二つの味わいを楽しんで…中村壱太郎と尾上右近が挑む「京鹿子娘道成寺」、「五人三番叟」出演者が語る新年の抱負 (2/2)

「五人三番叟」出演者が新年の抱負語る

ここでは、新年の幕開きを寿ぐ舞踊「五人三番叟」に出演する中村福之助、中村虎之介、中村鷹之資、中村玉太郎、中村歌之助の5人が、作品への思いや新年の抱負を語ってくれた。

結果にこだわって技術を高めたい
中村福之助

中村福之助

──1年の初めを歌舞伎座で迎えられることや、作品への思いをお聞かせください。

歌舞伎座に出演できることはどの月でもうれしいことです。
その中でも初春大歌舞伎は、年初めということで、お客様の中にもお正月は歌舞伎座へという方もたくさんいらっしゃると思います。
昼の部の序幕ですし、足を運んでくださる方々にお正月らしく華やかな舞台を観て気持ちよく帰っていただけるよう勤めたいと思います。

──2024年のご自身の抱負を教えてください。

2023年のテーマは、“応用”でした。
1つのお役で学んだことを他のお役にも生かしていくことが大切であるということを改めて感じた1年でした。
2024年は“実践”です。
大きなお役を演らせていただく機会も増えてきたので、向き合い方などは身についてきました。
来年は自分が思い描いたものを形にできるよう、
改めて結果にこだわって技術を高めていきたいと思います。

プロフィール

中村福之助(ナカムラフクノスケ)

1997年生まれ。中村芝翫の次男。2000年に初代中村宗生を名乗り初舞台。2016年に三代目中村福之助を襲名する。

2024年は成果にこだわりたい
中村虎之介

中村虎之介

──1年の初めを歌舞伎座で迎えられることや、作品への思いをお聞かせください。

毎年お正月は松竹座に出演していることが多かったので、東京にいることはあまりなかったのですが、近年歌舞伎座に出させていただき、だんだんと東京で過ごすお正月に慣れてきました。
福之助くん筆頭に若手で一幕いただいたので身の引き締まる思いです。「対面」は何度か出ておりセリフは寝ながらでも出てきますが、若手が僕だけなので、しっかり勉強させていただきます。

──2024年のご自身の抱負を教えてください。

2024年は、自分の中で成果にこだわろうと思ってます。目の前のお役をしっかりこなすのが2023年のスローガンでしたが、与えられたお役をこなすのは誰でもできるので、次につながるような結果と成果にこだわりたいと思っています。自分が舞台に立つ理由やビジョンを明確にしながら精進したいと思っております。

プロフィール

中村虎之介(ナカムラトラノスケ)

1998年生まれ。中村扇雀の長男。2001年に林虎之介の名で初お目見得。2006年に初代中村虎之介を名のり初舞台。

挑戦し、出向いていく1年に
中村鷹之資

中村鷹之資

──1年の初めを歌舞伎座で迎えられることや、作品への思いをお聞かせください。

やはり年の初め、おめでたい舞台に出られるということは、役者にとって有り難いことですね。
さらにそこで「三番叟」ですから、とにかく晴れやかな気持ちで! 素晴らしい一年を迎えられるように、勢いよく勤めたいです。

──2024年のご自身の抱負を教えてください。

2023年は、古典作品だけでなく新作歌舞伎にも多く出演させていただきました。しかしその中で思ったのは、とにかくもっと古典を勉強し、経験しなくてはならないということです。今年は、さらにいろいろなお役を経験して、前に進んでいきたいです!
そして、より自分からいろいろなことに挑戦し、出向いていく1年にしたいですね。あとは笑う門には福来る! 笑っていきましょう!

プロフィール

中村鷹之資(ナカムラタカノスケ)

1999年生まれ。五世中村富十郎の長男。2001年、中村大の名で初舞台。2005年、初代中村鷹之資を襲名。歌舞伎作品のほか映画「家族はつらいよ」に平田謙一役で出演した。

年男となる2024年、俳優としてさらなる成長を
中村玉太郎

中村玉太郎

──1年の初めを歌舞伎座で迎えられることや、作品への思いをお聞かせください。

まず、年男として初めの月に歌舞伎座に立てることをとても喜ばしく感じます。
私が出演する「五人三番叟」は初春大歌舞伎の一番最初の演目になります。
お正月の歌舞伎座という大舞台で同年代の皆さんとご一緒できることは楽しみでもあり、皆さんに負けないようにがんばらねば、と身の引き締まる思いでもあります。
「三番叟」という演目自体は藤間ご宗家の舞踊会や、自主公演などで踊ったことがあります。
そのときの稽古の際に、「この踊りは五穀豊穣を願う神事のものだから、一つひとつの振りも邪気を祓うつもりでメリハリをつけてはっきりと動くように」と教わりました。今回もその教えを生かせれば、と思います。
また、五人で踊らせていただくということですので、どんな形の「三番叟」になるのかが今から楽しみです。

