良いボケの浦井健治&ネタ仕込む田代万里生、初共演となる石丸幹二&明日海りおと共に
──1日目のゲストには浦井健治さんと田代万里生さん、2日目のゲストには石丸幹二さん、先ほどお名前が挙がった明日海さんが参加されます。皆さんをご指名された理由を教えてください。
浦井くんと万里生くんは、本当によく共演させていただいていますし、特に「井上芳雄 by MYSELF」のコンサートで万里生くんは“常連のゲスト”なんです。浦井くんは良いボケを連発してくれて、万里生くんはいつもちゃんとネタを仕込んでくる(笑)、安心して盛り上げてもらえる2人で。一方で彼らとは対照的に石丸さんと明日海さんは“正統派ゲスト”。お二人はこのコンサートで初共演されるそうです。石丸さんは東京藝術大学の先輩でもありますが、ミュージカル「ラグタイム」(参照:石丸幹二らがつながりと愛を描く「ラグタイム」開幕に井上芳雄「“証人”になって」)でご一緒させていただいて、あらためて学ぶところが多い、自分にとって目標の先輩だと感じました。今回はその胸をお借りして、コンサートの世界を豊かにしていただきたいなと。明日海さんはミュージカル「ガイズ&ドールズ」(参照:「ガイズ&ドールズ」井上芳雄らが開幕に喜び「これが最後の舞台だとしても満足」)で共演させていただきましたが、また新しい曲を一緒に歌えたらという思いでお声がけしました。1日目、2日目と色がだいぶ違いますが、大舞台にも慣れている皆さんの力をお借りしつつ、その魅力をぶつけてもらおうという気持ちでいます。せっかくなのでデュエットだけでなく、3人で歌える曲があったら良いなと探しているところです。
──井上さんは、近年は舞台出演と並行して映像での活動も増えていますが、そういった幅広い活動の中で、アーティストとして歌と向き合う経験が、ご自身の舞台表現に還元されていると感じることはありますか?
あまり意識してそれぞれに生かそうと思ったことはありませんが、音楽活動をしていると、ジャンルによって歌い方や音の取り方が全然違うということに改めて気付かされるんです。ミュージカルでも作品ごとに音楽のテイストが異なるので、自分の歌い方を作品ごと、役ごとに柔軟に変えていっても良いのかなと考えるようになりました。そのほうが表現しようとしているものに近付く。“自分にはこの歌い方だ”と突き詰めるのも素敵なことですが、僕は変わっていけたら良いかなと。
──井上さんにも“自分の歌い方”に囚われていた時期があったのですか?
そうですね。どんなものでも歌ってきましたが、逆に言うと、“自分として歌ってきた”だけで、何かに合わせていくという感じでもなかったのかな。今まで感覚的にやってきた部分を、技術的なことも含めて、はっきりと変えたり適応させたりしていっても良いのかなと思っています。ずっと同じではいられませんし、年齢を重ねて体力の衰えを感じないこともない。変化は“必然”で、都度見付けていくという作業は大変ではありますが、“探す”ことも役者の楽しみの1つだと思っています。
会場は大きくても心は1対1、肩の力を抜いて“親しい友人”井上芳雄に会いに来て
──前回の「井上芳雄 by MYSELF」コンサートでは、歌いっぱなしで4時間超えの公演を見事に完遂されて、ファンの期待を上回るステージだったと思います。今までとは違う“新しさ”がある今回は、どのような思いを観客に届けたいですか?
前回の4・5時間やったコンサートはコロナの真っ最中という、一番状況が厳しく、緊張感がある時期でした。舞台に携わる僕たちの思うようにできないという悔しさを、エネルギーにしてぶつけたところがあったと思うんです。無観客ではありましたが、たくさんの人に観ていただきましたし、そういう意味でも“やり切った”という気持ちがありました。今回はありがたいことに状況も変わり、落ち着いてきているので、力を抜くというか、自然体でやりたいなと思っています。正直なところ、もうあんなにがんばれないですよ(笑)。振り返ってみても、大変だったなとか、がんばったなという気持ちになります。でもそれは、皆さんも同じだと思うんですよね。
──確かに、鬼気迫るものを感じたコンサートでした。
なので、今回は“お疲れさま会”じゃないけど、意気込みすぎないように、親しい友人に会いに行くような感覚でお客さんをお迎えできたら。今年、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」(参照:望海風斗・平原綾香ら出演「ムーラン・ルージュ!」本公演開幕、舞台写真が到着)というポップなミュージカルに出演したのですが、客席で声を出して楽しまれている姿に、日本のお客さんの盛り上がりのうまさを感じたんですよね。だからと言って立ちっぱなしのコンサートにしようとは思いませんが、叫んだり、歓声をあげたりして、自由に一緒に楽しんでほしいなと思います。会場は大きいですが、気持ちはお客さんに向けて1対1で歌っているようなコンサートをお届けしたいです。
プロフィール
井上芳雄(イノウエヨシオ)
1979年、福岡県出身。2000年にミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役でデビュー。以後、さまざまな舞台で活躍し、多数の演劇賞に輝く。歌手活動やテレビドラマ、バラエティ番組への出演のほか、著書も多数出版。日本テレビ系「行列のできる相談所」、WOWOW「井上芳雄ミュージカルアワー『芳雄のミュー』」、NHK総合「はやウタ」、BS-TBS「美しい日本に出会う旅」にレギュラー出演中。近年の舞台出演作にミュージカル「ジェーン・エア」、「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」、ミュージカル「ラグタイム」など。ミュージカル「ベートーヴェン」が東京・日生劇場で上演中。2024年3・4月に「メディア / イアソン」、夏と秋に「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」の再演が控える。