ステージナタリー Power Push - 「ミュージカル『黒執事』-地に燃えるリコリス2015-」
セバスチャン役・古川雄大インタビュー 舞台裏から役作りまで、本編動画も交えて振り返る
地声で出すこだわり
──ほかに、本番を通してここは変わったな、というシーンはどこでしょう。
毎日サウンドチェックを兼ねつつ、本番前に殺陣合わせをしていたんですが、グレルとセバスの戦うシーンは、日に日に精度が上がっていった気がしますね。(グレル役の植原)卓也が引っ張ってってくれて、息がどんどん合っていく感覚がありました。
──2人で歌う「まるでロミオとジュリエット」のシーンもすごく印象的でしたもんね。
あそこ、好きですね。俺は1フレーズしか歌ってなくて、卓也のソロみたいな感じなんですけど、展開がドラマチックというか……すごい音が上がったと思ったらすぐ静かになったり。
──初日に一番好きな曲をお聞きしたときも「まるでロミオとジュリエット」とおっしゃってましたね。ほかにお好きな曲は?
最後のセバスとシエルの歌、「私はあなたの駒となり剣となる」が実は好きなんですよ。ほかを少ししくじっても、あれをガッツリ決められたらいいんじゃないか、というくらいのいいメロディだし、いい歌。
──今作は何回も同じフレーズが出てくるのが印象的ですよね。「私はあなたの駒となり剣となる」も、マダム・レッドの曲「道に迷わないように」もそうですし。
リプライズみたいなことが多いですね。M7で歌った「私はあなたの駒となり剣となる」を最後に歌ってるんですけど、実はキーが違っていたりとか。リプライズは定番って言いますけど、1幕最後の曲を2幕の最後にもう一度ガッとやるのがいいですよね。1幕最後だと、個人的にはまだキーが高いので、2幕最後くらいだと喉が開いててありがたい(笑)。
──なるほど。特に苦戦した曲はありましたか?
やっぱり1幕ラストですかね。広瀬友祐くんに言われたんですが、「同じ曲なのに、古川くんが歌ってるとすごく高く感じるけど、(セバスチャン役を以前演じていた)松下(優也)くんが歌うと、すごく低く聞こえた」って。俺もそう思ったんですよ。聴いてると低く聞こえるんですけど、実際自分で歌ってみると「あれ?こんな高いの?」みたいな。サビの一番盛り上がる、ここ聴いてて気持ちいいだろうなっていうところが最高のキーで、そこを地声でどう出すかが難しかったです。
──どうして地声で出すことに?
なんでだろう、ミュージカルで男の人が裏声出す瞬間って実はあんまりないんですよね。ちゃんと安定した声で届けたいなと思って裏にしてたんですけど、中国に行ったときに、攻めてみようかなっていう気持ちになって。やってみると意外に出たんですね。あと楽譜にはないんですけど、最後「チェックメイト」って歌うのを、フェイクっぽく上に上げるようにしてみたり。1幕最後なのでそのあと休憩が20分入るけど、そこで盛り上げておけば、お客さんのムードも上がったままにできるかなっていう気持ちがありました。
──中国の話が出ましたが、中国3都市での公演はいかがでしたか。
日本でさんざんスベってたあらやん(劉役の荒木宏文)が、バカ受けでしたね(笑)。
──それは中国人の役だからですかね?
なんででしょうね。どベタなのがいいんでしょうか(笑)。全部ウケてましたね。本来はスベらなきゃいけないところなんですよ。だからあらやんも、すげえつまらないことやってたんですけど。あとは物を食べながら観ていたり子供が泣き出したり、文化の違いもあるんですけど、お客さんが声に出して感情を伝えてくれるから、演ってるほうとしても一体感を感じました。舞台でお客さんの熱を感じる瞬間って、こちらとしても上がるというか、うれしい瞬間であったりするので。
「スマートすぎるから、ねっとり感が欲しい」
──演出は少年社中の毛利亘宏さんが手がけていますが、演技に関してはどんな要望を受けたんでしょうか。
「スマートすぎるから、ねっとり感が欲しいな」と、稽古の序盤で言われましたね。
──それは特定のシーンで?
