「あめだま」アカデミー賞ノミネートの裏側語る、西尾大介監督は現場の“粘り強さ”に感服

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アカデミー賞短編アニメーション部門にもノミネートされた「あめだま」の舞台挨拶が、本日3月9日に東京・新宿バルト9で開催された。イベントには主演を務めた嶋陽大をはじめ、監督の西尾大介、アニメーションプロデューサーを務めた西川和宏、プロデューサーの鷲尾天、音楽の佐藤直紀、原作のペク・ヒナが登壇した。

短編アニメ「あめだま」舞台挨拶の様子。左からペロ、音楽担当の佐藤直紀、鷲尾天プロデューサー、原作者のペク・ヒナ、主演を務めた嶋陽大、監督の西尾大介、アニメーションプロデューサーの西川和宏。

短編アニメ「あめだま」舞台挨拶の様子。左からペロ、音楽担当の佐藤直紀、鷲尾天プロデューサー、原作者のペク・ヒナ、主演を務めた嶋陽大、監督の西尾大介、アニメーションプロデューサーの西川和宏。

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「あめだま」は東映アニメーション製作のフルCG短編アニメ。韓国の絵本作家であるペク・ヒナの作品が原作で、ひとりぼっちの少年・ドンドンが、心の声が聞こえる不思議なあめだまを手に入れるところから物語が展開される。「プリキュア」シリーズ第1作「ふたりはプリキュア」に携わった西尾監督、鷲尾プロデューサー、音楽の佐藤が再び集結した。アカデミー賞短編アニメーション部門の受賞は惜しくも逃したが、東映アニメーションの作品が初めて米アカデミー賞にノミネートされた。

監督の西尾大介。

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西尾監督はアニメを丸々一本担当するのは久しぶりだったこともあり、二の足を踏んでいたことを明かす。一方で、原作を読んだり韓国チームとのやりとりをしたりする中で、いつの間にかやる気になっていたという。「まずいと思った(笑)」と冗談めかしながら、「やるしかない状況まで自分を追い込んでいっていたんだなと思います」と監督を引き受けた経緯を伝えた。そのうえで「いろんな人に観てもらうのが僕たちは一番うれしいので、これからもよろしくお願いします」と笑顔で呼びかけた。

主演を務めた嶋陽大。

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米アカデミー賞ノミネートの瞬間は、制作チームで集まって配信を見ていたそう。西尾監督はタイトルが読み上げられたことには気づいたそうだが、実感がなく、一拍置いてスタッフが喜んだのを見て実感が湧いてきたことを振り返り「本当に信じられない気持ちですよね。制作中もそんなことは考えてなかったので。まるっきり現実味がなかった」と当時の心境を伝えた。

佐藤直紀

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米アカデミー賞の会場に足を運んだ佐藤と嶋からは現場の雰囲気が伝えられる。佐藤は「格式高く、重厚感、緊張感があった」と第一印象を伝える一方で、「いざ授賞式が始まるとライブ会場のように盛り上がって、僕がテレビで観てきたアカデミー賞だなと思ってすごく興奮したのをよく覚えています」と笑顔で語る。嶋は「何もかもがキラキラしていて、ドキドキワクワクしていたんですけど、会場はパーティみたいで皆さんの熱気が伝わってきて、すごくきれいだなと思いました!(笑)」と年相応な感想を述べて、会場を和ませる。続いて「夢がレッドカーペットを歩くことだったので」と話すと、横にいた西尾監督が「夢終わっちゃった(笑)」とすかさずツッコミ。それを受けて嶋は「次の夢はレッドカーペットを歩いて受賞するところまでいきたいなと思います」と宣言して観客を唸らせ、大きな拍手を浴びていた。

アニメーションプロデューサーの西川和宏

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制作は2023年の頭頃からスタートしたと明かすのは西川プロデューサー。制作過程で印象に残っていることとして、実際に韓国へ赴いたことを挙げる。コンテを見せたり、ロケハンしたりと暗くなるまで熱心な制作の準備が進められたことを明かした。真面目な話が続く中、最後には西尾監督が犬のふんを踏んづけたという話題で笑わせ、制作チームの仲のよさが垣間見えた。

また西川プロデューサーは「制作チームが西尾監督の指示をもとに粘り強く作ったなと横から見ていたので、そこが作品に伝わって心に届くものになったのかなと思います」と制作の裏側を明かす。西尾監督も「ペクさんたちとの意見交換の密度の濃さは久しぶりに体験しました。それはとてもよかったです。絵のほうにもフィードバックされていますし、手探りをしながら自信を持って提出することができた。各セクションの担当者1人ひとりの粘り強さに感服しました。目を見張るくらい緻密に粘り強くやっていたと思う。舵取りをしてくれた西川くん、ダンデ(ダンデライオンアニメーションスタジオ)のメンバーには感謝しています」と西川プロデューサーと同じく“粘り強い”というワードを出しながら制作陣に賛辞を贈った。

原作者のペク・ヒナ。

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ペクは当初、粘土で人形を作ってイメージを膨らませながら絵本を制作していたそう。映像化の話が来た当初、3DCGで制作したいと伝えられ、自身の作品のアナログのよさが伝わるか心配があったと明かす。「鷲尾さんが直接キャラを作ってくるので、それを見てから決めてくださいとおっしゃってくださって。実際に見せてもらいました。細かいディティールまでできていて。フィードバックも反映してくださっていたので、映画化を快諾しました」と制作の熱意を感じたことを伝えた。また制作陣と粘り強く意見を出し合ったことを回想しつつ作品を絶賛。素晴らしい作品の完成、米アカデミー賞のノミネート、この日の舞台挨拶を指し「すべての過程が魔法のようだと感じています」と笑顔を見せた。

鷲尾天プロデューサー

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最後の挨拶では嶋が「僕は思っていることを話したり伝えたりすることがあまり得意ではないのですが、この作品の中で、話す勇気を持てました。皆さんもこの作品を観て何かを見つめるきっかけになってくれたらうれしいなと思います」とメッセージを伝える。鷲尾プロデューサーは海外原作の作品を作るのは初めてだと明かし「韓国語、日本語、英語、いろんな言語が飛び交うんですね。そんな中で作品を評価してもらえたことが本当にうれしかったですし、スタッフの皆さんがうれしそうにしているのを見て作ってよかったなと思いました」とコメント。「嶋くんの挨拶に感動して涙が出そうに……」と話し始めた西尾監督は「賞をもらったからうれしいというよりは、いろんな世界の人に認めてもらえたという考えが強くて。そこで作ってよかったなと思えました。もっといろんな地域でもっといろんな人に見てもらいたい」と今後の展開にも期待を寄せた。「あめだま」は2月28日より2週間限定で劇場上映中だ。

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「あめだま」(英題:Magic Candies)

スタッフ

原作:ペク・ヒナ
監督:西尾大介
プロデューサー:鷲尾天
音楽:佐藤直紀
アニメーションプロデューサー:西川和宏
CGスーパーバイザー:清水剛吏
アートディレクター:江場左知子
製作:東映アニメーション株式会社
アニメーション制作:ダンデライオンアニメーションスタジオ

キャスト

嶋陽大、岩崎ひろし、山路和弘、雨蘭咲木子、渡辺いっけい、大井希心、長谷川義史(特別出演)

(c)Baek Heena, Toei Animation

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