押井守が今敏を「最高のパートナー」、20周年の復刊ドットコムと歩みを振り返る

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復刊ドットコムの創立20周年を記念した記者発表会が、本日10月10日に東京都内で開催。イベントではトークショーも行われ、ゲストとして押井守が登壇した。

左から押井守、復刊ドットコムの代表・岩本利明氏。

左から押井守、復刊ドットコムの代表・岩本利明氏。

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復刊ドットコム創立20周年記念の記者発表会より。

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TSUTAYA事業などを展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループに所属し、国内唯一の復刊リクエストサービス・復刊ドットコムを運営する同社。現在の累計会員数は50万人、累計リクエスト投稿数は88万件となり、これまで多くの作品を復刊してきた。20年間の売り上げランキングの1位は、藤子不二雄(A)「新編集 怪物くん」シリーズだという。

復刊ドットコムの新たなロゴ。

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イベントでは同社の今後の展開として、創業時から続いてきたロゴを刷新することを発表。また20周年を迎えるにあたり、多数のマンガ家などから寄せられたお祝いのコメントを用いたカレンダーを制作する。カレンダーの協力者には押井のほか、手塚プロダクションや水木プロダクション、松本零士、鈴木敏夫、谷川俊太郎らが名を連ねた。

さらに20周年を記念し、復刊ドットコムにおける復刊第1号作品「かくれちゃったのだぁれだ」、出版刊行第1号作品「ダルタニャン物語」、そしてリクエスト総投票数第1位作品「ブラック・ジャック大全集」の3作品を再復刊し、発売することも告知。各書店では同社で復刊した書籍を対象とし、1回の購入につき税別5000円以上購入した人に「20周年カレンダー」が先着で進呈される。開始時期は11月初旬の予定だ。

左から大野修一氏、押井守、岩本利明氏。

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復刊ドットコムの代表・岩本利明氏から同社の歩みと今後の取り組みについて説明があったあと、トークイベントがスタート。壇上には岩本氏と押井、進行役として編集者の大野修一氏が並ぶ。押井はこれまで刊行してきた自身の著書について「僕はベストセラーの類は1回もないんです。そこそこだったんですよ(笑)」と自虐しながら、復刊ドットコムからも復刻された「METHODS ~押井守『パトレイバー2』演出ノート」についてコメント。アニメーション制作にまつわるノウハウをまとめた本書について「僕はアニメ業界の中で、かなり恵まれた立ち位置で仕事をしてきたんです。宮さん(宮崎駿)みたいに絶えず大成功を期待されてる立場じゃなかったし、やりたいことをやりたいようにしかやってこなかった。言ってみれば、アニメ業界には借りしかなかったんです。たぶん業界自体からも『おいしいとこ全部持っていきやがって』と思われてたはず。だから僕の中では、業界にご恩返しをしとこうって。現場の演出家とかアニメーターに対する教科書のつもりでこの本を作りました」と説明した。

「セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》」

「セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》」[拡大]

ここで復刊ドットコムより10月中旬に刊行される、押井守と今敏が手がけた「セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》」の話題に。本作は連載が1年を超えた頃に押井と今の対立が表面化し、押井の著者表記が“原作”から“原案”に変更された。その後、物語は未完のまま連載終了。単行本は雑誌連載から15年の時を経て、今が46歳という若さで亡くなった2010年に追悼企画として出版された。

押井守

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押井は「今ちゃんとケンカ別れしなかったとしても、大風呂敷を広げすぎて話が終わらなかったんだろうなって気もしてるんです。今、僕が今ちゃんについて語るのは本当言うとフェアじゃないですね。相手が死んじゃったから。今ちゃんには今ちゃんの言い分が絶対あっただろうし。でも人間同士がイーブンで仕事をするってのはやっぱり難しいなと。難しいというか不可能だと思い知らされた仕事でもありますね。僕がマンガ原作を7、8本。もしかしたら10本近くやってると思うんだけど、それだけマンガ原作の仕事っていうのは楽しみがあるんですよ。どういう絵描きがどういう絵にしてくれるか。その意味合いで言えば、今ちゃんというのは最高のパートナーだった。自分の物語にふさわしい絵を添えてくれた。でも今ちゃんから言えば、添えるという作業が苦痛であったという。物を作る人間っていうのは、自分がトップでなければ納得できないというね。どうにもならないです。人間たちのことなので」と言及。増補復刻版には押井が42歳、今が30歳だった頃の写真が収録されていることについて担当編集の大野氏が触れると、押井は「まだ若造でしたね。若気の至りといえばそれで終わりなんだけど、若いときにやった仕事としては誇りが持てる。いい仕事をしたって思ってるし、今でも全然古くなってない。今こそ読むべき物語になってるという自負があります」と語った。

イベントの終盤、押井は若い映画監督が本を読まなくなっていると感じると話し「あらゆる表現行為の根本にあるのは本だと思います。読んだ物の総量でその人の表現を決定する」と持論を展開。「本っていうのはタイムカプセルみたいなものです。10年後か20年後かに必ず役に立つ。そして本というのは借りるものじゃなく、自分で買うもの。自分の目で選んだ本を読書するべきだと思うし、そうしてきた僕は間違ってなかったと思う」と述べる。また押井は本にかなりの金額をつぎ込んだそうで「僕も本のローンから自由になったのは15年前ぐらいですよ」と笑いながら明かし、和やかな雰囲気でイベントは幕を閉じた。

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