最初です。「おはよう」で始まるところから、一連の流れ。セバスがシエルに執事として仕えていることを見せる瞬間なんですけど、そこがスマートすぎると。あとはここをこうして、とか、やり方が違う、とか言われることはあんまりなくて、役者の力を引き出してくださるような印象を受けました。
──完璧な執事ならスマートでもいいんじゃないかと思ってしまいますが、「ねっとり」というのはどういう……。
シエルとの関係性が見えないんだと思うんですよ。ただ単に普通の主人と執事に見えてしまってるというか。この人の魂を食べるためにちゃんと育てて美味しくしているんだ、という、この作品のミソでもあるような、セクシーな部分が。シエルへの触り方も、とてつもなく大切なものとして扱うことを、すごく意識しました。
──そういうところもだし、セバスは細かい所作が難しい役ですよね。
シエルに眼帯を着けるのがすごく難しかったですね。靴を履かせるのも……決められた尺でやらなきゃいけないので。本来ああいうカッチリした靴って、履くのに時間がかかるじゃないですか。紐を解いて縛るのをすぐできるようにしなきゃいけなくて、手こずりましたね。
──でもとても印象的な構図というか、主人と執事という関係性がよく出ていると感じました。
前回もやりたかったけどセットの関係でできなかったみたいですね。今回はベッドの高さを調整して実現して、枢先生も「すごくいい、うれしい」と言ってくださったみたいです。
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- Contents Index
- コミックナタリー 枢やな担当編集・熊剛氏インタビュー
- ステージナタリー セバスチャン役・古川雄大インタビュー
- 「ミュージカル『黒執事』-地に燃えるリコリス2015-」発売中 / アニプレックス
- [Blu-ray+DVD] 8640円 / ANSX-10025
- [DVD2枚組] 7560円 / ANSB-10025
本編ディスク(BD/DVD)
東京公演の模様を収録(約160分)
特典映像ディスク(DVD)
稽古場から中国公演まで密着したドキュメント映像/突撃キャストインタビュー企画「アバーラインとハンクスの事件簿」を収録(約135分)
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
演出:毛利亘宏
脚本:井関佳子
キャスト
セバスチャン・ミカエリス:古川雄大
シエル・ファントムハイヴ:福崎那由他
グレル・サトクリフ:植原卓也
チャールズ・グレイ:矢田悠祐
チャールズ・フィップス:広瀬友祐
ウィリアム・T・スピアーズ:輝馬
ドルイット子爵:佐々木喜英
バルドロイ:鷲尾昇
フィニアン:河原田巧也
メイリン:坂田しおり
フレッド・アバーライン:高木俊
シャープ・ハンクス:寺山武志
葬儀屋:和泉宗兵
劉:荒木宏文
マダム・レッド:AKANE LIV ほか
「ミュージカル『黒執事』~NOAH’S ARK CIRCUS~」
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
脚本:竜崎だいち・毛利亘宏
演出:毛利亘宏
キャスト
セバスチャン・ミカエリス:古川雄大
シエル・ファントムハイヴ:内川蓮生
スネーク:玉城裕規
ビースト:田野アサミ
ダガー:三津谷亮
ウィリアム・T・スピアーズ:輝馬
バルドロイ:鷲尾昇
フィニアン:河原田巧也
メイリン:坂田しおり
葬儀屋(アンダーテイカー):和泉宗兵
フレッド・アバーライン:髙木俊
シャープ・ハンクス:寺山武志
ドール:松井月杜
ピーター:倉知あゆか(G-Rockets)
ウェンディ:知念紗那(G-Rockets)
ジャンボ:後藤剛範
ケルヴィン男爵:小手伸也
先生:姜暢雄
ジョーカー:三浦涼介
- 2016年11月18日(金)~27日(日)
東京都 TOKYO DOME CITY HALL - 2016年12月3日(土)・4日(日)
福岡県 キャナルシティ劇場 - 2016年12月9日(金)~11日(日)
兵庫県 あましん アルカイックホール - 2016年12月17日(土)・18日(日)
愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
古川雄大(フルカワユウタ)
1987年7月9日生まれ。長野県出身。2007年、テレビドラマ「風魔の小次郎」霧風役でデビュー。以後、「テニスの王子様」不二周助役、「エリザベート」ルドルフ役、「1789 -バスティーユの恋人たち-」ロベスピエール役、など多数のミュージカルに出演。2017年1月より「ロミオ&ジュリエット」にて、ロミオ役を務める。