「よしもとライターズアカデミーウエスト」石田明×サリngROCK×宮戸洋行 |仲間が作れる環境って、本当に貴重!

学校は、仲間と出会えることがホンマに大事

宮戸 でも脚本って、お二人のように独学でも書くことはできますよね。こういう学校で脚本を教わるのって、どんなメリットがあると思いますか?

石田明

石田 僕は何も知らんところから脚本を書き始めたけど、そこからいろんな脚本家さんと知り合いになって、話を共有するだけで全然違ってきたんですよ。年を取ってからだと「これ聞くの、恥ずかしいなあ」って、あるでしょ?

サリng ありますあります。

石田 実際、笑われることも多いですしね。だから若いうちにいろんな人に脚本のことを聞けて、同じ志の仲間ともたくさん知り合えるのは、めっちゃプラスやと思う。

サリng そうそう、絶対出会いは大きい。私も脚本の面で、いろいろ切磋琢磨できる仲間ともっと早く出会えてたら、面白くなる速度がもっと速かったかもしれないなあ、と思います。まあ今の状況にも、全然後悔はしていないですけど。

石田 しかも“出会う”ってことを学んでいると、たぶん脚本家としてデビューしてからも有利ですよ。今ってテレビドラマや映画では、何人かの脚本家がチームになるという現場が増えてるから、そうなるといろんな人と案を出し合って、アイデアを膨らませることができる人が重要になってくると思う。あとは音響さんや照明さんとかの、スタッフとも仲良くなりやすい。

宮戸洋行

サリng そうですよね。特に舞台を作るときは、どのスタッフさんと組むかってすごく重要。

石田 キャリアとかやなくて、ホンマに相性なんで。「この人に任せたらOK」という人と、いかに上手い具合に出会えるか。

宮戸 確かにそれは、家で1人で書いてるだけやったら出会えませんよねえ。

脚本家は、ビジネスと文豪タイプに分かれる?

宮戸 YWAWは「大阪は今、シナリオライターを求めている」ってキャッチを掲げてますけど、シナリオライターに向いてる性格とか、そういうのってありますかね?

石田 ビジネス面だけの話をすると、プロット(編集注:ストーリーを要約した企画書)を書くのが上手い人かなあ……と言う僕も、プロットは苦手で(笑)。だからいつも、いきなり台本書いて提出するけど、僕の場合はそれでも読んでもらえる。芸能人パワーがあるから(笑)。そうじゃなかったら、普通は「プロットとちゃうんかい!」って、ポイですよ。得意ですか? プロット。

サリng いや! そもそも私は「こういうのを書いてくれ」という要望に対応する能力が、すごく低いんで。

石田 要点をかいつまんで、読んだ相手が気になる雰囲気のプロットが書ける人が、仕事を取りやすいと言えば取りやすいんかも。だからYWAWのカリキュラムでも、プロットの練習は絶対入れたほうがいいと思う。でも逆に、プロットはめっちゃ面白かったのに、実際の演劇になったらつまらんってことも、けっこうあるけど(笑)。

サリngROCK

サリng ありますよねえ。でも脚本家に向いてる人って、そうやってプロットも上手く書けて、ビジネスとしてオーダーに応え続けられる人と、とにかく文豪が温泉旅館にこもるように、自分の世界をひたすら追究する人の、2パターンに分かれる気がするんですよ。それで言うと、石田さんはビジネスもできるって気がしますけど、私は……まあ自分に対して使う言葉ではないと思いますが、どちらかで言うなら“文豪”と分けたほうだと思っていまして。演劇の世界では、一般には知られてなくても、世界的に活躍してる作家さんってけっこう存在していて、それは文豪系の人も多くいると思います。

石田 そうですよね。世間からどう思われようが、自分たちが面白いと思う作品を書き続けてる人は、いっぱいいるわけやから。でもどちら側でも「成功してやろう」と思って脚本家を目指すのは、何か違うと思うんですよ。脚本家と言うからには、作品の内側に信念を通してほしいのに、それだと外側に信念が通ってるようで、俺はあまり好きじゃない。だから結局は、自分の「これが面白いと思う」という信念を持ち続けられて、なおかつそれができる環境になるまで我慢ができる。そういう人が本当に「脚本家に向いてる」ってことちゃうかなあ。

サリng そうそう、そうですよね! 私まで、聞きたいことが聞けたという気がしました、今。

一同 (笑)。

漫才やってなかったら、入りたいぐらいです

宮戸 その話で言うと、YWAWも「ビジネスコース」「文豪コース」に分けたほうがいいんですかね?(笑)

サリng でも実際、1年生はビジネスコースで、2年生は文豪コース、みたいになるんじゃないのかなと思っています。

宮戸 基礎的なことはビジネスにつながりやすくて、そこから先はパーソナルって感じなんですかね? だったら、どっちのタイプの人も来てもらえれば。

サリng 本気で「書きたい」と思うなら、どちらも歓迎ですね。むしろそれとは違う種類の人が出てくるかもしれないし、それがYWAWの目的の1つという気もします。

宮戸 それではこの記事を読んで、YWAWに興味を持ち始めた人に、背中を押すような言葉ってありますか?

