「ワンピース音宴~イーストブルー編~」金谷かほり×田中公平×松浦司×石川直|仲間と絆の物語、チーム全員で目指すエネルギッシュな“宴”

ギリギリの難易度で曲を書く(田中)

──稽古が始まって10日目ですが、今はどのような内容のリハーサルをされているんですか?

金谷 演奏に動きを付けながら1曲ずつシーンを作っている最中で、石川さんをはじめミュージシャンの皆さんにパートを作り上げていただいてます。

田中公平

石川 シーンごとにどんな見せ方をするのか、金谷さんの構成イメージに沿って作っています。ミュージシャンたちも海賊や山賊に扮して1人ひとりに役があるので、管楽器と打楽器の両チームが役者さんたちと三位一体になってリハーサルを重ねています。

田中 私はいつもプロの方ができるギリギリの難易度で曲を書くんです。「挑戦したい」とやる気にさせるような曲。ちょちょいのちょいで演奏されたらつまらないじゃないですか(笑)。

ルフィは演じてて気持ちいい(松浦)

──金谷さんが思われる、松浦さん演じるルフィの良さってなんでしょうか?

金谷かほり

金谷 容姿も重要ですが、舞台はその役者の人となり、人間としての質がどうしても出ちゃうので、キャラクターと中身が近い人が良かったんです。松浦くんはルフィに近いマインドを持っている気がしていて。

松浦 ありがとうございます!

金谷 いや、褒めてはないよ!(笑) でもルフィに大事な要素は、そういう真っ直ぐなところ。あと笑顔だね。

──松浦さんは、実は過去にもルフィ役を経験されていますよね。ルフィを演じるうえでどのように役を深めていったんですか?

松浦 前回もでしたが、今回も自分の声を使わずにノンバーバルで演じるので、最初のうちはどう表現したらいいんだろう?と悩んでいました。そこでマンガやアニメを見返して、表情や動きを学び、演技に少しずつ感情を乗せていくと、自分の中でどんどん役とのズレがなくなっていって。ルフィは喜怒哀楽の感情の振り幅が大きいから、楽しいときは思いきりガハハハって笑うし、仲間が傷付けられたら心の底から激怒するし、演じてて単純に気持ちいいんですよね。あとお客さんにどの角度から観ていただいても大丈夫なように、ルフィのフィギュアを観察したり。正面からだけじゃなく、後ろから、斜めから見てもルフィになれるよう、細かく研究していきました。

田中 研究しすぎて、もうそろそろ腕が伸びてくるんじゃない?(笑)

松浦 「音宴」の本番では本当に伸びちゃうかもしれないですねー(笑)。

金谷 ぜひお願いします!

松浦 こっそり“ゴムゴムの実”を用意しておいていただければ……(笑)。

石川直

石川 松浦さんのルフィは観てて楽しいです。リハーサルでも明るい雰囲気が周囲に伝わっていくのがわかります。

田中 ミュージシャンの方々は普段マーチングでパフォーマンスされてますが、役者さんとコラボするのは初めてですか?

石川 僕自身はほかの舞台でやったことはありますが、基本的にマーチングをやってる人たちが役者さんと一緒にやるのは珍しいと思います。特に今回は言葉を使わずに表情と所作で表現されているので、僕らもすごく勉強になるし、いい刺激をもらってます。

田中 松浦くん、そんな目で見られてるんだぜ?

松浦 ふふふふふ(笑)。

しっかりとした中身を作っていかないと見抜かれる(金谷)

──金谷さんはこれまでにも数々のショー演出を手がけられていますよね。

金谷かほり

金谷 はい。お客様が優しい目も厳しい目も両方持って作品を観ていることをよく知っているので、私も同じ目線になって演出するようにしています。キャストが最初から最後までキャラクターとして存在し続けることは、セリフがあればそれなりに助けになるものがあるけど、ノンバーバルで見せていくには、キャラクターのかなりしっかりとした中身を作りあげて整えていかないと、素が出た瞬間にお客様に見抜かれてしまう。なので役者陣には各シーンでどういう心情で舞台上に立っているかディスカッションをしてもらっています。

