シス・カンパニー公演「友達」加藤拓也が描き出す安部公房の普遍性|広瀬アリス&岩井秀人が明かす「私が知っている、加藤拓也の横顔」

私が知っている、加藤拓也の横顔

広瀬アリス

「オブラートに包みつつもさらけ出している」

広瀬アリス(撮影:八木虎造)

加藤さんとは年齢もほぼ変わらないので、「どんな人なんだろう」と気になっていました。2018年に、ショートフィルム「想い出が悴んでて」で初めてお仕事したときは、セリフもそんなになくて(笑)。なのに「こんなに面白くなるんだ!」っていう衝撃がありました。しかも現場では、淡々としているというか、落ち着いていて貫禄がある。伝え方も丁寧だし、すごくわかりやすくお芝居のことを話してくださって、早い段階で「加藤さんに全部委ねよう」と思うくらい、包容力のある方だと感じました。

これまで何作か加藤さんの舞台を拝見していますが、とても人間らしい作品を描かれる方だなと思います。人間があまり人に見せない部分、普段はお腹に隠している部分を、加藤さんはオブラートに包みつつもさらけ出している、みたいな。しかもそれぞれの世代の人間らしさを描くのが上手なので、若い方が出る作品に携わることもあるし、今回の「友達」のように多様な年代が集う作品を手がけることもある。器用な方だなと思います。

加藤さんの活躍はどんどん目覚ましくなっていて、「友達」も出演者が豪華すぎてびっくりしています(笑)。加藤さんは役者さんの今まで見たことがない一面を引き出すのが上手い演出家だと思うので、「友達」もぜひ観たいです。

広瀬アリス(ヒロセアリス)
1994年12月11日、静岡県生まれ。2008年、映画「死にぞこないの青」で女優デビュー。主な出演作に「巫女っちゃけん。」「氷菓」「旅猫リポート」「AI崩壊」「サイレント・トーキョー」といった映画や、テレビドラマ「探偵が早すぎる」「七人の秘書」「知ってるワイフ」がある。2017年にはNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演。2021年5月には映画「地獄の花園」が公開され、10月にはテレビドラマ「ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~」がスタートする。

岩井秀人

「自然に世界が立ち上がってしまう人」

岩井秀人©︎平岩享

加藤くんの作品は、(ハイバイ劇団員の)平原(テツ)くんが出演したものを、2つ観ました。作品については、「セリフが書ける人ってこうだよな」という印象。違う色の2本の糸をただモチャモチャやっているうちに、観た人が作家本人も意図しないくらいの背景を感じてしまうような、そういう才能の人だなって。会話を成立させようとして自然にやりとりを書いているうちに世界が立ち上がってしまうんでしょうね。演出についても、台本のためのシンプルな演出が的確にできてる気がします。それも、台本に自信があるから余計なことをしないでいられるんでしょうね。

加藤くんには2020年に上演した「投げられやすい石」のアフタートークに出てもらいました。その前に一度、加藤くんと2人で1・2時間話したことがあって。そのとき、「書けるから、世界が作り出せるからって、そこに横暴になりすぎないようにね」みたいなことを言いました。「君の作品は、君が思ってるよりもすごく現実的に観てる人に刺さってるから」と。

ただ、ああいう作風だからどんなに厄介なやつだろうと思ったけど(笑)、いたって落ち着いてて、面白いバランスの人ですね。しかもあんなに書けるなんて、本人は否定してたけど、何人かゴーストライターでもいるんじゃないですかね?(笑)

岩井秀人(イワイヒデト)
1974年、東京都生まれ。作家・演出家・俳優。2003年にハイバイを結成。2012年にNHK BSドラマ「生むと生まれるそれからのこと」で第30回向田邦子賞、2013年に「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞した。近年は、パルコ・プロデュース「世界は一人」の作・演出、フランスジュヌビリエ国立劇場「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ編」の構成・演出などを担当するほか、俳優として「キレイー神様と待ち合わせした女ー」に出演。2020年にスタートさせた「いきなり本読み!」が2021年5月にWOWOWでテレビシリーズ化された。8月から9月にかけて、ハイバイ「ヒッキー・カンクーントルネード」の公演が控える。

2021年7月21日更新