石丸幹二が「映画館に通いたくなってしまいます!」と太鼓判 「METライブビューイング 2024-25シーズン」上映ラインナップ (2/2)

石丸幹二、オペラ初心者に優しいアドバイス

──ライブビューイングを映画館に観に行くのと、オペラハウスに実際に観に行くのでは、石丸さんも心持ちが変わりますか?

そうですね、また違った楽しみ方になります。実際に観に行くときは、僕は雰囲気ごと楽しみたいタイプ。ちゃんとドレスアップして、食事も楽しみ、非日常感を思い切り味わいます。どの席にするかを考えるのも楽しみの1つですね。演出に注目したい場合は、全体を俯瞰できる少し後ろの席を取りますし、歌手の声を浴びたい場合は最前列を取りたい(笑)。劇場に響く声や、オーケストラの生演奏がオーケストラピットから湧き上がってくるのを味わうのも、劇場ならではの楽しみですよね。一方、ライブビューイングは、僕にとって“気楽に味わえる贅沢さ”。大きなスクリーンと優れた音響設備があるので、どの席からも同じように楽しめます。これは映画館だからこそ味わえる良さです。あとは、幕間にキャストやスタッフのインタビューもしっかり味わえる。舞台裏をちょっと覗けたり。これらも良いですよね。

石丸幹二

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──オペラ初心者の方に、オペラの楽しみ方のアドバイスがあれば、ぜひ教えていただけますでしょうか。

2つだけ。まずは、リラックスすること! オペラは、かしこまって観るものではないと思うんです。なので、気構えずに、思いっきり楽しむつもりで足を運んでほしいですね。もう1つは、物語の流れを、ざっくりと頭に入れておくことでしょうか。字幕が出ることも多いですが、あらすじを読んでおくと、舞台で起こることがなんとなく想像ができるようになります。僕ができるアドバイスは、それだけですね。同じ作品を観ても、人によって気になるポイントは異なってくると思うんです。歌だけではなく、衣裳に魅了される方もいれば、舞台セットに心を奪われる方もいらっしゃる。もし、気になることがあったら、インターネットでも本でも、積極的に調べてみると面白いですよ。オペラは非常に奥深いので、本当に調べがいがある(笑)。とにかく楽しみ方に正解はないので、それぞれの興味を大事にして、とっておきの非日常を“体験”していただきたいですね。

──石丸さんは、「題名のない音楽会」でも「テノールはこういう役柄が多い」等々、楽しくわかりやすくオペラの魅力を伝えてくださっていて、オペラ初心者は助かっています。

実験劇場みたいな気持ちでやっています(笑)。少しでも、クラシックに興味を持つきっかけになっていただけるとうれしいですね。

石丸幹二

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主演作「ラブ・ネバー・ダイ」は「まさに“現代のオペラ”」

──石丸さんは、1月にミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」に、2019年公演に続きファントム役でご出演されます。作中では「オペラ座の怪人」の後日譚が描かれます。

ミュージカル「オペラ座の怪人」は、クラシック楽曲も手がける、作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーが、“現代のオペラ”という形で作り上げた作品です。そもそも僕は、ミュージカル「オペラ座の怪人」のラウル・シャニュイ子爵でデビューしたので、ロイド=ウェバーは僕にとって思い入れの深い作曲家。「ラブ・ネバー・ダイ」は、彼が、「オペラ座の怪人」の10年後を想定して作曲したミュージカルで、ふんだんに「オペラ座の怪人」のメロディも使っています。物語がつながっているという意味では、ミュージカル界の「フィガロの結婚」と「セヴィリャの理髪師」でしょうか(笑)。

「ラブ・ネバー・ダイ」はセリフが少なめで、ほぼ歌だけで物語を運んでいくので、その構成はオペラと少し似ていますよね。オペラが好きで、日本語歌詞で物語に触れたい方にもうってつけな作品だと思います。舞台セットも豪華絢爛な作りですので、まさに“現代のオペラ”だと思って観に来ていただきたいですね。きっと、METライブビューイングを観ると、“生の音”にも興味が湧いてくると思うんです。そうしたとき、候補の1つに「ラブ・ネバー・ダイ」も入れていただきたいですね。

石丸幹二

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──また、今年から長野・まつもと市民芸術館の芸術監督団の1人として活動されています。石丸さんは、“0歳児から参加できる”ことの大切さをお話しされており、その1つとして今年4月に、芸術監督団として初めての公演「はじめまして!」を実施されました(参照:木ノ下裕一・倉田翠・石丸幹二の“名刺代わり”のコンサート、松本で開催)。

幼い頃から、良いものを生で聴く / 観るというのは、僕自身、とても大事なことだと思っています。劇場やコンサートホールに足を運ぶことで、マナーを身につける訓練にもなりますし、また質の高い体験をすることは、彼らにとって良い教育にもなると思っています。そして、僕が一番来てほしいと願っているのは、子育て中でコンサートを我慢していらっしゃるご両親。「はじめまして!」は、まつもと市民芸術館を、子育て中の方々も、心置きなく気楽に来られる場所にしていきたくて、その種まきの気持ちで実施しました。こういった公演は、毎年のように開催していきたいです。METライブビューイングも学割があって、若い方が観やすいのは良いことですよね。ある意味、生で観るよりも気楽に観られるのではないでしょうか。ぜひ、この機会に一流の作品に触れてほしいですね。

石丸幹二

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プロフィール

石丸幹二(イシマルカンジ)

1965年、愛媛県生まれ。東京音楽大学音楽学部にてサクソフォン、東京藝術大学音楽学部で声楽を学ぶ。東京藝術大学在学中の1990年、劇団四季にてミュージカル「オペラ座の怪人」ラウル・シャニュイ子爵役で初舞台。2007年に劇団四季を退団後、俳優として舞台作品のみならず、ドラマや映画といった映像作品にも出演。音楽活動も行っている。テレビ朝日「題名のない音楽会」、TBS系「健康カプセル!ゲンキの時間」で司会を担当。2024年より、まつもと市民芸術館の芸術監督団、ゼネラルアートアドバイザー。