忍者アクション時代劇「SHOGUN'S NINJA-将軍乃忍者-」が、Prime Videoチャンネルの時代劇専門チャンネルNETで配信されている。山田姫奈と宮原華音が主演し、数々の特撮作品を手がけてきた坂本浩一が監督・アクション監督を担う本作。風魔忍者の一族の末裔である
本作と同じく、坂本と日本映画放送がタッグを組んだ2019年の「BLACKFOX: Age of the Ninja」は海外向けのYouTubeチャンネル「SAMURAI VS NINJA」で1700万回再生を記録。この「SHOGUN'S NINJA」も「SAMURAI VS NINJA」で配信中だ。国内外で「SHOGUN 将軍」や「侍タイムスリッパー」といった作品が注目を浴びる昨今、全世界をターゲットとした新たなる時代劇が誕生した。
映画ナタリーでは今回、ダブル主演の山田と宮原、監督の坂本の座談会をセッティングした。坂本が「時代劇視聴のハードルを下げたかった」という本作の狙いや、アクションを得意とする山田・宮原の目線から戦闘シーンの見どころなどを語ってもらった。また本作には特撮と縁の深いキャストやスタッフが多いということで、ドラマ化もされた「トクサツガガガ」で知られるマンガ家・丹羽庭も座談会に参加。さらにはイラストも描き下ろしてくれた。
取材・文 / 桐沢たえ撮影 / 笹井タカマサ
「SHOGUN'S NINJA-将軍乃忍者-」プロモーション映像公開中
「SHOGUN'S NINJA-将軍乃忍者-」の主人公は、風魔忍者の一族の末裔として江戸の町で萬屋を営む篝火とお喬。篝火を「ウルトラマンブレーザー」アオベ エミ役の山田姫奈、お喬を「仮面ライダーガッチャード」クロトー役で知られる宮原華音が演じている。このほかにも本作には特撮経験者が多数出演している。“町一番の娘”お蘭役に「魔進戦隊キラメイジャー」ヨドンナ役の桃月なしこのほか、「仮面ライダーガッチャード」の谷口布実、「妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク」の長野じゅりあ、「ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA」の寺坂頼我と高木勝也、「仮面ライダージャンヌ&仮面ライダーアギレラ withガールズリミックス」の文音、「ウイングマン」でウイングマンのスーツアクターを担当した橋渡竜馬らがキャスティングされた。さらに「忍者戦隊カクレンジャー」サスケ / ニンジャレッド役の小川輝晃、“ミスター平成仮面ライダー”として知られる高岩成二といったレジェンド陣も集結した。
私、もともと坂本監督作品がけっこう苦手だったんです(丹羽)
──本日は坂本監督とダブル主演のお二人、そして「SHOGUN'S NINJA」が特撮ファンにも観てもらいたい作品ということで、その代表として特撮オタクOLの日常をつづったマンガ「トクサツガガガ」の著者、丹羽庭先生を交えてお話をしていただく座談会となっています。
丹羽庭 いやー、特撮にわか代表でお願いします……。
坂本浩一 いやいや(笑)。今日は本当に先生と特撮の話がしたかったんです! 実は「(忍者戦隊)カクレンジャー」鶴姫役の広瀬(仁美)さんが先生の大ファンで。このあと、よかったらサインをいただいてもいいですか?
丹羽 えっ! そうだったんですか!? ありがとうございます! もう全然、何枚でも書きます!
山田姫奈 私もウルトラマンゼロが大好きなので「トクサツガガガ」の主人公の仲村さんの気持ち、めちゃくちゃわかります。
──「特オタあるある」が詰まってますよね。さて、丹羽先生には事前に「SHOGUN'S NINJA」を観ていただきましたが、まず率直な感想をお聞かせください。
丹羽 私の中で坂本監督と言えば「爆発する」ってイメージなんですけど(笑)。やっぱり時代劇だし、爆発はしないかな?と思ったら2回くらい……。
坂本 しました! 「こいつ、やっぱり爆発させたな」って感じですよね(笑)。
──丹羽先生は主演のお二人の出演作などはご覧になっていましたか?
丹羽 はい。お二人とも特撮で観たときとまた印象が違って。宮原さんは「仮面ライダーガッチャード」のときは髪も引っ詰めて「お姉ちゃん」って感じでしたが、お喬は篝火と対等な姉妹のような掛け合いをしているのが楽しかったです。あと後半はお二人ともけっこうハーフマスクを着けているシーンが多かったんですけど、顔が出なくていいのかなって(笑)。
宮原華音 そうなんですよ! 「ガッチャード」のクロトーレビスも「妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク」のときもマスクを着けていて、私、最近マスクキャラが定着してるんです(笑)。
丹羽 でも目力が強いので隠れてても全然大丈夫でした!
