今回のキーマンは…

──「VOICARION」の原作・脚本・演出を手がける藤沢さんは、音楽朗読劇というジャンルを牽引する第一人者として知られています。藤沢さんは、キャストの方々とどのようなやり取りをしながらお稽古を進めているのでしょうか？

「VOICARION」は、キャストが何チームかに分かれて、さまざまな組み合わせで上演されることが多いんですけど、藤沢さんはとても柔軟で、キャスト1人ひとりに対して演出を変えていくんです。僕には、抽象的だけどグッとくる言葉をかけてくださるので、それをヒントに役作りすることが多いですね。例えば今回、喧騒の中で会話をするシーンがあるんですが、ついつい周りの雰囲気に飲まれてセリフを言ってしまいそうになるんです。そんなとき、藤沢さんから「騒がしい出来事が、どこか遠くで起こっているような感覚でセリフを言っていただけますか？」というアドバイスをいただいて。その言葉が自分の中にストンと入ってきて、半蔵という役のイメージを構築することができたんです。ほかのキャストさんのセリフを聴くのも刺激的ですし、稽古に行くのがすごく楽しいですね。

──博多座公演では石川界人さんが弥助役を務め、12月の大阪公演では梶裕貴さんが同役を演じます。「拾弐人目の服部半蔵」ではやはり、半蔵と弥助のストーリーが軸になるのでしょうか？

服部半蔵が主人公ではあるのですが、今回のキーマンは弥助なんじゃないかと。界人くんと梶くん、パワーのある2人に入ってもらうことで物語がグッと加速する気がしています。界人くんは以前、ほかの作品で親子役を演じたので、今回はその延長線上のようなイメージでやれたら良いですね。梶くんは「VOICARION」で何度も共演させてもらっていますし、個人的にも好きな役者さんなので、またご一緒することができてうれしいです。

──本作には弥助役のお二人に加え、高木渉さん、諏訪部順一さん、緒方恵美さん、朴璐美さん、そして「VOICARION」に初参加となる立木文彦さんといった豪華声優陣が出演します。

初参加とは言え、立木さんはキャリアも長く、実力もある方。「VOICARION」のレギュラーチームと立木さんで弥助の周りを支えて、界人くんと梶くんには元気いっぱいに物語の中を駆け回ってもらいたいですね。個人的には、緒方さんと朴ちゃん演じる沖田総司と岡田以蔵のやり取りに注目してほしい！ 服部半蔵はちょっと情けないところがあるので、カッコいいパートは女性陣にお任せできればと思っています（笑）。

「VOICARION」観劇後は博多巡りを楽しんで

──山口さんは、博多座のある福岡県福岡市博多区のご出身です。ご自身の地元に凱旋するにあたっての思いを聞かせてください。

今まで何度もお声かけいただいていたのですが、スケジュールが合わなくて残念な思いをしていたので、念願かなって故郷に錦を飾ることができて良かったです。自分にとって福岡は思い入れの深い場所なので、そこでお芝居をやらせていただけることには本当に感謝しかありません。家族や友達に舞台を観てもらえるのはうれしさ半分、照れ臭さ半分という感じですが……（笑）。

──山口さんは幼少期から少年時代にかけて、博多座から徒歩5分ほどの場所にある櫛田神社の近くに暮らしていらっしゃったそうですね。当時を振り返って、博多にまつわる思い出やおすすめの場所を教えていただけますか？

僕が福岡にいた頃はまだ博多座ができていなかったんですけど、今博多座がある辺りはよく走り回っていたテリトリーですね（笑）。中学生のときに引っ越すまで、博多祇園山笠には毎年参加していましたし、櫛田神社の裏手にある、櫛田茶屋の櫛田のやきもちがすごくおいしかったのを覚えています。「VOICARION」を観たあと、博多座の周辺をぶらりと散歩してみてはいかがでしょうか？ そのときはぜひ、かろのうろんへ。ごぼ天うどんとかしわ飯がオススメです。

そういえば博多座では船乗り込みをやっていますよね？ 僕もいつかやってみたいなあ！なんて思ったり（笑）。

──ぜひとも、博多と「VOICARION」の両方を堪能してもらいたいですね。

そうですね。今、配信でお芝居を観ることも増えてきていますが、劇場に直接足を運んでいただき、「VOICARION」の世界を生で感じてほしいなと。クライマックスで物語が大きく動いていくときの、時代のうねりに飲み込まれていくような感覚を、皆さんにも味わってもらいたいですし、自分自身も楽しみながら演じたいと思っています。劇場でお待ちしております！

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。