2024年4月23・24日に、井上芳雄の2DAYSコンサート「井上芳雄 by MYSELF × Greenville Concert2024」が開催される。
このコンサートでは、井上がパーソナリティを務めるラジオ番組「井上芳雄 by MYSELF」と、2023年3月に発表された自身初となるフルオリジナルアルバム「Greenville」の世界観が融合する。音楽監督には、井上と「井上芳雄 by MYSELF」を進行する大貫祐一郎、「Greenville」のプロデュースを手がけたコトリンゴが名を連ね、さらには構成を小林香が担当。そのうえ4名の豪華ゲストを呼んで盤石の布陣で挑むコンサートで井上が思い描く“挑戦”とは。井上にその思いを聞いた。
取材・文 / 大滝知里撮影 / 秋倉康介
ヒット曲は足りないけど、アルバム発表を記念したコンサートをします
──今回のコンサート「井上芳雄 by MYSELF × Greenville Concert2024」は、井上さんがアーティストとして発表されたアルバム発表後に開催されるものですが、そういったご経験は初めてですか?
そうですね。シンガーの方がアルバムを発表して、それに伴ったコンサートやツアーをされている姿は、自分もなんとなく見てきていました。今回、せっかくいろいろな方に曲を作っていただいたので、お客さんの前で歌いたいという気持ちがずっとあって。シンガーの方のアルバム発表後のコンサートに比べるとヒット曲が足りないのですが(笑)、発売記念と、しばらくやれていなかった「井上芳雄 by MYSELF」のコンサートをコラボさせて、どちらの要素も含んだコンサートをやりたいと思ったんです。これまでもアルバムを出させていただいたり、コンサートもたくさんやらせていただいたりしていますが、今回アルバムから歌うのはすべてオリジナル曲ですし、今までとは意味合いが違うコンサートになるのではと思っています。
──「井上芳雄 by MYSELF」のコンサートとしては、2021年5月に無観客配信された「『井上芳雄 by MYSELF』スペシャルライブ配信 20th Anniversary Festival! ~急遽生配信!裏切らない芳雄4時間フェス~」(参照:裏切らない芳雄4時間フェス!「井上芳雄 by MYSELF」生配信に海宝直人ら)以来となります。
ちょうどデビュー20周年を記念したコンサートを「井上芳雄 by MYSELF」で企画してやろうとしていたのですが、コロナが大変な時期で、1公演のみ開催できたところで公演中止となってしまい、配信ライブを無観客でやることになりました。そのときに「やれることは一通りやった」という気がしたんです。だから同じようなコンサートを続けて毎年やるという気持ちになれなかったんですよね。アルバムの発売がきっかけとなって、今までとは違ったコンサートに挑戦できると感じています。
──アルバム「Greenville」(参照:全楽曲がオリジナル、井上芳雄のアルバム「Greenville」プロデュースはコトリンゴ)では“人生の局面に寄り添ってくれるような”10曲が収録されています。こういうテーマ性のある作品をアルバムとして作るご経験は、井上さんにとってどのようなものでしたか?
今まではミュージカルやポップスなど、既存の曲を自分がどうカバーするか、どう表現するかということに重きを置いていましたが、まだ誰も歌ったことがない曲を歌わせてもらうという経験は、まあ、大変でしたね(笑)。ゼロから曲をさらって自分のものにしていったり、今まで歌ったことがない曲調の楽曲があったり、チャレンジングなことがたくさんありましたし、アルバムのテーマにしても、“人生のいろいろな局面で支えてくれる”っていうのは“日常に寄り添う”という意味でもある。舞台には非日常な要素があるので、普段自分がホームとしている場所とは真逆な部分もあって、すぐに歌いこなせない楽曲もありました。なので、アルバムの曲たちになじんでいくのはこれからかなと。コンサートでお客さんの前で歌ったときに、また新たに感じることがきっとあると期待しています。
“どちらかだけ”は気分じゃない、音楽という大きなくくりで届けるコンサート
──コンサートでは、ラジオ番組とアルバムの世界観がコラボするということですが、どのような構想をお持ちでしょうか?