──2024年のご自身の抱負を教えてください。

2023年は初の自主公演「白苑会」の開催や、「文七元結物語」で"お久"という大役を演じさせていたいただいたことなど、私にとって挑戦の一年でした。
2023年を振り返ることで、今の自分の現状や課題が浮き彫りになり、自分の今後の目標を見つめ直すことができたと思っています。
年男となる2024年も、さまざまなことに挑戦し、自分を見つめながら役者としてまた一つ成長することができたらいいな、と思います。

プロフィール

中村玉太郎(ナカムラタマタロウ)

2000年生まれ。中村松江の長男。2006年に五代目中村玉太郎を名乗り初舞台。

一つひとつのお役を一所懸命勤めたい
中村歌之助

中村歌之助

──1年の初めを歌舞伎座で迎えられることや、作品への思いをお聞かせください。

2024年も歌舞伎座で新しい年を迎えられることはもちろんですが、若手五人で歌舞伎座の新年一幕目を開けさせていただくことは有難い気持ちでいっぱいですし、身の引き締まる思いです。また、歌舞伎役者であれば、一度は三番叟を踊らせていただきたいと思うくらい、格式ある踊りですので、一つずつ丁寧に踊らせていただきたいと思います。そして、観にきてくださるお客様一人ひとりの新しい一年が晴れやかなものになるよう、一所懸命勤めさせていただきますので、宜しくお願い致します。

──2024年のご自身の抱負を教えてください。

2022年の「新選組」に引き続き、2023年もたくさんの大きいお役を経験させていただきました。また、2023年は我々三兄弟にとっても、新たな挑戦となった「神谷町小歌舞伎」も開催させていただきました。成長の第一歩となった年であったからこそ、2024年もこの勢いを失うことなく、お客様により良いものを届けられるよう、精進して一歩一歩進んでいき、三兄弟としても、個々としても歌舞伎界にとって戦力となれるように、驕ることなく、一つひとつのお役を一所懸命勤めていきたいと思います。

プロフィール

中村歌之助(ナカムラウタノスケ)

2001年生まれ。中村芝翫の三男。2004年、初代中村宜生を名乗り初舞台。2016年、四代目中村歌之助を襲名した。

海宝直人が歌舞伎座へ

このコーナーでは、歌舞伎座を訪れたアーティストやクリエイターが、その観劇体験をレポート。今回は、ダイナミックな歌唱力で人気の海宝直人が、「十二月大歌舞伎」にて、坂東玉三郎が演出・出演する「天守物語」ほかを観劇した。

海宝直人(撮影:上牧佑)

海宝直人(撮影:上牧佑)

今回初めて、歌舞伎座での十二月大歌舞伎を観劇させていただきました。

初日を迎えた歌舞伎座は観劇に訪れた多くの人で溢れかえっていて、お土産コーナーや出店も大賑わい。お祭りに来たような活気に満ちていて、自ずと観劇への期待も膨らみます。

お土産屋さんの様子。(撮影:海宝直人)

お土産屋さんの様子。(撮影:海宝直人)

まずはイヤホンガイドをレンタル。こちら、上演中の解説だけでなく開演前や幕間にも作品についての解説や出演者の情報などが放送されていて、他では中々聞くことの出来ないプチ情報もあったりして、待ち時間も楽しく過ごすことができます。

観劇した作品は第三部、舞踊「猩々」と「天守物語」。

「猩々」は踊りと唄、演奏で綴られる作品。能を原典とした作品であることや、その瞬間なぜそのような動きをしているのかなど、イヤホンガイドの説明を聞きながら見ているとキャラクターたちの心情や置かれている状況が手に取るようにわかり、美しくリズミカルな唄と和楽器の音色に身を任せながら、酒好きの霊獣、猩々たちの生き生きとした舞を楽しむことができました。

続く「天守物語」は天守最上階に住む人ならざる美しい姫と人間の交流を描いた作品。坂東玉三郎さんが描き出す美しく妖しげで、時にユーモラスな世界に引き込まれ、心揺さぶられました。こちらの作品では解説は最小限。解説無しでは歌舞伎は理解が難しいというイメージが大きく変わった作品でした。

歌舞伎観劇には他にもお楽しみポイントがたくさん。開演前に予約して幕間にいただけるお食事も美味しかったですし、お土産屋さんには素敵なグッズが盛りだくさん!

そして個人的歌舞伎座おすすめポイントがもう一つ。ロビーに飾られている尾形月山さんが描いた「暫」という絵画。その絵の中で目を奪われたのが下手花道にいる後見さん。演者の裾を直すその方の表情の何とも言えないプロフェッショナルで格好良いこと。ご観劇の際にはぜひそちらにもご注目ください!

歌舞伎座の外観。(撮影:海宝直人)

歌舞伎座の外観。(撮影:海宝直人)

プロフィール

海宝直人(カイホウナオト)

千葉県出身。7歳のときに劇団四季「美女と野獣」チップ役で舞台デビュー。その後「ライオンキング」の初代ヤングシンバに抜擢される。舞台を中心に活躍を続け、2018年には「TRIOPERAS」でウェストエンドデビューを果たした。またロックバンド・シアノタイプのボーカルとしても活動している。

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