人間の闇をどう表現するか?林遣都×有村架純が安部公房に挑む シス・カンパニー公演「友達」

国内外の古典から新作まで、上質な演劇作品を次々と世に送り出しているシス・カンパニー。同社は今秋、27歳の新星・劇団た組の加藤拓也と再びタッグを組み、安部公房の「友達」を上演する。奇怪なのか、はたまた滑稽なのか……1人の男と謎の“9人家族”を描いた「友達」に、加藤と15人のキャストが挑む。

7月上旬に公開された特集では、加藤の人生観や、彼が「友達」をどのように捉えているかに迫った(参照:シス・カンパニー公演「友達」加藤拓也が描き出す安部公房の普遍性、広瀬アリス&岩井秀人が明かす「私が知っている、加藤拓也の横顔」)。今回は、“9人家族”の長男と次女を演じる林遣都と有村架純に、加藤が再構成した上演台本の印象、自身が演じる役どころのイメージなどについて話を聞いた。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 須田卓馬

人間の闇を感じる作品

──まだお稽古が始まる前ですが、台本をお読みになって作品にどんな印象を受けましたか?

林遣都

林遣都 1年以上前にまず安部公房さんの戯曲を読ませていただいたのですが、正直申し上げますと、難しいなと。まだ時間もあったので、そのときは一旦置いておこうと思いました。その後、加藤(拓也)さんが執筆された今回の上演台本をいただいて、最初に読んだ戯曲と本質は変わりませんが、加藤さんの遊び心のようなものがちりばめられている台本だなと思いました。でも、まだどうなるのか想像できないことも多いので、稽古が始まるのを楽しみに待ちながらイメージを膨らませているところです。

有村架純 率直に言いますと、すごく奇妙で気持ちの悪いお話だなって思いました。ホラーということではなくて、人間の闇のようなものをすごく感じましたし、登場人物たちの言動を、正義と捉えるのか悪と捉えるのか、本当にいろいろな解釈ができるなって。でも、感情の交錯とか置かれている状況の複雑さなど、難しいところがありつつもすごく読みやすかったので、あっという間に読んでしまったんです。スピード感がある展開なので、舞台をご覧になる方も、もしかしたらすごく短く感じるんじゃないでしょうか。

──林さんは、鈴木浩介さん演じる“男”の家にやって来る一家の長男、有村さんは次女を演じられます。ご自身の役について、何かイメージされていることはありますか?

 全然まだまだこれから、という感じです。自分の役についてもですし、周りのキャラクターも1人ひとり得体の知れない方たちばかりで(笑)。家族と言っている彼らは、ある程度長い時間を一緒に過ごしてきたようではありますが、それがどんな過ごし方だったのかもわからないですし、どんな家族なのか……いや、そもそも家族じゃない可能性もありますし。なので、演出の加藤さんや皆さんと早く意見交換がしたいです。僕の役も、台本の中に具体的なことが書かれておらず、安部公房さんの戯曲に書かれていたのは、格闘技経験がある元探偵っていうことだけ。これからもっと考えていきたいです。

有村架純

有村 確かに役に関する情報が少ないので、どうやって役を作っていこうか、悩んでいて。

 そうだよね。

有村 私も、この人たちは本当に家族なのかな?と思いますし、いろいろと想像が膨らみますね。次女については、台本上ではとても清楚な女性とあって、でもそれをどうひねくれた人間にしようかなと(笑)、今考えているところです。

なんとなく緊張して来ました(林)

──演出の加藤さんは、1993年生まれの27歳と、お二人と世代的に近いですよね。これまでお話ししたり、何か作品をご覧になったりしたことはありますか?

林遣都

 一度舞台を観に行かせていただいたことがあり、そこでごあいさつしました。加藤さんの映像作品も何本か観ています。いつもこちらの想像をはるかに“超えまくってくる”方だと思うので(笑)、「友達」もどうなるのかまったく想像がつかないですし、楽しみです。

有村 私は加藤さんの舞台をまだ拝見したことがないんです。でも加藤さんの舞台を観た方が皆さん、「加藤さんは才能豊かな人だ」と口をそろえておっしゃるので、稽古場でどんなお話ができるのかがとても楽しみです。

──お二人はこれまでもたびたび共演されていますが、舞台では4月の「坂元裕二 朗読劇2021」に続いての共演となります(参照:「坂元裕二 朗読劇2021」開幕、初日は高橋一生×酒井若菜が新作を披露)。

有村 私はとっても楽しみです! 舞台って、ドラマや朗読劇とはまた全然違う場所なので、これまでとは別の空気なんだろうなと思いますし、(林に視線を向けて)舞台は大先輩なので。

 いやいや(笑)。でも、間接的な共演も入れたらもう5作品くらいご一緒してるのかな? 年齢も近いですし、純粋に一緒にお芝居するのが楽しくて。いつも感じるのは、プロ意識が高くて自分に厳しいということ。毎回刺激をもらうので、今回も楽しみですね……って話をしてたらなんとなく緊張してきました(笑)。なんか(有村に視線を向けて)オーラがあるんですよ。

有村 3・4カ月も一緒の現場をやってきたのに、(気持ちが)リセットされてる(笑)。