「インセプション」「インターステラー」などで知られるクリストファー・ノーランの監督最新作「ダンケルク」が、9月9日に公開される。本作は、第2次世界大戦時のフランス・ダンケルクを舞台にしたタイムサスペンス。ドイツ軍に包囲された英仏連合軍の兵士40万人を救出する作戦が、陸海空3つの視点で映し出される。
ナタリーでは「ダンケルク」の魅力を紐解く特集を展開。第1弾となる映画ナタリーでは封切りに先駆けて、映画評論家の町山智浩がノーランに実施したインタビューを掲載。本作に影響を与えた映画作品や、映画初出演のハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクション)を起用した理由、そして本物の戦艦や戦闘機を使用した撮影時のエピソードが語られる。
取材・文 / 町山智浩
重力を操作、時間と空間をつなぐ……独創的なアイデアと映像美で観客を驚かせ続ける、クリストファー・ノーランの過去作をおさらい!
クリストファー・ノーラン フィルモグラフィ
1998年 | フォロウィング |
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2000年 | メメント |
2002年 | インソムニア |
2005年 | バットマン ビギンズ |
2006年 | プレステージ |
2008年 | ダークナイト |
2010年 | インセプション |
2012年 | ダークナイト ライジング |
2014年 | インターステラー |
ダークナイト シリーズ
インセプション
クリストファー・ノーラン インタビュー
観客をダンケルクの戦場に連れて行く
──ダンケルク作戦を映画にしようと思ったきっかけは?
25年前です。イギリスから友達と一緒に9mもない小さな船でドーバー海峡を渡ってフランスに行ったんです。8時間で渡れると予測していたんですが、思ったよりずっと大変でした。非常に危険で、激しく揺れるし、実際には19時間もかかり、人生でもっとも過酷な体験の1つでした。ダンケルク撤退のときと違って空から攻撃されないにもかかわらず。その記憶が私に「ダンケルク」を作らせたんです。
──25年前というと、初の長編映画「フォロウィング」の前ですね。
はい。それから少しずつ構想ができあがっていきました。自分はいつも過去の自分の作品とはギャップのあること、違うことに挑戦しようと心がけてきましたが、今回は自分にとって初めて事実をもとにした映画になります。
──ダンケルク作戦は今までも何度か映画化されてきました。今回の映画化の狙いは?
観客を第2次世界大戦のダンケルクの戦場に連れて行くことです。観客を戦闘機のコックピットに乗せ、小さなボートに乗せて海中に沈め、砂浜を空から追われる壮絶なカオスを体感させるのです。ダンケルクの兵士たちの体験は今までも映画の中で小さく描かれたことはありましたが、今回のようにそれだけで1本の映画にはなっていないと思います。
──戦史や戦局を描くのではなく、個々の兵士を観客に体感させる映画なんですね。
ただ、兵士にも陸海空の局面があります。ドイツ軍によってダンケルクの海岸に追い詰められた陸軍の歩兵たち。彼らを脱出させる海軍。ドイツ軍の空からの攻撃から歩兵たちを守る戦闘機乗り、この3つです。この3つを並行して描きながらクライマックスに向かいます。
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本当の敵は迫り来る時間
- 「ダンケルク」
- 2017年9月9日(土)全国公開
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1940年、海の町ダンケルク。フランス軍はイギリス軍とともにドイツ軍に圧倒され、英仏連合軍40万の兵士は、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められた。陸海空からの敵襲に、計り知れず撤退を決断する。民間船も救助に乗り出し、エアフォースが空からの援護に駆る。爆撃される陸・海・空、3つの時間。走るか、潜むか。前か、後ろか。1秒ごとに神経が研ぎ澄まされていく。果たして若き兵士トミーは、絶体絶命の地ダンケルクから生き抜くことができるのか!?
「史上最大の撤退作戦」と呼ばれたダンケルク作戦に、常に本物を目指すクリストファー・ノーランが挑んだ。デジタルもCGも極力使わず、本物のスピットファイア戦闘機を飛ばしてノーランが狙ったのは「観客をダンケルクの戦場に引きずり込み、360°全方位から迫る究極の映像体験」!
- スタッフ / キャスト
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監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
音楽:ハンス・ジマー
出演:トム・ハーディ、マーク・ライランス、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、ハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクション)、フィン・ホワイトヘッド
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- クリストファー・ノーラン
- 1970年7月30日生まれ、イギリス出身。映画監督。1998年に「フォロウィング」でデビューして以降、「メメント」「インソムニア」など話題作を立て続けに発表した。2010年公開の「インセプション」は、第83回アカデミー賞にて撮影賞をはじめとする4つの賞を獲得。
2017年9月7日更新