それはどういう先輩なんだろう……って、自分でもよくわからないんですけど（笑）。

豊崎　カリスマだよ、カリスマ！

戸松　（笑）。「ユニットはこうやって続けていくんだよ」「声優ってこうするんだよ」なんてことを後輩に言ったことは一度もないんですけど、「私たちはこんな感じだよ」というスフィアのやり方を見せていけたらいいなと思います。

寿　そういえば、3期生が「MOON SIGNAL」をカバーしてくれたときに、私が振付をレクチャーしたんです。そのときに昔の映像を見せたら、3期生がみんな「戸松さんかわいい！」って盛り上がっていたの。

戸松　え、ちょっと、いつの私!?（笑）

寿　はるちゃんはカリスマ性があるんだな、とそのときに思ったな。あと、「スフィアさんの熱量にはいつも圧倒される」とも言ってくれてね。私たちの熱量やパワフルさはちゃんと伝わっていたんだと実感できました。3期生の5人がスフィアを超えるくらい素晴らしい形で「MOON SIGNAL」をパフォーマンスしてくれたときは、涙が出るくらい感動して。スフィアが歌っていない期間も、こうして誰かが歌ってくれるのは「MOON SIGNAL」も幸せだろうし、曲を聴けて幸せな人もいるだろうなって。

戸松　うれしいねえ……。

形に残るプレゼントを贈れる年にしたい

──15周年のアニバーサリーとなる今年は、さまざまな企画を用意されていると思います。2月に行われた「LAWSON presents スフィア チョコ祭り2024 supported by スフィアポータルスクエア」では、新曲を制作することも発表しましたね。

高垣　「スクランブルデイズ」以来の新曲ですが、「スクランブルデイズ」はジャケットもMVも各々撮影したので、4人揃って制作に臨むのは久しぶりで、ワクワクしています。15周年だからこそできることを届けたいですね。

戸松　いよいよ動き始めたなという感じですね。コロナ禍で思い通りに動けない状況が続いたので、本格的に始動することがうれしいです。みんなが積み上げてきた経験値や、考え方の変化を突き合わせて、新たなものを制作して行くことが楽しみ。新曲についてはまだ具体的にはお伝えできないですが、待ってくださっている方々に、お届けできるものを今年は少しでも増やしていきたいです。

寿　新曲では4人のどんな面を見せられるのか、自分も楽しみです。そしてリリースに伴って、皆さんに会える機会が作れたらよりうれしいですね。

豊崎　アニバーサリーイヤーというのは、応援してくださっている方に「ありがとう」をいろんな形で届けるべき期間だと思っているので、形に残るプレゼントをいろいろと贈れる年にしたいというのが第一の目標です。私たちはファンの皆さんを勝手に“5人目のスフィア”と呼んでいるんですが、そんな皆さんに、15周年を楽しんでいただけるワクワクする仕掛けを企画している最中です。十分すぎるくらいいろんな景色を見てきたんですが、それでも叶えてない夢もまだたくさんあって。個人的には、はるちゃんがデビューの頃からずっと言っている「空を飛びたい」という夢がまだ叶っていないので、どこかで空を飛びたいです。

戸松　うわー！ ひさしぶりに聞いたよ、それ。「夏色キセキ」の第1話じゃないか！

高垣　本当だね、まだ飛んでない！

豊崎　そんなふうに、叶えていない夢を一緒に叶えて、まだまだ新しい景色を届けられたらいいな。1個ずつ形にしてプレゼントしていくので、楽しみに待っていてください！

写真でロケを振り返り