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「新感染」監督が来日、今敏とジョージ・A・ロメロの影響語る

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「新感染 ファイナル・エクスプレス」トークイベントの様子。左から宇野維正、ヨン・サンホ。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」トークイベントの様子。左から宇野維正、ヨン・サンホ。

9月1日に封切られる「新感染 ファイナル・エクスプレス」の監督を務めたヨン・サンホが来日。それを記念したトークイベントが本日8月17日に東京・神楽座で行われ、ヨン・サンホと映画ジャーナリストの宇野維正が出席した。

本作は韓国・釜山行きの高速鉄道の車内で、凶暴化した感染者たちから逃げ惑う人々を描いたサバイバルスリラー。主演を「トガニ 幼き瞳の告発」のコン・ユが務めるほか、チョン・ユミ、マ・ドンソク、チェ・ウシク、アン・ソヒらがキャストに並ぶ。

アニメーター出身のヨン・サンホが初めて手がけた実写映画となる本作。宇野は「実写デビューでこのクオリティの映画を撮られるとは。韓国映画界の底力、監督の才能を感じました」と驚きの表情を見せる。ヨン・サンホは「俳優もスタッフも最高の実力を持っている方々ばかりで、私のアニメ作品も好きだとおっしゃってくれた。だから私が初めての実写映画の現場で困ることがないよう気遣ってくれたのです」と現場のチームワークを語る。

前日譚に当たる長編アニメ「ソウル・ステーション/パンデミック」に関する質問も。ヨン・サンホは「こちらはソウル駅の近辺で夕方から明け方にかけて起こる出来事を描く作品です。企画の順番として、まずアニメが先にあり、その撮影中に実写版を撮らないかという打診がありました。でも同じ作品を作るぐらいなら、その続きを描きたかった。だから『新感染 ファイナル・エクスプレス』では朝方にソウル駅を出発するKTX(韓国高速鉄道)を舞台としたのです」と製作の経緯を明かした。

続いて宇野がヨン・サンホのアニメと実写の作風の違いを「アニメはより現実的なドラマで、実写はとんでもないアクション映画(笑)」と指摘。ヨン・サンホは「韓国でも『ファンタジー的な要素のないアニメをなぜ撮るのか?』と頻繁に言われます(笑)。でも子供の頃からアニメが大好きで、特に好きなのは日本の今敏監督。彼のリアリズムにもとづいた初期のアニメを観て、ああいった映画を作りたいと思っていました」と告白する。そして「『ソウル・ステーション/パンデミック』のときは、ジャンル映画も撮ってみてはと提案され、ゾンビを題材としたのです」と続けた。

7月16日に死去した“ゾンビ映画の父”ジョージ・A・ロメロについてヨン・サンホが語る一幕も。「ゾンビ映画の作り手は、全員ロメロに借りがある。彼はゾンビという存在を自分で作り出しておきながら、誰でも撮れるように権利を開放してくれていた。ゾンビが単なるクリーチャーではなく、1つのジャンルとして確立され、愛され、そして再生産されるようになった。彼の業績は計り知れない」と述べる。また「彼がゾンビの起源を未知のものとしたことで、後世の監督たちは想像力を発揮する余地ができたのです」とロメロの偉大さを熱弁した。

宇野は「原題の直訳である『釜山行き』は、列車、人々が北から南へ逃げていくという意味にも取ることができます。感染者、ゾンビは北朝鮮の軍のメタファーという批評もありますが」と質問。ヨン・サンホは「現代の戦争はロケットがあるように北から南へという一方的な流れのものではないので、そういった批評に完全に同意することはできません。しかし撮影中、朝鮮戦争の際に存在した北から南へ逃げる“避難列車”が頭の片隅にモチーフとしてあったことは事実です」と答えた。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」は、東京・新宿ピカデリーほか全国でロードショー。なお「ソウル・ステーション/パンデミック」は9月30日、同じくヨン・サンホが手がけた「我は神なり」は10月より公開される。

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