坂本 そうそう。別に華音の顔を隠そうとしてるわけじゃないから(笑)。ちなみに先生は特撮ではどの作品が好きなんですか?
丹羽 私は「(特命戦隊)ゴーバスターズ」と「(超人機)メタルダー」ですね。
坂本 おおー、シブいですね! 自分はてっきり(「トクサツガガガ」に登場する架空のヒーロー・)シシレオーやエマージェイソンのデザインからして「(獣拳戦隊)ゲキレンジャー」や「(特捜ロボ)ジャンパーソン」がお好きなのかと思っていました。
丹羽 「ジャンパーソン」もめちゃめちゃ好きです!
──坂本監督作品でお好きなものはありますか?
丹羽 あのー、本当に失礼な話をすると、私、もともと坂本監督作品がけっこう苦手だったんです……。
坂本 そうだったんですね(笑)。
丹羽 というのも、「ゴーバスターズ」から特撮にハマったので、その次の「(獣電戦隊)キョウリュウジャー」がめちゃめちゃ人気なのを見て「クッソー!」って(笑)。あとお色気の感じも当時は苦手だったんですけど、友人に「坂本監督作品はウルトラマンもお薦めだよ」と言われて観たらすごくよくて!
坂本 ありがとうございます! ちなみにそのときは何を観たんですか?
丹羽 「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」ですね。やっぱり監督は脚をかっこよく撮られるので、ウルトラマンとすごく相性がいいなと思いました。
坂本 ありがとうございます! 「トクサツガガガ」でもスーツアクターのお尻の話があったと思いますが、ウルトラマンの岩田(栄慶)くんというスーツアクターがお尻がきれいで有名なんですよ。
「坂本さんのアクションってこういうことかも!」ってつかんだタイミングがあったんです(山田)
──では、次に坂本監督に本作の立ち上げについて伺いたいと思います。2019年に公開された「BLACKFOX: Age of the Ninja」が海外でヒットしたことが今作につながったそうですね。
坂本 もともと「時代劇を観る敷居を下げたい」という狙いがあったんです。自分たちが子供の頃は普通にゴールデンタイムで時代劇が放送されていました。でも最近は時代劇を観る敷居が高いというか、お年寄りが観るものだとか、ちょっと構えてから観る感じに思われがちで、それを打破したくて、アクションに特化しつつ構えなくても観られる時代劇を作ろうとなったのが「BLACKFOX」なんです。そうしたら「BLACKFOX」が国内だけでなく海外で非常に人気が出て、配信が始まったら1700万再生超えのすごい記録が出ているんです。海外のほうでもちょうど忍者がブームになっていたりとか、今特撮がアジアですごく熱いので、そういうタイミングで忍者と特撮が合わさった「BLACKFOX」が評価されたんじゃないでしょうか。そんな中で日本映画放送さんから「海外に向けてまた新しい時代劇アクション作品を作りませんか?」というオファーがあったんです。ヒロインが主役で、アクションがある時代劇で、それでいて特撮関連のキャストも出ているものをやろうと。そこから「SHOGUN'S NINJA」の企画が立ち上がった感じですね。
──主人公がヒロインというのは坂本監督側からのご提案だったんですか?
坂本 実は自分じゃないんですよ(笑)。海外でウケる条件ってわけじゃないんですけど、「BLACKFOX」然り、今海外は「スター・ウォーズ」シリーズにしてもマーベルシリーズにしてもヒロインが主人公の作品が多いじゃないですか。やっぱり世界的に「強い女性」の人気が広がっていて、皆さんのニーズに応えるというところで、今回もヒロインがメインというのは最初の打ち合わせのときに決まりました。
──そのほかに海外で展開するうえで意識した部分はありますか?
坂本 一番はリズムですね。映画を観ているときのリズムを自分は重要視しています。昔ながらの時代劇は引いた画を長回しで撮ることが多く、カット数も少なく落ち着いた感じに見えると思います。でも今回の作品もそうですが、自分は編集でカットをポンポン変えてリズムを作り、今の人たちにも観やすくしています。特に海外の人たちはリズムよく物語が進行すると一気に観てくれるので、それはすごく意識しました。
──坂本監督はもともと時代劇はお好きなのでしょうか?
坂本 はい! もちろんです。1970~1980年代は千葉真一さん、志穂美悦子さん、真田広之さんを中心とするJAC(ジャパンアクションクラブ)が活躍していて、テレビをつければ「影の軍団」シリーズ、「柳生十兵衛あばれ旅」、映画では「忍者武芸帖・百地三太夫」から始まって「魔界転生」「伊賀忍法帖」までアクション活劇と呼ばれる時代劇がいっぱいあったので、子供の頃はそれを観て育ちました。自分の中では時代劇と特撮番組とジャッキー・チェンは同じ「ヒーロー」というジャンルでした(笑)。
──山田さんは坂本監督とは今回が初タッグですが、監督に対してはどういうイメージがありましたか?