松浦 「音宴」は特に、キャストがお客さんに絡んだりもするので、何が起こっても対応できるよう、自分の中に人物像の基盤がないといけない。演じるほうとしてはやりがいがあるし、前のめりになって楽しくお芝居できます。

田中 女好きのサンジなんか女性のお客さんにどんどんアプローチしに行くんじゃないですか?(笑)

松浦 終演後、女性1人ひとりにバラの花を配っちゃうんじゃないかな(笑)。

音楽が鳴り始めた瞬間から空気が変わる(石川)

──ミュージシャンとしてさまざまな舞台に立たれてきた石川さんですが、改めて今回の“ブラス・エンターテインメント”の魅力を教えてください。

石川 これまではいちミュージシャンとして出演することが多かったのですが、今回はストーリーがあって頭から最後まで「ONE PIECE」の世界の中なのが新しいですね。舞台上で音楽が鳴り始めた瞬間から空気が変わるのを感じます。

田中公平

田中 マーチングのベテランからしても物語の中にいるというのは新鮮なんじゃないですか?

石川 目の前にキャラクターを演じるキャストさんたちがいることはとても新鮮です。ミュージシャンたちも物語に参加する一員として、本当に海の上、船の上にいるというイメージを共有していけたら。

「ワンピース音宴~イーストブルー編~」
2018年8月12日(日)~9月2日(日)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
「ワンピース音宴~イーストブルー編~」
  • 原作:尾田栄一郎(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
  • 演出・構成・振付:金谷かほり
  • 音楽監督:田中公平
キャスト
  • ルフィ:松浦司(CV:田中真弓)
  • ゾロ:福地教光(CV:中井和哉)
  • ウソップ:森良平(CV:山口勝平)
  • サンジ:高澤礁太(CV:平田広明)
  • ナミ:大北岬(CV:岡村明美)
  • シャンクス:村瀬文宣
  • ミホーク:宇乃徹(CV:掛川裕彦)
  • アーロン:田中精
ミュージシャン
  • パーカッション:石川直
  • トランペット:米所裕夢
  • トランペット:アマンダ・ベイトマン
  • トロンボーン:リサ・ライザネック・チャペル
  • チューバ:グラハム・ローズ
  • パーカッション:中部敬之

ほか

金谷かほり(カナヤカホリ)
演出家。国内外で人気テーマパークのライブショーや舞台演出を手がける。近年の演出作に「ドラゴンクエスト ライブスペクタルツアー」、MBS「金閣寺音舞台」などがあり、B'zや倉木麻衣といったアーティストのライブ演出も担当。2009年にIAAPA Big E Awards、13年にIAAPA THEA AWARD、14年にアウトスタンディング・アチーブメント賞を受賞。
田中公平(タナカコウヘイ)
大阪府出身。作曲家・編曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業後、ビクター音楽産業に3年間勤務し、その後、アメリカ・ボストンのバークリー音楽院に留学。帰国後、本格的に作・編曲活動を開始する。「ONE PIECE」「サクラ大戦」「トップをねらえ!」「機動武闘伝Gガンダム」「氷菓」「ジョジョの奇妙な冒険」などのアニメ音楽で知られ、2008年には歌手活動もスタート。11年頃から海外でのコンサートを開催し、世界にアニメソングを普及するため精力的に活動している。
松浦司(マツウラツカサ)
1988年大阪府出身。俳優。2016年、「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」で主演の勇者役に抜擢されて以降、舞台を中心に活動中。舞台では、ピースピット「グランギニョル」歌麿役、舞台「真・三國無双 官渡の戦い」袁紹役など。映像では、TBSドラマ「はぐれ署長の殺人急行4」、映画「ドルメンX」に出演するなど活動の幅を広げている。また、男性7人組ダンスユニット・Shya7としても活動している。
石川直(イシカワナオキ)
1975年東京都出身。ドラマー、パーカッショニスト。アメリカ・シカゴにて15歳からパーカッションを学ぶ。93年にテネシー大学で本格的に音楽を学び始め、2000年、初の日本人として「ブラスト!」に入団。02年、日本に拠点を移してからも「ブラスト!」で活躍するほか、05年から18年まで堂本光一主演舞台「Endless SHOCK」に14年連続出演。このほか舞台パフォーマンス指導、ステージ構成など多方面で活動している。