8月12日に東京・東京国際フォーラム ホールCにて開幕する「ワンピース音宴~イーストブルー編~」。尾田栄一郎原作によるアニメ「ONE PIECE」の名シーンを総勢35人の日米ミュージシャンによる生演奏とキャストのパフォーマンスで再現する“ブラス・エンターテインメント”が繰り広げられる。そんな“宴”の演出・構成・振付を担当するのは数々のショー演出を手がけてきた金谷かほり。音楽監督は「ONE PIECE」の主題歌「ウィーアー!」の作曲家・田中公平が務める。そして“麦わらの一味”の船長・ルフィ役にはテーマパークダンサーの経験もある松浦司、さらにミュージシャンとして「ブラスト!」といったステージで超絶技巧を披露してきたドラマー・パーカッショニストの石川直が参加している。ステージナタリーでは、7月上旬に4名の座談会を実施し、本作の魅力や、それぞれが目指す“宴”について語ってもらった。また本作の応援サポーターである南海キャンディーズ・山里亮太、平祐奈の対談を掲載。こちらも併せて楽しんでほしい。
取材・文 / 川口聡 撮影 / 三浦一喜(P1~3)
ルフィを演じながら、感極まって泣きそうになる(松浦)
──6月の制作発表では、ワールドカップの試合後に日本とセネガルのサポーターが「ONE PIECE」の主題歌「ウィーアー!」を一緒になって熱唱している動画が紹介されていました。(参照:「ワンピース音宴」ルフィ役の松浦司ら初パフォーマンス、山里亮太&平祐奈も興奮)世界規模で愛されているこの曲に乗せてパフォーマンスされるお気持ちはいかがですか?
松浦司 最高ですね! あの動画を観たときは「ONE PIECE」という作品の影響力はもちろん「ウィーアー!」という曲の持っているパワーを感じました。
田中公平 うれしいですね。20年前に「ウィーアー!」を書いたときは、ここまで広がるとは思っていなかった。私は世界各地でオーケストラコンサートを開いていて、どの国でも最後に「ウィーアー!」を演奏するんですが、日本語で大合唱が起こるんです。
金谷かほり それは感激しちゃいますね。
石川直 「ウィーアー!」は実際に演奏していても自然と高揚してくる魔法みたいな曲なんですよね。
金谷 「音宴」は、そんな「ウィーアー!」で幕が開いて、1幕ではルフィがシャンクスと交わす“麦わらの約束”から仲間たちと出会っていく「イーストブルー編」の名場面を再現します。そして2幕ではアニメ「ONE PIECE」の歴代主題歌を盛り込んだ「音の宴」で盛り上がっていただきます。
田中 ルフィ役、大変でしょう? シャンクスから麦わら帽子を被せられるシーン、泣きそうにならない?
松浦 泣きそうなんですよ!(笑) どうしても原作のシーンを思い出してしまって。
金谷 確かに目赤くなってるよね。始まってまだ3曲目くらいなのに(笑)。
石川 「ONE PIECE」の物語に音楽が合わさると涙腺がゆるみますよね。
松浦 稽古中もルフィを演じながら舞台の真ん中で曲を聴いているので、感極まってくるんです。この感覚を観ている人たちにも同じように、いや、それ以上に感じていただきたいですね。
「イーストブルー編」なのにブルックが登場
──「ONE PIECE」の中でも、今回メインとなる「イーストブルー編」の魅力を教えてください。
松浦 「イーストブルー編」は「ONE PIECE」の物語の始まりの部分で、ルフィが海賊として旅立って仲間を1人ずつ増やしていくさまが描かれます。僕はルフィが仲間を海賊団に誘うシーンが大好きで、例えばウソップに対しては「俺たちもう、仲間だろ」とさらっと言うんです。ゾロにしてもナミにしても不器用な言葉でちょっと強引に誘うんですが、そこに愛が詰まってるからグッとくる。ルフィって天然なように見えて、本質を見抜いてるんですよね。
田中 今回は「イーストブルー編」ですが、実は原作ではかなりあとのほうで仲間になるはずのブルックがミュージシャンとして登場するんです。
金谷 出るんですよ、究極のブルックが!
石川 詳しくは言えませんが、とにかく“リアルブルック”なんです(笑)。
田中 だから、もしシリーズが続いたら、“リアルチョッパー”を出すのが難しくなりそうだよね(笑)。
金谷 考えときます(笑)。
バトルシーンを楽器の生演奏で表現
──今回はアーロンやミホークなどの敵キャラクターも登場し、バトルシーンもあるようですが、ルフィの“ゴムゴムの銃(ピストル)”やゾロの“鬼斬り”といった必殺技はどのように表現されるんですか?