山田 ご一緒させていただく前のイメージは本当に「ものすごい勢いのアクションを撮る人」っていうイメージで、撮ったあとの今の印象は「めっちゃ“少年”なんだな!」っていう感じです(笑)。アクションが大好きっていう熱がすごく伝わってくるので、私も「期待に応えたい」と思って撮影に入ったんですけど、実は最初のほうは全然坂本さんのアクションがつかめなくて……。どうしたらいいんだろうと思いながら必死にやってたんですが、7日間の撮影の中で「あ! 坂本さんのアクションってこういうことかも!」ってつかんだタイミングがあったんです。最終日にはそれがもう私の中でバッチリ決まって「うわっ! ここから続けたいのに終わっちゃった!」って感じでしたね。「まだまだやりたいのにー!」って。
──ちょうどコツをつかんだところだったんですね。ところで坂本監督はどこで山田さんと出会って今回のオファーにつながったのでしょうか?
坂本 彼女が主演を務めた「爆裂魔神少女 バーストマシンガール」の照明部が自分の組と同じで、その人から「あの子、すごいよかったよ!」と聞いていました。その後、姫奈ちゃんの資料をいただき、ぜひご一緒したいと思っていたんです。「ウルトラマンブレーザー」のキャスティングでアクションができる女性隊員を探していると聞き、彼女を推薦したらオーディションに参加することになって、そのままヒロインに決まったという流れです。直接的ではありませんでしたが、自分がお手伝いしたという出会いでした。
山田 でも「ブレーザー」のときはご一緒してないんですよね。
坂本 そうなんだよね(笑)。でも「今度一緒に何かやりましょうね!」って話はしていたので、この企画で声を掛けたという感じです。
──山田さんはもともとアクションを学ばれていますが、坂本監督のアクションの特徴はなんだと思いますか?
山田 一言で言うと「わかりやすい」「お客さんに優しい」ですね。私はガチャガチャ動きがちというか、「何やってるかわかんない」とよく言われてたんですけど、坂本さんと一緒にやるようになってから自分がなんでそう言われていたのかがわかるようになったんです。坂本さんはとにかく丁寧に説明してくれますし、「こうやったほうがお客さんに伝わりやすいんだな」と勉強になって、すごく楽しかったです。
──宮原さんは坂本監督とは何度もタッグを組んでいて、父娘のような関係性だと思いますが……。
宮原 そう! 最近現場でも「華音ちゃん、お父さんいたよ」って言われるんです(笑)。で、「お父さん!?」ってなって探すとお父さん(坂本)がいる(笑)。
──宮原さんは「愛娘」ですもんね。そんな「お父さん」との再タッグの感想を聞かせてください。
宮原 でも実は、坂本さんとやればやるほど「(これまでを)超えなきゃいけないな」っていうプレッシャーは正直あって。それこそ「ガッチャード」に何度か監督として来てくださったときも「……来るぞ!」っていう(笑)。
坂本 わはははは!
宮原 「SHOGUN'S NINJA」もけっこう前からお話をいただいていたのでもうずっとソワソワしていました。念願なんですよ! 坂本さん、長い付き合いなのにずっと私に主役をやらせてくれなかったんですよ!(坂本を指差しながら)
坂本 そうじゃないよ(笑)。でも約束してたよね。「絶対に華音を主役で撮るからね」って。
宮原 それっていつなんだろう!?と思ってたので、今回主役をいただけてうれしかったです。ご一緒するたびにワクワクとプレッシャーが増えていきますね。
──「ガッチャード」の坂本監督回は宮原さんと坂本さんの信頼関係を感じる映像が印象的でした。当時の思い出やエピソードはありますか?
坂本 自分も武術をずっとやっていたので、実戦的な空手をやっていた彼女の特技を生かしたいと思ってアクションを付けています。最初は実戦の癖が抜けずに苦労したけど、だんだん自分のものにしていったよね。特に「ガッチャード」は1年間あったから、いろんな経験を積んで成長が見れたのがすすごくうれしかったです。
宮原 ちょっとホッとしました。あー、1年間がんばってよかった!
──実際に空手などをやられていた方は動きに癖が出るんですか?
坂本 やっぱり身体に染み込んだものが出ますね。特に実際の武術をやってる方々は「どうやって瞬速で人を倒すか」に専念します。それは「映像で見せるアクション」とは逆のコンセプトなんです。ただ「見せるアクション」だけだとニセモノになってしまうので実戦的な動きをどう取り入れるかというのはいつも考えるところですね。
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撮影中は楽しかったり悔しかったりの繰り返しでした(宮原)