もともとやっていた「井上芳雄 by MYSELF」のコンサートでは、台本があって、ラジオブースのようなセットを組んで、トーク部分がたくさんあったんです。急にコントが始まったりして、どちらかと言うとバラエティショーに近い形でした。アーティストとして発表した「Greenville」にはふざける要素はないですし(笑)、ミュージカルの曲でもないので、皆さんにどれほどなじみがあるかわからないような曲を、シンガーとして歌う。「井上芳雄 by MYSELF」と「Greenville」は、要素としては対極にあるものだと思います。でも、今の自分は“どちらかだけ”というのは気分ではないというか、2つがかけ合わさったときに出せる面白さを考えてみたかった。演出や照明、美術によって2つの世界が統一感を持って展開するような空間にしたいと思っています。会場も初めてとなる東京ガーデンシアターで、大きなところですし、“音楽を楽しんでもらう”というくくりにできたら。「Greenville」の曲を歌ったあとに、その曲と共鳴するようなテーマ性のミュージカルの曲を歌ったり、曲調やジャンルが似ているものを歌ったり。自分がやってきた作品の中から探すことになると思いますが、2つの世界が乖離せず、アルバムの世界がふくらんだり、ミュージカルの楽曲が違った聴こえ方で届いたりしたら良いなと。
──ちなみに「Greenville」の楽曲の中で、井上さんが特に観客の前で歌うことを楽しみにしているものはどれですか?
「Lost In The Night」でしょうか。この曲は歌詞が全編英語ですし、曲調もR&Bというか、自分では選ばないような曲で、なかなか歌いこなせなくて。お客さんも自分が歌う姿をあまり想像できないのではないかと思うんですが、盛り上がる曲であることは確かなので、反応が楽しみです。人前で生で歌えるのか?という問題もありますが(笑)、僕は舞台俳優なので、やっぱり歌は人前で歌ってなんぼ。聴いてもらわないことには始まらないので、お客さんの前で歌いたいなと、どんな曲でも思います。
一瞬にして世界を作る小林香の“膨らむ”演出に期待
──音楽監督に大貫祐一郎さんとコトリンゴさん、構成には小林香さんがいて、豪華なクリエイティブチームですね。
そうですね。普通は成立しないようなことをやらせてもらうので、結果がわかるようなことよりも、“どうなるのだろう?”という未知数なことをやりたい気持ちの表れだと思います。コトリンゴさんにはコンサートで弾いてもらう予定なので、アーティストとしてライブでご一緒するときにどんな感覚が生まれるのか楽しみですし、ミュージカルの部分で「井上芳雄 by MYSELF」をずっとやってきた大貫さんがいるのも心強いです。音楽監督が2人いる点も、お客さんの楽しみの1つになればと思います。
──井上さんは小林さんとさまざまな舞台作品でご一緒されていますが、小林さんのコンサート演出の魅力をどこに感じていますか?
センスが良いんですよね。音楽的な知識や選曲を含め、個人的には、好きなものが共有できるという思いが昔からあります。同年代ということもあるのかな?(笑) しばらくコンサートでご一緒していなかったのですが、今年、香さんが構成・演出された、明日海りおさんの20周年記念のコンサートにゲスト出演させていただいたんです。そのコンサートが、まあ素敵な出来栄えで。明日海さんがステージの真ん中に立っていて、その周りでは幕に映像が映し出され、いろいろな世界が立ち上がっている。映像やマッピング、照明で一瞬にして世界を表現する香さんの作り方は、コンサートに向いていると実感しましたし、はっきりとした設定がない今回の自分のコンサートには、“膨らむ”ような演出が必要なので、ぜひお願いしたいなと思いました。香さんとは、海外のアーティストのコンサートのように、1つ象徴的なオブジェクトを作って、それをいろいろなものに見立てながら、2つの世界を融合させたいねと話しています。