石田 大阪で仕事のときに空き時間があったら、僕も講義を受けたい(笑)。

左から石田明、サリngROCK、宮戸洋行。

サリng でもYWAWに限らず、いろんな団体とかイベントとか、気になるものがあったら絶対行ったほうがいいです。

石田 若いうちは、インプット過多になってもいい。自然と、アウトプットせなしんどくなってくるから。そのためにも、やっぱり仲間が作れる環境は本当に貴重やと思う。生徒同士だけやなくて、講師をやるような立場の人とも情報交換ができる機会って、あまりないからね。あと、さっきの「好きなことができる環境になるまで我慢する」という話で言うと、その忍耐力を支えてくれるのも、仲間だったりすると思うので。

宮戸 僕もNSCに入って、今でも支えあえる仲間ができたことが、一番の宝だったりしますからね。実は僕、今回この仕事の話を聞いたとき「断ろう」と思ったぐらい、シナリオのことを1個もわかってなかったんです。でもお二人の話を聞いて、脚本を書くことにすごく面白さを感じましたし、YWAWのことも気になってきました。正直、「GAGがなかったら入りたい」と思い始めてます。

一同 (笑)。

講師情報

菱田信也
中神謙一
正塚晴彦
川浪ナミヲ
安田真奈
サリngROCK
江幡
佐藤
坂田

総合学科長・基礎科講師:菱田信也(劇作家、脚本家)
基礎科講師:中神謙一(脚本家・演出家・俳優、「劇団SE・TSU・NA」主宰)
基礎科・ゼミ科講師:正塚晴彦(宝塚歌劇団 演出家)
ゼミ科 映像シナリオ講師:副島新五(俳優、映像監督)
ゼミ科 映像シナリオ講師:安田真奈(映画監督、脚本家)
ゼミ科 舞台脚本講師:サリngROCK(俳優・脚本家・演出、劇団突劇金魚主宰)
ゼミ科 舞台脚本講師:坂田大地(劇作家・演出家・企画人、劇団そとばこまち七代目座長)
ゼミ科 舞台・映像脚本講師:川浪ナミヲ(劇作家・演出家・脚本家、劇団赤鬼主宰)

特別講師:ゴリ(ガレッジセール)
特別講師:久馬歩(ザ・プラン9)
特別講師:品川祐(品川庄司)
特別講師:石田明(NON STYLE)
ほか吉本新喜劇脚本執筆陣

よしもとライターズアカデミーウエスト

大阪府大阪市難波千日前12-35 SWINGヨシモト内に所在する、シナリオライターのためのスクール。入学受付期間は2019年9月末まで。公式HPより、WEBでの出願が可能。8月25日には説明会と人学案内が同スクールにて実施される。

石田明(イシダアキラ)
1980年大阪生まれ。2000年にNON STYLEを結成。NON STYLEでは2006年にNHK新人演芸大賞にて演芸部門大賞、第41回上方漫才大賞にて優秀新人賞を受賞したほか、第4回MBS新世代漫才アワード、第9回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会、第8回M-1グランプリ2008にて優勝した。石田個人としては舞台での活動も多く、出演のほか脚本・演出も担当。近年の主な舞台作品に、「モニタリンGood!~それが大事~」(久馬歩との共同脚本・演出)、つかこうへい復活祭 2019 VOL.1「『熱海殺人事件』LAST GENERATION 46」(出演)、「銀幕の果てに」(出演)、「幼児・小学生・戦隊ファン向け 夏休み企画 ももたろう」(作・演出・出演)など。
サリngROCK(サリングロック)
1980年大阪生まれ。脚本家、演出家、俳優。2002年に突劇金魚を旗揚げし、大阪を拠点に活動を展開。現在「朗読Bar / 金魚の夢」を不定期で行っている。第15回OMS戯曲賞大賞、第9回AAF戯曲賞大賞、若手演出家コンクール2012優秀賞を受賞。また第57回、第62回岸田國士戯曲賞の最終候補作に選出された。
宮戸洋行(ミヤトヒロユキ)
1984年大阪生まれ。2006年に坂本純一、福井俊太郎とGAG少年楽団を結成。2018年にGAGに改名。GAGは2015年にABCお笑いグランプリ優勝、2017年と2018年にはキングオブコントファイナリストに選出された。