NORIKIYO絶唱「諦めないでよかった」

NORIKIYOが8月31日に東京・LIQUIDROOM ebisuにてワンマンライブ「NORIKIYO『花水木』Tour Final」を実施した。

NORIKIYOのワンマンライブが都内で実施される機会が少ないこともあり、満員御礼となったLIQUIDROOMは開演前からただならぬ熱気が立ちこめていた。客電が消えると、観客たちは満を持して登場したNORIKIYOとバックDJのDEFLOを大歓声で出迎える。2人はアルバム「花水木」の1～2曲目の「日陰に水を」「瞬き」からライブをスタートさせると、観客も最初から手を上げてNORIKIYOの一挙手一投足に応えていった。

「ようこそ、みんな！」「今日はみんなを楽しませるためにステージに立ってるんだ。もっとガンガン来ちゃってもいいよ。『NORIKIYOのワンマン、ヤバかったよ』っていう夜にみんなでしたいと思わない？ それで、ここに来なかったやつに言ってやろうぜ……」とNORIKIYOが話すと、DEFLOが「残念です」のトラックをスピンして観客とともに「誰のせいでもねえ、てめえのせい / 少なくとも俺には関係ねえ」というパンチラインをみんなで大合唱。その後SHINGO★西成と田我流が「仕事しよう（REMIX）」で登場して、場内のテンションが一度目のピークを迎えた。

「懐かしい曲で自己紹介」という短いMCから始まったのは2ndアルバム「OUTLET BLUES」からのナンバー「折れ鼻のメガネ」と、盟友・BRON-Kとともに歌った「RIVAXIDE CITY DREAM」。続けて神奈川・相模原のクルー・SD JUNKSTAのWAXとOJIBAHも登場して「人間交差点～風の街～」を届けた。自分の過去について歌った「PYRAMIRE」「23時各駅新宿」の後、NORIKIYOは「今の俺にとってのステージはもうストリートじゃなくて、ここ、この場所です」と自身が立つ舞台を指差して力強く語った。「アトラクション」ではWATT a.k.a. ヨッテルブッテルとサイプレス上野をフィーチャー。サイプレス上野は赤いマウンテンパーカーを頭からすっぽり被ってステージに現れるも、少しするとステージからいなくなってしまう。困惑する観客を尻目に自身のヴァースの直前に再登場。マウンテンパーカーを脱いで、極太のモヒカン刈りをあらわにし、観客から喝采を浴びた。

ここからは諭吉レコーズの新星・WATTのミニステージ。ラップはもちろん、トラックメイキングもこなす彼は、アルバム「Shikou品」収録曲など5曲をプレイした。歌うようなフローとステージアクションで、先輩不在のステージを堂々と守りきった。

後半戦の始まりもいきなりフルスロットルで、「自問自答」「10カ年計画」「Do My Thing」を畳みかける。続く「R.I.P」「GO HOME」「で、誰だっけ？」「ソレってどう？」は、現状の日本語ラップシーンへの思いを歌ったナンバー。「R.I.P」歌唱前に話した「ヒップホップがレゲエやロックに負けない音楽だと信じてる」というNORIKIYOの考えに同調するかのように、観客も各曲のパンチラインでは大きく声を上げた。続く「皿に毒盛る料理店」は「更に毒盛る料理店」へつながり、般若が舞台に。夏らしい浴衣にハットというユニークな装いで場内をどよめかせた。「運命」を2人で歌ったあと、般若は「来てくれたみんなに謝らなければならないことがあるんですよ。今日、出演予定だったSAY、私の妻なんですけど、昨日出産しました。……なので今日はスイマセン！」と告白すると、観客からは温かい声援と拍手が送られた。

「僕は別に不良なんかじゃなかったんですよ。でもすごくずるい人間で。そんなやつがヒップホップに出会って『いつかこの音楽でご飯食べられたらいいな』って思うようになりました。中途半端なことやって警察のご厄介になったこともあったけど、今はそういうのも止めてヒップホップに夢中。そんな曲です」とPUNPEEをフィーチャーした「待ちぼうけ」をパフォーマンス。「皆さんご存知、ラップもトラックもイケてる板橋のメガネこと、PUNPEE」とNORIKIYOから紹介される。しかしPUNPEEは「もうNORIKIYOくん、待たせ過ぎ」と自分の出演時間が遅いことにご立腹の様子。「あまりに待ち時間が長いからカッコいいメガネを買ってきちゃった」と黒ぶちメガネから、レンズの淵にライトが装着されたサイバーなグラスに掛け替える。会場から爆笑が起こると、前半で披露された「今夜はParty」のリミックスバージョンへとなだれ込んだ。もちろん客演にはSALUと遊戯も登場。一層豪華になったステージで、ラップ巧者たちがマイクリレーを繰り広げた。

そして「秘密」「夜に口笛」といったメロウなナンバーではミラーボールが回り、ロマンチックな雰囲気に。笑顔があふれるフロアを見渡してNORIKIYOは「本音を言うとこんなたくさんの人が来てくれるとは思ってなくて、ホントにうれしいです。今日のことは一生忘れません。ありがとう」「俺らの音楽が面白いって雑誌とかで取りあげられてから14年も経ってるんだよね。マジで諦めないでよかったと思ってるよ」と語り本編最後の曲「ロンリーロンリーロンリー」を届けた。

熱烈なアンコールからステージ再登場したNORIKIYOは、現在シーンにいないラッパー・BESとの共演曲「2 FACE」を歌った。BESがラップする最後のヴァースはNORIKIYOが担当し、サビでは大きな合唱が巻き起こった。続く「LIGHT AND SHADOW」ではAKLOも登場。最後の曲は「一網打尽」。韻踏合組合のSATUSSY、HIDADDY、遊戯、ERONEが大挙して現れる。強烈なマイクリレーで観客のテンションを高めると、そこにSHINGO★西成も参加して火に油を注いだ。割れんばかりの歓声がステージに向けられる中、NORIKIYOは今日最後のゲスト、MC漢を呼び込む。漢が悠々とステージに現れると場内はこの日最高潮の盛り上がりを見せた。

まさに狂乱とも言える歓声のあと「ありがとう、さようなら」でピースな雰囲気を作り、NORIKIYOは自身のこれまでの道のりの集大成とも言えるショウを締めくくった。