金谷 「音宴」では、“いかに生演奏だけで表現するか”っていうのがテーマでもあるんです。ね、石川さん!
石川 そうですね。戦いの場面の効果音もすべて楽器で表現します。こういった試みは僕も初めてなのですが、周りのメンバーと一緒にアイデアをどんどん出していて、例えば複数のミュージシャンが1列に並んで音を右から左へウェーブのように振っていくとか。
田中 生演奏によるサラウンドですよね。
石川 最初の打ち合わせの段階では、「ONE PIECE」とマーチングの融合ってどういうことなんだろうな?と思っていたんですが、金谷さんに「擬声語を楽器で表したい」と言われて、これは面白くなりそうだと思ったんです。
金谷 マンガの「ONE PIECE」で、例えば「ドン!!」とか、いろんな擬音がカタカナで書かれているところを、アニメ版だとサウンドエフェクト(SE)で表現するんですが、「音宴」では生演奏で、ライブの音で表現する。そこが「音宴」の強烈なアクセントになってくるんじゃないかと思います。
田中 SEで出せば簡単だけど、それをしないっていうのがいいよね。
次のページ »
ギリギリの難易度で曲を書く(田中)
- 「ワンピース音宴~イーストブルー編~」
- 2018年8月12日(日)~9月2日(日)
東京都 東京国際フォーラム ホールC
-
- 原作:尾田栄一郎(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
- 演出・構成・振付:金谷かほり
- 音楽監督:田中公平
- キャスト
-
- ルフィ:松浦司(CV:田中真弓)
- ゾロ:福地教光(CV:中井和哉)
- ウソップ:森良平(CV:山口勝平)
- サンジ:高澤礁太(CV:平田広明)
- ナミ:大北岬(CV:岡村明美)
- シャンクス:村瀬文宣
- ミホーク:宇乃徹(CV:掛川裕彦)
- アーロン:田中精
- ミュージシャン
-
- パーカッション:石川直
- トランペット:米所裕夢
- トランペット:アマンダ・ベイトマン
- トロンボーン:リサ・ライザネック・チャペル
- チューバ:グラハム・ローズ
- パーカッション:中部敬之
ほか
- 金谷かほり(カナヤカホリ)
- 演出家。国内外で人気テーマパークのライブショーや舞台演出を手がける。近年の演出作に「ドラゴンクエスト ライブスペクタルツアー」、MBS「金閣寺音舞台」などがあり、B'zや倉木麻衣といったアーティストのライブ演出も担当。2009年にIAAPA Big E Awards、13年にIAAPA THEA AWARD、14年にアウトスタンディング・アチーブメント賞を受賞。
- 田中公平(タナカコウヘイ)
- 大阪府出身。作曲家・編曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業後、ビクター音楽産業に3年間勤務し、その後、アメリカ・ボストンのバークリー音楽院に留学。帰国後、本格的に作・編曲活動を開始する。「ONE PIECE」「サクラ大戦」「トップをねらえ!」「機動武闘伝Gガンダム」「氷菓」「ジョジョの奇妙な冒険」などのアニメ音楽で知られ、2008年には歌手活動もスタート。11年頃から海外でのコンサートを開催し、世界にアニメソングを普及するため精力的に活動している。
- 松浦司(マツウラツカサ)
- 1988年大阪府出身。俳優。2016年、「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」で主演の勇者役に抜擢されて以降、舞台を中心に活動中。舞台では、ピースピット「グランギニョル」歌麿役、舞台「真・三國無双 官渡の戦い」袁紹役など。映像では、TBSドラマ「はぐれ署長の殺人急行4」、映画「ドルメンX」に出演するなど活動の幅を広げている。また、男性7人組ダンスユニット・Shya7としても活動している。
- 石川直(イシカワナオキ)
- 1975年東京都出身。ドラマー、パーカッショニスト。アメリカ・シカゴにて15歳からパーカッションを学ぶ。93年にテネシー大学で本格的に音楽を学び始め、2000年、初の日本人として「ブラスト!」に入団。02年、日本に拠点を移してからも「ブラスト!」で活躍するほか、05年から18年まで堂本光一主演舞台「Endless SHOCK」に14年連続出演。このほか舞台パフォーマンス指導、ステージ構成など多方面で活動している。